第29話
私が修行していた62分間。その間に空間では様々な出来事が起こっていたらしい。
まずは名前、モクが広めたのだろう。自らが考えた名前を名乗る参加者が増えたらしい。
次に対戦数、多い者は既に50戦以上、二桁いっていない者はいないと言われているらしい。
だが、私はまだ5戦だけだ。
最後に、2人組の参加者。
分かりやすく言うところのコンビだ。
それだけなら良いのだが、その2人は1人に戦いを挑む際に、まずは1人が戦い、相手が弱ってきた所で
2人目が現れ、その1人を挟み撃ちにする。
しかもその後、倒した相手が起きた瞬間に致命傷を与えてまた倒してしまい、これで2人が一勝ずつ手にするらしい。
正直……ズルい方法だ。
その対策として、ミナトとマイのように2人組で行動する参加者が増えたらしい。
「私達はまだ会った事が無いんだけどさ、この前戦った人が、殺られちゃったんだって…」
「……」
「噂だと、この空間に入ったみたい」
「ということは…」
「うん、私とマイちゃんで戦うんだ」
「そっか、頑張ってね」
「うん。それで、ツバサはこの後どうするの?」
「私? とりあえず出会った参加者に戦いを挑まれるだろうから、手当たり次第戦いまくると思う」
「うわ、それも大変だね……2人組には気をつけてね」
「うん、ありがとうねミナト。私、そろそろ行くね、頑張ってね2人共」
「うん、ツバサもね」
「……気を付けて」
「ありがとうマイちゃん。じゃあね」
2人に……いや、マイの持つ二つの人形も手を振っている。大きいほうは自分で、小さいほうはマイが手を持って振っている。
4人に見送られ、私は部屋を出た。
私と戦った事のある参加者は少ない筈。
だったらこうして歩いているだけで、向こうから戦いを挑んでくると思った。
カシンッ カシンッ カシンッ
ドスッ
ズザ ズザザザ
ドスッ
ジャラ
ドスッ
カシンッ ズザザ
ドスッ
カシンッ ジャラ
ドスッ
ズザザザザザザ
バシュ
ドスッ
結果、この街を歩いていただけで8人と出会った。
正直連戦はキツかったが、新たな力のおかげか、8人共勝つ事ができた。
「ふぅ……」
倒れている8人目の横を通りすぎて歩きだした。
これで私は、13戦12勝1敗だ。