第19話
私には……いわゆる。彼氏、と呼べる者がいた。
同じ高校のクラスメイトで、高校生となれば珍しくはないだろうが、私達は互いに両思いだった。
告白してきたのは、彼からだった。
断る理由の無い私は、快く受けた。
それからは、いわゆる、恋人同士となった私達、色々な所へ行き、色々な事があった。
でも、私は見てしまった。
彼が他の女の人と歩いている所を。
それだけならまだ良かった。それだけなら……
しかし彼は、笑っていた。仲良く歩いていた。買い物だろう、荷物を持ってあげていた。
あれが、二股というもの……か。
よく……テレビドラマ……とかで……浮気……現場を……発見した人……の気持ちが……今なら……分かる……かな……はは
告白してきたのは、彼だったのに。
そして私は、ビルの屋上にいた。
そして……飛び降りた。
「……私もバカです。でも、あなたもバカです」
「……そうだな、俺も君も……大バカ者だ」
今考えれば、あれがそうだったとは限らないのに、聞いてみれば良かったのに。
間違いなら、笑ってすませた。
本当なら……何をしていたかな……
とりあえず聞けば良かったんだ。今さら遅いが。
でも、これで分かった。
私は、
私達は、
自殺者であり、
大会の参加者であり、
大バカ者の集まりなんだ。
何かがあって、
自ら死を選んだ、
他の選択肢を一切無視して、死を選んでしまった者達、
それが私達だ。
「……」
「……モクもツバサも、色々あるんだな……俺は、まだ救われている方かもな」
「そうだな、レインの理由が何にせよ、俺達よりはいいのかもしれないな……」
「……そうかもな」
「……お、ここは良いかもしれないな」
そこはまさに開けた場所、その空間だけ木々が生えず円を形作っている。広さも申し分無いだろう。
「……じゃあ、始めるか」
「……はい」
私とモクは互いに間をとり、レインは後ろに下がった。
一陣の風が通り過ぎる。
「……」
「……」
沈黙が続き、風の音だけが聞こえる。
風が止んだ瞬間、戦いが始まった。