第18話
私達3人は森の中にいた。別に起きた女性と私が戦えばよかったのだが、なんとなく、逃げ出した。
回りには木しかない、道らしい道はなく、木の間をただ歩いている。
そんな場所で私達は止まった。
「ここまでくれば大丈夫だろう」
「そうですね」
「あぁ、しっかし、モクって強いんだな」
「いや……相性がよかっただけさ」
そうなのか? とも一度思うが、やはりモクは強い、そう思った。しかも大学生だ。
そんな人が、ただ勉強についていけなくなっただけで自殺するなんて……
「さて」
レインが語りだす。
「どうする? どうせ俺達戦わなきゃいけねぇし」
「あぁ、そうだな」
「とは言っても、俺とツバサはもう戦ったからな」
「じゃあ、俺か」
「そうなるな、どうする? 俺からでも、ツバサからでも、どっちでも」
「……なら、ツバサ、まずは君と戦うよ」
「分かりました」
モクは回りを見回し、
「……ここは狭いな、もう少し動きやすい場所を探そうか」
「はい」
私達は再び歩きだした。
歩きだして数分たった。
その時、
「……なぁ、ちょっといいか?」
モクが話してきた。
「なんだ?」
「いや、少し聞いてほしい事があるんだが…」
「なんだよ?」
「あぁ、実はな…」
モクは語りだした。
必死に勉強をした結果、入りたかった大学に受かり。
親許を離れて一人暮らしを始めた。
新たな生活が待っている。そう思っていた。
そこで俺は、現実を知った。
まず、勉強についていけなかった。
これはまだよかった。
必死に勉強して、なんとか追い付けたからな。
そう、
これはまだよかったんだ。
本当に辛かったのは…
人付き合いができなかった。
人は一人では生きては行けない、ある本で読んだ言葉だ。
その身で感じたさ、勉強だって、参考書のおかげだ。
これを書いた人がいなければ、俺は駄目だったろう。
だから、人付き合いができなかった。
これでは生きて行けない。
なら……死を選ぶ。
大学の裏手が山で、あまり人が入るような場所ではなかった。
俺はロープと椅子を持って山に入って行こうとした。
その時だった。後ろから呼ばれて、振り向いたそこには、一人の人がいた。
同じ大学のクラスメイト、だった筈だ。
名前は知らなかった。元より隣の奴の名前も知らないからな。初めて声を聞いたような、その女子大生の名を知る筈がなかった。
何故ここに居るかを聞いた。
そしたらあいつは……
俺に告白してきた。
俺は断わったさ、
誰かを愛する権利なんて、俺には無かったからな……
そのまま山に入って、
首を吊った。
「今考えれば、その告白を受けていれば、少なくとも死ぬことは無かっただろうな……俺は、バカだよな」
「……」
レインは黙ってしまった。予想外につらい話を聞いたせいだろう。
だが、私は言った。
「……そうですね、あなたはバカです」
「だろう」
「今になって考えるのがおかしいんですよ。そして今考えるなら……相手の事も、考えてみてください…」
「相手の?」
「断られた相手も、あなたと同じ手段を選ぶ可能性があるんですよ…」
「……」
今度はモクが黙ってしまった。
「……私が、そうだったから…」
私は語りだした。
これは私がまだ、生きていた時の話…