第27話
ミナトに連れられてやって来たのは、あるマンションの一室だった。ミナト曰く、開いていたから寝床に使っているのだとか。
そういえば、この空間にも昼夜の概念がある。でも別に眠くならないから私は歩きまわっているし、夜を迎えようとした時にはその空間を出ていたので、寝ることは考えたことなかったな。
「さぁ、入って入って」
中に通され、部屋の中を見た。机が1つ、椅子が4つ、棚が2つにタンスが1つ置かれている。普通の部屋だ。
その椅子の1つに、ミナトが会わせたかったであろう子が座っていた。
椅子に座っているのもあり身長は分からないが、見た目は凄かった。
年は10~12ぐらいだろうか、髪は金髪、瞳は青、髪は左右に分けられてリボンで束ねられている。
見た目は、まるで西洋人形のようだ。
だがそんなその子の手には、本物の西洋人形が握られいた。
「ただいま、マイちゃん」
名前はマイらしい。
「……お帰りなさい、ミナトちゃん」
ギリギリ聞き取れるぐらいの、小さな声が聞こえた。
「……その人は……誰?」
マイは私を見ながら首を傾げて訊いてきた。
「ツバサだよ、この前話した強い女の人」
「初めまして、マイちゃん、でいいのかな?」
「……うん、初めまして」
マイは首を縦に振って挨拶してきた。
「あなたも、参加者よね?」
ミナトと共に居る時点で確定だが、私は尋ねてみた。
「……うん」
やっぱり。
「じゃあ、何でこんな所に居るの?」
少し気にはなっていた。参加者である以上、戦うことが必要なのにこうして家の中に居るのはどういう理由があるのだろうか。
「……」
マイは黙ってしまった。
代わりに、ミナトが答える。
「あのね、マイちゃんは変わった力の持ち主で、今は休んでるの」
「休んでる?」
「えっと……マイちゃん、言ってもいい?」
「……」
マイは黙っている。
「……あのね、マイちゃんの能力って…」
ミナトが語り出そうとした。
その時だった、
「待って!」
声の主は直ぐに分かった。マイだ。
先ほどからは考えられない、そんな大きな声が出るのかと思ってしまう程の大声だった。
「マイ、ちゃん?」
「……」
マイは手元にあった人形をぎゅっと抱きしめたまま下を向き、
「……私が……自分で……話す」
また先程とは比べものにならない小声で言った。
「……うん。頑張ってね」
「……うん」
マイは小声ながらも、語り出した。