第25話
ドッゴーーーーン!
まるでマンガみたいな音を立て、ハカセは床に叩きつけられた。
私は少しずつ重力をかけ降下していった。
「ハカセ!」
足がついたところで名前を呼ぶと、
「……大丈夫だよ、ここにはダメージの概念がないからね」
ハカセは立ち上がった。全くの無傷だ。
私達に傷はできないのだが、それで見てもハカセは元気だった。
「しかし、今のはなかなか良かったよ。それがツバサの新たな力だね」
「はい、ありがとうございます」
私の新たなる力、能力の重力変化と、思い形見の十字架と鎖を合わせて生まれた力。
重力を付加しつつ、方向を変えて切りつける。今のように相手を浮かせれば命中率は上がるだろう。
「せっかくだ、名前をつけたらどうだい?」
その言葉に、少し前のことを思い出した。
「名前……ですか?」
「そうさ、必殺技ってのは名前があるものだよ」
「しかし……」
「なんなら、私が考えてあげなくもないよ?」
「いえ、自分で考えますから」
はっきり言い切った。
「そうかい、遠慮しなくてもいいんだよ?」
「いえ、大丈夫ですから」
ハカセのネーミングセンス。それは言うなれば個性的で、言うなら独特で……
そして言ってしまえば――――――――――
――――――――変だ。
それを私は、あの時に知った。
「さて、その武器に名前をつけようか」
あれは、思い形見の名前を決めた時の事だ。
「やはり特徴をとらえた名前が良いと思われます」
ミナトが発言した。
それを聞き、ハカセは、
「では、死に際の所持品はどうだい?」
「怖いですよ!」
確かにそれは嫌だな……
「死んだ後に手が触れた後の人も居るのでは?」
私が反論を出すと、
「じゃあ……戦いの道具ってのはどうだ?」
新しい名前案が出たが、
「……それを武器って呼ぶんですよ」
「ふむ、ではどうするか……」
それからもハカセは幾つものおかしな名前を考えた。
思い出すのも大変なぐらい数多く、あれは絶対本気で言っていた。
ミナトが思い形見を出さなかった場合、ハカセの考えたどれかになっていたかもしれないと考えると……
名前については頼ってはいけないと、知らされたのだった。
……よし。
「グラビティア・クロス」
「ほぉ、面白い名前だね」
「それにします」
「良い名前じゃないか」
「ありがとうございます」
名前が決まると、ハカセは床に落としていた本とペンを拾い上げ、
「さて、そろそろここを出よう。長居は不用だし、長居は少しマズイからね」
長居はマズイ?
「……どういう事ですか?」