第17話
男は自らモクと名乗った。
自分の名前を思い出せないと分かった時に、自ら付けたらしい。
年齢は18で、大学一年だったそうだ。私よりも年上だな。
大学の勉強についていけなくて、首を吊ったらしい。
色々聞いた分、私も色々話しておいた。
名前と、死因を……
会話が一息ついた時、辺りを見回してみた。
そこは本当に田舎だった。
コンクリートの道はある。だがそれよりも土の道が多く、まるで畑の畦道が本道のようだ。
畑に作物はない、季節的には秋から冬なのだろうか?
そしてその畑の、何故かその真ん中で、戦っている2人がいた。
1人は女性、多分年、手にカッターを持っている。
もう1人は男、帽子を被り、手には小石……というか、レインだ。
「快特通過待ち合わせ!」
いつかのあの技が放たれた。
ガガガガガガガガガ
ガスッ!
「うぅ……」
相手の女は倒れた、
「よっしゃ! 俺の勝ちだな!」
レインが勝ったらしいな。
「知り合いか?」
モクが尋ねてきた。
「えぇ、今勝った方、名前はレイン」
「そうか、彼とも話しておくべきだな」
そう言って私達は、レインに近づいた。
「久しぶり、レイン」
「おぉーツバサじゃねぇか、久しぶりだな」
「うん、勝ったんだね?」
「おうよ! これで三連勝だぜ!」
「それは凄いね…」
私は最初から考えると既に五連勝になるな……とはあえて言わなかった。
「だろ? …で、隣のあんたは誰だ?」
「初めましてレイン、俺の名はモク、言わずもがな参加者だ」
「お? 何で俺の名前を?」
「私が教えた」
「そうか、なら納得だ。よろしくなモク」
レインが右手を前に出した。
「あぁ、よろしく」
モクも右手を出し、2人は握手をした。
その時だった。
「っ! 危ない!!」
ドン
ザシンッ!
「え…?」
「な…?」
何が起こったか最初は分からなかった。
でも、直ぐに理解した。
私とレインが、モクに押されたんだ。
レインが倒した女が、起き上がっていたんだ。
そしてカッターを振りかぶって、切りつけてきたんだ。
それにいち早く気付いたモクが私達を庇いカ、ッターに切りつけられた
「モク!」
「……これぐらい大丈夫だ」
カッターはモクの左肩に当たったらしい、モクはそれを気にせず、女性に向かい合った。
「2人共、少し離れていてくれ……直ぐに終わる」
モクの言葉通りに、私達は畑から離れた。
ドスンッ
少し離れた所で、振り返って畑を見た。
そこに見たものは、立っているモクと、
倒れている女性と、
まるで畑に生えたような、大小様々な木の根っこだった。