第13話 心情
シドウは相変わらず当てもなく歩きながら、ポニーテール女子の言動の意味するところを推し量っていた。
彼女はこの地にいる者たちと会って回るために駆け巡っていたようだ。
勝負を挑む目的ではない。シドウに現状での不戦の意思を示し、先に出会ったという4人組とも一戦交えたわけではなさそうだった。
おそらく、この灰色の地にいる者たちの人間性を確認しようとしているのだろう。
確認してどうするのか。
生き返らせる者を選考する気なのだろう。
茶髪男子は生き返る者を選ぶべきではないと考えた。
ポニーテール女子は生き返る者を選ぶべきだと考えた。
誰が生き返るべきかなど、たやすく判断できることではないだろうに。
一通りこの地にいる者たちと対面して、生き返るべきだと判断した者たちと出会ったら、それ以外の者たちに改めて戦いを挑む気でいるのだろう。多分。
とりあえずシドウは、取り立てて優先的に生き返らせたいとも生き返らせたくないとも思われたわけではなさそうである。
彼女の判定や信条がどうであれ、とやかく言うつもりはない。
彼女が挑戦してきたら応戦するだけだ。
爆音が聞こえた。
これまでに二度聞いた爆音。
立ち止まって空のカウントの様子を見る。
ポニーテール女子は、爆音の原因である能力の持ち主はすでに敗退したと言っていたが。情報に誤りがあったらしい。
いや、もしかしたら——
一つの可能性を思いつく。
爆破能力の正体が、地雷や時限爆弾のようなものだったとしたら。能力の持ち主がいなくなっても爆弾自体は残るのだとしたら。それが今になって爆発したとも考えられるではないか。
その可能性を検討しようとして、やめた。
爆破能力の主はまだ残っている前提でいた方が無難だ。
地雷や時限爆弾のようなものが存在している可能性は捨てられないが、不審なものや罠らしきものがないかくらい元より注意している。
爆音が聞こえてからそう時間が経たずに数字が減った。
16から15。
15から14へ。
立て続けにカウントが減った。
あの爆音——爆発で致命傷を受けて間も無く力尽きたか。
頭をよぎるのは帽子の女子と金髪の男子。
2人だからといって、あの2人とは限らない。
確かなのは、これまでに11人が敗退したこと。
この戦いにおける敗退者の総数である20人のうちの過半数を超えた。
あと9人の敗退でこの戦いは終わる。
人数の上では後半戦に突入した。
シドウは歩き出す。
チーム間の争いが続いている可能性も考えて、その後しばらくは度々空を見上げカウントを確認する。
十分も経たずにカウントはさらに減った。
残り13人。
当初いた25人から約半分になった。
もう1人減れば半分以下。
終わりが近いとは到底言えないが、着実に近づいて来ていると感じられた。
歩きながら、現状がどうなっているのかを考える。
とはいえ、考えるための材料はそう多くない。
残り人数は知れても、何者が残っているかまではわからない。
自分がこれまで出会ってきたのは関西弁女子を除いて、開始地点で顔を合わせた者たちばかり。
関西弁女子は倒したが、それ以外は取り逃がしている。
茶髪男子。帽子女子。金髪男子。ポニーテール女子。まだ残っているのか、それとも敗退したのか。
敗退者数の推移を思い出す。
茶髪男子を逃した後に2人敗退。
帽子女子と金髪男子、それからポニーテール女子と遭遇した後に3人。
つまり4人とも敗退している可能性がある。
もしあの4人がすでにいないなら、残り13人は全員シドウにとって未知の者ということになる。
まだ見ぬ者、出会っていない者しか残っていないのだとしたら、ある意味楽しみでさえある。
一体どんな者が残っているのか。どんな能力と戦うことになるのか。
ポニーテール女子の話していた4人組の存在が懸念事項ではある。
4人相手はきつい。その組が誰も欠くことなく今も4人であるかはわからないが。
その他の者たちも、何人で行動しているかは不明だ。
3名以上で行動している者たちばかりならば、シドウにとっては厳しい状況である。
たとえそうでも、仲間を募るつもりはさらさらないが。
1人で戦い抜くと決めたのだ。
結果負けたとしても、生き返れなかったとしても、自分で選んだことだ。文句などあろうはずがない。
元よりすでに失われた命だ。
先立ってしまったことは父と母に申し訳なく思うが。
大切なのは、与えられたチャンスに全力に取り組んだかどうか。父母のためと何が何でも生き返りを目指すよりも、自分にとってはそちらの方が重要なのだ。
他者と手を取り合う選択肢を拒むことを、全力を尽くしていないと捉える者もいるだろうが。優先されるのは他の者の考えではなく、シドウ自身の納得である。
生き返れずとも、本来ありえないはずの復活という奇跡のチャンスを貰えたけで、天からの声には感謝してもいいくらいだ。
まあ、そのチャンスを貰えることになった理由は向こうの不手際のようではあるから、心底感謝することもない気がするが。
それでも、不慮の大事故という空手家としてどれほど鍛錬しても抗いようのない出来事で命を落とした自分に、空手家としての鍛錬の成果を活かせる形での生還の機会をくれたことに——鍛え上げ、磨き抜き、練り抜いた自分の力量を測る機会を最期にくれたことに——感謝したい。
戦いの果てに命運が分けられるなら本望とまではいかないが納得はできる。
シドウはそれで良いのだ。
事故であっけなく人生の幕を下ろすだけかもしれなかったにも関わらず、己の力で生を勝ち取れる機会を得られた。
だから、いい。
思索を巡らせながら歩き回った末に、またしてもシドウは独りの女子と遭遇した。




