第13話
「いや~ツバサは強いね、私の負けだよ」
「ありがとう、ミナトも強かったよ」
結果として、私は勝った。
気絶していたミナトが起きるまで待ち、私達は堤防に座っていた。
ミナトはまたハンチングを被り直し、髪は全てハンチングの中に閉まわれている。
うん。こうして見ると、やっぱり男みたいだ。
年下だから、男の子みたいだ、か?
それはともかく。
「ミナトの武器って、そのブイじゃなかったんだね」
「うん。こっちだよ」
ミナトはブイの巻かれた両腕をこちらに向けて手を開いた。
そこにはやはりペンダントがあった。私の十字架の物よりも細い鎖に、雫形の水色のロケット。それが両手に片方ずつにあった。
「ペンダント……私と同じだね」
私も十字架のペンダントをミナトに見せた。
「おぉ~それか~、とても強かったよ、それ」
「これはね……ある人から貰った大事な物だったの」
「あ、私も私も」
そう言ったミナトは
カチ カチ
ロケットを開いた。そこには写真が納まる窪みがあった。写真は……無い。
「これね、私のお母さんとお父さんからの形見なの」
「!?」
今、さらっと凄い事を言った気がする。
「あ! 私が死んだからだよ? だから2人からの形見……あれ? それは何か変だね、えっと……この場合は何て言えばいいのかな?」
「……分からない」
そんな事言ったら、レインの小石も、
あの女の人のナイフも、
この私のこれもそうだ。
これ等は何と言うんだ?
「ん~どうしようか?」
どうしようか? と言われても……
あ、そうだ。
「ねぇミナト、ハカセに会ってみない?」
「ハカセって、ツバサに色々教えてくれた人?」
「うん」
この世界の研究者だ。必ずこの物の名前も知っている筈だ。
「その人に会えば、これの呼び名も分かるかな?」
「多分ね」
「うん。私、ハカセに会ってみたい」
「決まりだね、行こ」
私が堤防から降り、砂浜に足を付けると、
前にあの男がいた。
さっきミナトが戦い、首を断たれた大柄な男だ。
私と戦いに来たのか、私を見つけて戦いたいのか、鋏を持って立っていた。
「……ミナト、離れてて」
「うん。頑張ってね」
ミナトは堤防の向こう側に降りた。
ジャキン
男は鋏を剣に変えた。
私は十字架を構えた。
潮風が流れ砂を運んでいる。
風が止んだ。
瞬間。行動に移った。
鋏を持って男が突っ込んで来たのを左に避け、鎖を鋏と体に巻き付けた。
だが、男の目は前を見ていた。私ではなく、ただ前を、鎖で動きを止められても尚、前へ進もうとしている。
……この男、私を見てないかもしれない。
恐らくは、さっき殺られたミナトを倒す為に来たのだろう。
必ず会えるとは限らなかったのに、それに二回目は勝っても意味がないのにな……
これはとても
殺りやすいな
ドスッ
という訳で、私達はハカセの部屋に来ていた。
ちなみにあの勝敗は、後頭部に十字架を刺し込んだ私の勝ちだ。
動かなくなった瞬間に、
「行こ、ミナト」
逃げるように扉を抜けて走って来た。
「入るよ」
「うん」
黒い扉を開け、中に入った。
今日はクリスマスですね、ですが予定も無いので更新します。
後、今日は新たな連載作を始めることとなりました。
よろしかったら、そちらもご拝読を。