第11話
そして戦いは始まった。
ミナトは間合いを詰め、
「はっ!」
右ストレートを放った。
「甘いよ」
私は十字架を前に構え、防御の姿勢をとる。
ガキンッ
ミナトは拳が十字架に当たる寸前に肘を曲げ、腕に巻かれたブイに当てる。
続いて左ストレートが来る私は十字架を右に払い、ミナトごと右に受け流した。そのまま直ぐに鎖を飛ばす。
「そっちこそ甘いよ」
ミナトは素早く半回転、私の方を向き、右手を伸ばした。
カキン
乾いた音がした。鎖の先端を見るとそこには、水色の鎖があった。
鎖の元は、ミナトの右腕のブイからだった。
「私ね、色々な物作ってたからさ、こうゆうの得意なんだよね」
水の鎖がブイの中へと戻って行く、
「さぁ、続けるよ」
ミナトは特殊なタイプだ。基本攻撃は拳による近距離、腕に巻かれたブイにより守りは硬い。その上、能力が水の生成によるあらゆる道具の創造。基本は水だからどんな形でも作れるだろう。
遠近両用の万能タイプだな。
「はっ!」
ミナトは水の鎖を再び飛ばした。私もそれに対抗して、鎖を飛ばす。
カチン
水が形を変えて、鎖の先端部が繋がった。鎖を封じるためだろうか。
それを見て私は、鎖を引っ張った。
「えっ!」
予想外だったんだろう、驚きの顔をしながらミナトがこちらに引っ張られて来た。
「か、解除!」
バシャア
水の鎖が水に戻り、砂浜を濡らした。
ミナトは砂浜に足を付き、そのまま攻撃に移った。両腕を前に出すとブイから水が零れ出し、個々の水滴になった。
その水滴はまるでナイフを形作ったような変化を起こし、その状態で、
「飛べ!」
こちらに向かって来た。
だが怯まない、似たような技は見たから対処は可能だ。
鎖を螺旋状に集めて、前に固めた。
バシャア バシャア バシャア バシャア
鎖に当たり水のナイフ崩れて、想像できる音が聞こえる。
鎖が水で濡れた。よく見るとその水は細い鎖でミナトの両腕のブイに繋がっていた。
「変化せよ!」
鎖の濡れている部分の水が再びナイフを形を作り、鎖のこちら側から飛びだした。
普通なら避けられない超至近距離の攻撃、それを私は、
横目で見ていた。
あの時と同じだ。
螺旋を前で維持したまま、鎖を伸ばし続けて遠回りに相手に近づくだけ、あの時は怒りで回りが見えてなかったから上手くいったが、今回はそうはいかなかった。
「そっちか!」
近づいてくる私を見つけたミナトは、右腕のブイを外して、
「てりゃ!」
投げつけてきた。
これは、あの技か。さっきもそうだったが、この後の一発はよく分からなかった。
対処法がわからない以上、取りあえずは、
カギィン
投げられたブイを十字架で払い落とし、十字架を横に構えた。首とか心臓とか、取りあえず人体の急所を防ぐことにした。
その瞬間だった。
シパッ シパッ シパッ
カキン カキン スパンッ!
二つは守れた。
一つは……左腕に当たったな、痛みは無いが、この攻撃により、2つ新たな事を知った。
一つは、今の攻撃の正体。今のミナトは金属製のブイをそれを両腕に巻いている。
それはは重りになり、リミッターになり、枷となっていた。
そんな物を腕に巻いて動いてたら自然に力がつく。そして枷を外したらその力は、普通より遥かに凄いものになる。
つまりは、その腕を素早く振るって水を飛ばしている。ウォーターカッターと同じ原理だ。
それを首に浴びれば、普通は真っ二つだ。
そしてもう一つ。ミナトは、手から水を直接出している訳じゃなかった。
水を飛ばす際に開かれていた手に、水の発生源を見つけた。
それは、ペンダントだった。
あれがおそらく、ミナトの本当の武器なんだろう。