プロローグ
オモイノシリーズ、掲載作品で始動しました。
もしかしたら、長い話になってしまいます。
よろしかったら、最後までお付き合いください。
人間とは
一人で生きては
行けないもの
何かしらの形で誰かの
世話になっているもの
それはよく分かっている
……つもり、だった。
そして人間は
死ぬ時は必ず
一人で死ぬもの
他者を巻き込まず、一人で逝ってしまうもの
それは分かっている
だから私は……一人で……
……ここは、この辺りで一番高い建物の屋上。
高度があるため、やはり風が強い。
髪の長い人ならばさばさと舞ってしまうだろうが、私はボブカットにしてきたばかりで、そんなことはなかった。
鉄の柵に手をかけ、下を覗き込む……やはり高い、エレベーターで30階まで上がっただけはある。
下を走る車も人も、全部が小さく見えるような高い場所、そこに私が居る理由は……。
「……いくか」
まず、柵を乗り越えた。
次に、靴を脱いだ。
お気に入りの、今日のために着てきた黒のワンピースのポケットに入れてあった物を取り出す。
財布、携帯、ボールペン、書きたいことを纏めたら三行だけで済んでしまった手紙。
そして……。
「……」
……うん。これは持っていこうかな。
右手でぎゅっと握りしめた。
そして、柵のほうを向いて……。
バッ、と……
後ろに、飛んだ。