前世との差
わたくしは図書館で魔法について調べています。他にも転生や入れ替わりについて書いていそうな本は、一見関係なさそうな物でも目を通します。聖女についても調べたかったのですが、聖女に関して記載しているものはあまりなく、わたくしが元々知っている事が書かれた本のみしか見つけられませんでした。
「聖女がいたのは千年前でしたし、資料があまりなくても仕方ありませんね」
そんな事よりも転生や入れ替わりの方が重要ですが、やはりといいますか、何一つ手掛かりになりそうな事はありませんでした。御伽話も読んでみましたが、収穫といたしましては、物語的には使いやすい設定という事を学んだくらいです。
やはりどの学生も簡単に手に取る事のできる図書館の本に、禁忌に近い魔法については何一つ書いてありませんね。
「あなたがマチさんですね」
声の方に顔を上げますと、以前拝見した銀髪の男性が横に立っていらっしゃいました。
「はじめまして。リコ・ボーダーと申します。父が宰相を担っております」
思い出しましたわ。顔自体はよく合わせていましたが、あまり話した事はありませんでしたね。彼は無口な方でしたから。
「はじめまして。マチと申します。家名を持ち合わせない平民でございます」
彼が一礼すると、わたくしの隣の椅子を引いて座りました。
「こんなにもたくさんの本を読んでいたのですか?」
「はい。わたくしは平民故、魔法には少々疎い為、理解を深めようと思いまして」
「知識の探究を進めるその姿勢、素晴らしいですね。マチさんはテストで二位を収めるほどの賢さを持っているというのに、未だに学び続けるとは。賢い女性は魅力的な方が多いと言われますが、今痛感しています」
それは、以前と全く逆の言葉です。以前、わたくしが彼よりも好成績を収めた時、彼は言いました。
『女性というのはある程度馬鹿な方が可愛げがある。賢くなってどうする。男性に選ばれなければ何の力も持ち合わせる事ができないというのに。君はもう少し愛嬌というものを学ぶべきだ』
その口角を緩めた表情も以前のわたくしには一度も見せませんでした。
貴方が知る今のわたくしの情報は、以前貴方が嫌っていた可愛げのない女性のはずですのに。なぜ、今の貴方はわたくしに好意的に接しているのですか。
この姿になってから理解に苦しむ事ばかりです。
「よければ学びを深める手伝いをしますよ。魔法についてまとめればよろしいですか?」
そのくらいであれば、彼の提案を断る理由もないでしょう。それに、もう少し観察をしてこの違和感の正体を突き止める必要がありますし。
「では、よろしくお願いいたします」
わたくし達は特に会話する事なく、図書館が閉まる時間まで、並んでひたすらに本を読み、ペンを進ませていました。
「本日はありがとうございました」
まとめて下さった資料を受け取り、深く礼をして再び彼を見上げます。
「いえ、力になれたようで何よりです。また力が必要であれば頼ってください。知識面であれば特に役に立てると思いますので」
彼が礼をして去ったことでようやくまともに息を吸えるようになった気がします。
特段変なところはありませんでした。それゆえに尚更違和感が強まります。今より身分も容姿も優れていた頃は冷たくあしらっていた彼が、なぜ今この姿のわたくしに優しく接するのか。
「男性というものはよく分かりませんね」




