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25分の1の——シドウ  作者: シンサク


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第15話 勝負

 強い! 強い! 強い! 強い!!!

 何度目かの金属と金属がぶつかり合う音が響いた。シドウの爪先が変化した【足刀】の刃をおかっぱ女子が大太刀で受けたのだ。

 シドウとおかっぱ女子は一旦互いに間合いを取り合う。

 こちらに対して刃を向ける少女と相対しながら、シドウは血が沸き立つような高揚感を覚えていた。

 この少女は強い。剣の達人とは言えるはずもないが、中学三年生としては手練だ。

 それだけの腕を持つ相手と打ち合い、斬り合い、渡り合える自分もまた強い。

 自分が強いことくらい知っていた。

 だが、今ほど己の強さを実感したことはない。

【足刀】という特殊な能力があるとはいえ、大太刀と切り結んでいる!

 他の23人が【足刀】を与えられたところでおかっぱ女子と刃を交わすことはできまい。シドウの鍛えた身体と技があってこそ初めてできること。

 厳密に言うと、防御に向かない【足刀】が大太刀と刃を交わせているのは向こうが受けているからだが。

 おかっぱ女子が袈裟懸けに切りかかってきた。

 シドウはそれを躱した。

 そう。躱せるのだ。大太刀を【足刀】で受けるのではなく、躱せる。

 長大な太刀を能力関係なしに躱せるなら、一般的な長さの刀をおかっぱ女子が振るっていたとしても躱せるはず。

 それはつまり、通常の刀を手にした彼女とも自分は能力抜きで十二分に渡り合えるということ!

 真剣相手に互角以上の勝負ができるというのは、格闘家として一つの到達点ではないだろうか? 自分が強いと実感するのも当然。

 大太刀に関しては【足刀】と刃が一度ぶつかりあった時点で気づいたことがある。

 おかっぱ女子の構えた姿から見た目ほど重くないのではと考えていたが、そんなことはなかった。あの大太刀は見た目通りの重量がある。

 おかっぱ女子が怪力の持ち主ではないなら、それが意味することは——正直うまく言葉にできない。

 あの大太刀は所有者であるおかっぱ女子自身は不思議と実際の重さを感じず、その重さの影響を受けずに振るえるということなのか。正直ピンとこないが、おそらくそういうことだと思う。

 そうであるなら腕にかかる負担は極めて小さいはず。

 それでも振り続ければ腕の力も体力も消耗していく。

 シドウの【足刀】を防ぐ際には相当な衝撃を受けているはず。

 男女の体力差も考えれば、戦闘が長引くほどシドウが有利になる。力量はほぼ互角でもいずれ押し切れる。

 人形のように無表情なおかっぱ女子の顔に焦りの色が見えるのは、まんざら気のせいではないだろう。

 だが油断はできない。

 真剣が相手なのだ。一太刀浴びれば決着となってもおかしくない。

 シドウが関西弁女子にやったように首をはねる必要などない。

 首を狙うのは確実かつ相手をなるべく苦しませないで仕留めるためだ。倒すだけならば固執する必要はない。首をはねずとも刃物で深く切られれば人は死ぬのだから。シドウたちはもう死んでいるが、死ぬほどの負傷を負う。

 致命傷でなくとも深い切り傷を負えば戦闘継続は困難になる。トドメを刺されるのを待つだけの状態に陥る。

 だから一太刀も受けるな。

 かすり傷一つ負うことさえなく勝つつもりでいろ。

 戦いが始まって、数分が経っただろうか。

 突如として男女2人が現れた。一瞬前まで誰もいなかった空間に男子と、その男子の肩に手を置いた女子が立っていた。

 一体全体どこから?

 当然の疑問が頭に浮かぶ。

 面妖なことに男子は腕が六本ある。

 能力か。腕を六本にする能力。

 とすると、どこからともなく現れたのは容姿端麗な女子の能力によるものか。

 瞬間移動——という単語が浮かぶ。

 六本腕の男子がシドウに飛びかかってきた。

 同時に容姿端麗な少女は背を向けて走りだした。

「お兄ちゃーーーーーん!!!」

 と、悲鳴というよりもはや絶叫を上げながら。

 シドウはその叫び声に気を取られたりはしない。

 右側三本の腕を使っての殴打を軽く躱し、少年から距離を取る。

 シドウ、六本腕の男子、大太刀のおかっぱ女子の3人で三角を作る形になる。

 走り去る少女の後ろ姿が視界に入っていた。

 その姿が消えたかと思うと、さらに離れた地点に現れた。

 やはり瞬間移動。

 あの女子は運び役。六本腕の男子を連れて移動するのが役目。突然現れてからの奇襲攻撃を仕掛けるために。今し方やったように。

 女子自身の戦闘力はないに等しいのだろう。六本腕男子を連れて敵の目前に移動した後は一目散に逃げる。あらかじめそう取り決めていた。

 瞬間移動で逃げなかったのは連続して使えないからか。関西弁女子の動きを止める能力がそうだったように一度使ったら数秒は使えない。

 瞬間移動などという能力が無制限に使えたら、誰もあの女子を捉えることはできない。勝ち残りは確定的。制限があるのも当然のこと。

 瞬間移動能力の女子はひとまず置いておいていいだろう。

 逃げ去った者よりも、目の前にいる者の対処が最優先だ。

 対戦者が2人に増えた。

 1対2——とは厳密には言わないだろう。

 おかっぱ女子の反応の薄さ、声をかけたりしないことから考えて、六本腕の男子が彼女の探し求めていた人物ということはない。

 六本腕の男子は通りがかりの乱入者。おかっぱ女子と友好関係にある人物というわけではない。

 だから状況としては1対1対1。

 三つ巴の戦い——現時点では。

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