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25分の1の——シドウ  作者: シンサク


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第17話 未熟

 六本の腕による攻撃は厄介だった。

 ある点では真剣を相手にするよりも。

 戦いにくい。

 当たり前のことだ。

 竹刀とはいえ刀状のものを相手にした経験は生前あったが、六本の腕を持った者との対戦経験などあろうはずがないのだから。

 生まれて初めてならぬ死んで初めての体験だ。

 ゆえに、どのように対処するのが適切かわからない。

 しかし当の本人も六本の腕を用いての攻撃および戦闘に不慣れなようだ。

 それもまた当たり前のことだ。

 この少年が六本の腕を得たのは——腕を六本にする能力を得たのはここに来てからのことなのだから。

 シドウが足刀の使い方を練習したように、多少の練習はしたかもしれない。

 戦いぶりからして、最低でも一回は何者かと対戦していると見受けられる。

しかし、その程度では六本の腕の運用に習熟するには十分ではなかった。

 早い話、攻撃が単調だ。六本腕の強みを活かしきれていない。六本の腕にバラバラな攻撃動作をさせることがろくにできていない。

 六本の腕を出鱈目に振り回すか、片側の腕三本を揃えて振るうかくらいがせいぜい。

 気になるのは六つある拳全てにはめられた金属の塊。

 メリケンサック。指にはめて人を殴るのに使う凶器。

 おかっぱ女子の大太刀や茶髪男子のロープのように能力によって出現させたものではあるだろう。

 しかし一体どこで入手したのだろうか。

 少年の能力は腕を六本にすることに間違いない。

 相棒の少女は瞬間移動。

 メリケンサックを出す能力の持ち主が他にいた。その人物は六本腕の男子の仲間だったが敗退してしまい武器だけが残ったということなのな。あるいは倒した敵のものを奪ったか。

 どちらにしても、誂えたように六つあるのが不可解だ。

 それに洗練された大太刀の造形に比べて、メリケンサックは少々不恰好なのも気になる。

 六本腕男子が殴りかかってくる。

 考えていても拉致があかない。

 今は目の前の的に集中すべき。

 六本腕の相手は初めてでも、これまで様々な相手と対戦してきたのだ。

 相手の攻撃を見極めるのには慣れている。

 攻撃は基本、牽制程度にとどめる。

 防御と回避に注力すれば、そうそう攻撃を食らうことはない。

 動きからして、この少年は空手とおそらくボクシングを多少やったことがあるようだ。

 とはいえ、かじったという程度。おかっぱ女子の剣術のようにしっかりとは学んでいない。

 未熟もいいところ。ほとんど喧嘩の動きといってもいいくらいだ。

 その程度では本来シドウにまるで歯が立つものではない。

 シドウと多少なりとも戦えているのは、シドウにとって初対戦となる六本の腕を持っているからに過ぎない。

 六本の腕の動きに慣れてしまえば、勝負は一瞬でつけられる。

 シドウの勝ちは時間の問題だ。

 今は手こずっているが、六本の腕を抜きにして考えれば、おかっぱ女子の方がはるかに強敵だった。

 油断はできないとはいえ、勝利をほとんど確信していた。

 最初のうちは楽しげでさえあった六本腕の男子の表情に疲労と焦りが見え始めた。

 この少年も状況を理解している。自分とシドウの間に本来横たわっている、彼我の実力差を理解している。

 だからこそ奇襲を仕掛けてきた。

 そして奇襲が失敗しても、六本の腕に加えてメリケンサックの武装があるのだから、十分に勝算はあると考えていたのだろう。

 しかし、その考えが甘いものであったとすでに悟っている。

 シドウが自分を攻めあぐねているのは、六本の腕に対して慎重になっているから。

 六本の腕にシドウが慣れてしまえば、防御回避主体の戦いから攻撃に転じられてしまったら——自分は負ける。

 そうなる前に——六本の腕の動きに慣れられてしまう前に決着をつけないといけない。

 それはわかっている。

 わかっているが手立てを打てずにいる。

 色々と六本腕の使い方を戦いながら考えているようだが、有効な使い道を見出しているとはいえない。

 六本腕の男子がシドウから一旦距離を取った。

 決着の時は近い。

 そう思った時。

 目の前に2人の女子が出現した。

「!」

 目の前。目と鼻の先といっても良いほど近い。シドウの蹴りが届く距離。手を繋ぎ合った2人の女子が現れた。

 1人は無論、先程六本腕の男子とともに現れ、そして逃げていった瞬間移動能力の容姿端麗で長めの髪の女子。

 もう1人は背のとても低い女子。

 もう1人仲間がいたか!

 2人組だと断定したのは尚早もいいところだったか。

 六本腕の男子が不利とみなして、髪の長い女子がもう1人の仲間を連れて加勢に来た。

 いや、長髪女子の役割はあくまでも背の低い女子の方を瞬間移動で連れてくることか?

 加勢は背の低い女子の方のみか。

 2人の女子の顔に驚きや恐れ、その他色々なものがまぜこぜになったようなものが浮かんだことからすると、この距離の近さは計算違いなのだろう。目測を誤り、シドウのすぐそばに現れてしまったか。

 攻撃能力を持っているかもしれない背の低い女子を先に仕留めてしまえばいい——女子2名が現れてからのわずかな時間にそこまでの判断を下す。

 しかしシドウが行動に移すよりも早く、背の低い女子が髪の長い女子と手を繋いでいない方の手、右手をシドウに向けようとしてきた。

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