第35話
「……んむ?」
「あ! 目が覚めたよ!」
「……ここは?」
マイが目を覚ました。
今私達が居るのは、あの部屋。戦いの後、倒れたマイをミナトがおぶり、リアとロマ、2つの人形を私が鎖で巻いて重力を減らし、まるで風船のように浮かばせて運んでここに戻って来た。
「と、言う訳だよ」
マイは左右に置いたリアとロマを見て、
「……ありがとう」
笑った。
今までの無表情からは想像も出来ない程の、可愛い笑顔だった。
……という訳で、
「2人はこれからどうするの?」
「そうだね……2人組の参加者対策として2人組で行動する参加者が増えたんだよね、だから私はマイちゃんと一緒に行るよ」
「……私はここに居る」
「じゃあ、ここでお別れだね」
「……行くの?」
「うん。元より出ていくつもりだったけど、色々あったから止まっちゃっただけだし……それに私は皆よりも対戦数が少ない筈だから、戦わないといけないしね」
「……そう……気を付けて」
「ありがとうマイちゃん。じゃあね2人共、お互い頑張ろうね」
私は部屋を出た。
扉を抜け、あの空間に出た私は、その場でくるりと回り、扉に向き合った。
『扉は引いて入ると押して入るでは場所が異なるんだよ』
ハカセの言葉だ。
今の場所には引いて入ったので、次は押して入ろうと思ったのだ。
私は扉を、押して入った。
俺と妹を置き去りにして出ていった両親を探す為に旅に出た俺達は、ある雪国で、離ればなれになってしまった……
それからの俺は、昔から好きだった絵を描きたくなって、親に会ったときに見せようと思ったある道具を持って、人1人居ない、回りは雪だらけの、そんな場所に立った。
そして、描こうと思った。
だが紙は無い、そして筆も無い、もちろん絵の具も無い。道具はただ1つだけ。
さて……描くか。
題名は……そうだな……
『絵具を使わない日の丸』で、いいか。
パンッ