第38話
声がした方向にいたのは、少女だった。
帽子にコートに手袋と暖かそうな格好だが、それに反して靴が無く、裸足だった。
雪の上を裸足で歩けば普通なら赤くなる、あるいは青くなる足に変わりがない彼女も参加者なのだろう。
年はおそらく前にいる少年よりも下、12~3ぐらいか。
その裸足の少女は私と少年の間に割り込んできた。
「えっと……何かご用で?」
私が尋ねると、
「もちろん!」
少女は答えた。
それはそうだ。そうでもなければ止める訳ないだろうし。
「それで、いったい何の用ですか?」
「それはね…」
ビシッ!
という音がしそうな勢いで少女は指差した。青いコートの少年を。
「アナタ! まずは私と勝負しなさい!」
「は? ……何でだよ?」
「いいから戦いなさい!」
凄い見幕とはこういうものだろう。
「う……わ、分かったよ、あんたから戦えば良いんだろ?」
少年は根負けした。
「えっと……じゃあ私は横で見学していますね」
私は2人から離れて、雪が積もり出来た丘の上に登った。
丘を登りきって2人を見た時、勝負は始まったようだ。
「わたしの名前はマチ! いざ勝負よ!」
「俺の名前はスノウ、手加減なんてしないぜ!」
少女の名前はマチ、少年の名前はスノウらしい。
スノウは思い形見の銃をマチに向けた。
「ふん、分かりやすい武器ね、そんなの当たらなきゃ意味無いじゃないの」
……どんな思い形見でもそれは言えるけど。
「わたしの武器は……コレよ!」
そう言ってマチがコートのポケットから取り出した思い形見は――――
マッチ箱だった。
物語で、マッチ売りの少女が売っていそうなそれがマチの思い形見らしいが……能力が予想できない。
……見てれば分かるか。
そして2人は戦い始めた。