犯人はあなたですね?
♦︎一話
仮面舞踏会。
その会場には、
ゴージャスな仮面で顔を隠した男女が、シャンデリアの光の下で酒を飲みながら静かに会話を交わしている。
首には太めのチョーカーも付けている。
しかし、何人かが席を外していた為、最初に集まったグループは揃わないまま舞踏会がスタートしてしまう。
そして事件は起こった。
探偵のすぐ目の前で、スーツを着て仮面を被った男性がナイフで被害者であるもう一人の男性を刺した。
会場にいた人たち「「きゃあああ!!!」」
被害者は床に崩れ落ちる。
探偵が取り押さえようとしたが、犯人はパニックの波に紛れ、逃走した。
すぐに会場は封鎖され、参加者たちは再度同じメンバーで集められた。
まずは繋がりのある人たちから話を聞こうと考えたのだ。
警察が到着するまでの間、探偵は一人ひとりにアリバイを尋ね始めた。
しかし、誰もが「トイレに行っていた」「荷物を取りに戻っていた」と、言っており逃走時間にいなかった人を炙り出すのは難しかった。
探偵はある女性を疑っていた。
探偵(27)「あなたが犯人ですね?」
女性1は肩をすくめ笑った。
女性1(24)「やーね、探偵さん。私は女性よ?さっきの男、スーツ着ていたじゃない。
犯人は普通に考えて男なんじゃないの?」
その場にいた三人の男性が女性1を睨む。
探偵「この場にいる男女は背丈が見事に同じくらいだ。
それに、喉仏が隠れるチョーカーも付けている。
目元は仮面で隠れていますし・・・男性用のメイクが得意なあなたなら可能なのでは?
スーツが少々大きめだったので体型もごまかせますし。」
女性1が反論をする。
女性1「でも、探偵さん、私は糖尿病よ?仮面舞踏会になる前、屋敷の控え室で最初に集まった時にそう話したじゃない。
あの仮面の犯人は、カロリーが高そうな料理を食べていたわ。
私には絶無理よ。」
探偵「それは、薬を使ったのでしょう?」
女性1の眉毛がピクリと動く。
探偵「毎日はさすがに血糖値が危険ですが、
今日一食くらいならインスリンを調整すればどうにでもなります。
あなたは、自分が犯人だと疑われないようにするあまり、逆に自分が犯人であることを自供していたんですよ。」
女性1「じゃあ、アレルギーはどうなのよ!女性2は卵アレルギーだったそうじゃない。薬を飲めば・・・。」
女性2(26)「!」
探偵は続けた。
探偵「薬を飲んでも、アナフィラキシーショックが起きれば死んでしまうかもしれない。
憎む相手を殺すために、自分の命まで賭ける人間などいませんよ。」
女性2は、ほっとしたように肩の力を抜いた。
女性1はぐうの音も出ないようだ。
♦︎二話
きっかけは、わずか三時間前、少年の無邪気な一言だった。
会場に並べられたバイキングコーナー。
シェフが失敗してしまった卵を持って来た。
食べ物を無駄にしたくないから申し訳ないが食べて欲しい、と。
卵焼きの周りが餃子の羽のように両側に跳ねていた。
少年はテーブルの上の卵焼きを見てこう言った。
少年(8)「卵焼きの形が、天使の羽みたいだね!」
シェフは一瞬目を丸くすると少し照れたように笑った。
卵焼き・・・羽・・・。
残念ながら私には天使の羽に見えなかったが・・・。
一つのものは人によって見え方が180度違う。
しかし、それであることは変わらない。
なるほど、そういうことか。
♦︎三話
事件解決後。
探偵は少年に声を掛けた。
探偵「君のおかげで犯人が分かったよ。ありがとう。」
少年はきょとんとした顔で探偵を見上げた。
少年「僕、何かしたっけ??」
探偵「ああ。君は私に大事なことを教えてくれたんだ。
忘れかけていた純粋な心をね。」
探偵は優しく少年の頭を撫でると、少年が心地良さそうに目を細めた。
そしてすぐにその場を去って行った。




