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デイリーガチャで現代無双!?  作者: タチウオ


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41.僕のことも話そう

「羽生さん、それって……あれ?」



 羽生さんの制止に意味を問おうとすれば、瞬間猛烈に鼻の中に違和感を感じた。

 そのままあふれ出る違和感を手で拭うと、鼻血が大量に出ているのがわかる。慌てて手で抑えようとするも、出血の量はそれでは抑えきれず、手から零れた血は僕の服を汚していった。



「あ、兄上、ティッシュ、ティッシュ」


「あ……ゆひね、あひはと」


 

 片手に大量のティッシュを持ち、もう片方の手の指で鼻の上部を強く挟み込む。キーゼルバッハ部位とか言ったかな。

 喋ることもままならない状態のなか、羽生さんは言葉を続けた。



「はぁ……鼻血程度で済んでよかったわね。やっぱり魔王との契約のおかげかしら?」


「ブ、ブネ。少年は大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。それくらいなら、ちょっと安静にしていればすぐに良くなるわ」



 アレさんは、珍しく狼狽えたような声を出す。いや、僕が以前倒れた時も、こうして心配してくれたんだろう。

 頭が痛いのも無視して情報を集めようとしたから、こうして鼻血という形で異常が出たんだろうか。鼻血程度、ということは、もっと酷いことになる可能性もあったのか。



「さて、お兄さん。そのままでいいから私の話も聞いて頂戴ね。もうここまで話したのだから隠す必要もないけれど、私の名前はブネ。無知蒙昧な人間に無限の知恵を授ける、竜の魔王よ。元、だけどね」


「ぶへはん」


「喋らなくていいわ。まず、あなたが鼻血を出している原因は、グリモワールにあるの。人間は、グリモワールについて深く知ってはならない。知れば正気を失う。気になることはあるかもしれないけど今は無視して頂戴」



 ブネさん……いや、羽生さんの方が言いやすいな。

 羽生さんが言っている内容だと、アレさんがまるでクトゥルフ神話に出てくる神のようだ。見れば正気を失う、みたいな。

 そういえば、【魔王(神聖)】の効果に、位階:魔王未満の存在からダメージを受けないとあったが、その正体を知るだけでダメージを与えるって、どれだけアレさんは上位存在なんだ?神とか?



「ぅ、おえぇぇぇ!!」


「兄上!?」

「少年!」

「お兄さん!?」


「あー、考えるのもだめよ。今の言い方だと考えちゃうわよね。私が悪かったわ、ごめんなさい」



 唐突に襲ってきた吐き気に、堪えられず吐瀉物をぶちまける。

 雪音たちは慌てるように僕を心配してくれる。ティナも、無言で僕の背中をさすってくれているようだ。



「ブネ、ワタシはそんなの初耳だったんだけど」


「ええ、言っていないもの。いつでも知ることができるのに、必要に迫られるまで知ろうとしないあなたの悪い癖よ」


「ぅうっ、ゴボッ」


「あっ」



 知れば正気を失うとか自分で言っていた癖に、この子は僕に何か恨みでもあるのだろうか?

 いつでも知ることができるとか、また新たな情報を小出しにしてくるせいで、更に嘔吐を繰り返す。

 頭の痛みは今さほどではないけど、このままだと別の苦しさでまた気絶しそうだ。



「ブネ、おぬしはいい加減その知っていることをなんでも話しちゃう癖をどうにかするのだ……」


「う、うるさいわね。教えるのが私の魔王としての存在意義だったのだから仕方ないでしょ」


「……それで教えすぎて文明を進めすぎて滅ぼしちゃったんですよね」


「ちょっと、アムドゥスキアス!過去の話はやめて頂戴!」


「ボクの過去はグリモワールに勝手に話されたんだけど」


「う、バエル、すまないね。例えはあった方がわかりやすいかと……」


「お兄さんの妹なんだしベリアルの話でよかったとボクは思う」


「待つのだ、それだけは勘弁してほしいのだ」



 蹲ったまま何も考えないように努める僕の頭上で、まるで漫才のような会話が繰り広げられる。

 ただの体調不良だったら非常に鬱陶しいだろうが、今の状況では逆にありがたい。

 おかげで、どうにか考えすぎないように意識を逸らすことができた。アレさんは正体不明。それくらいの認識でいい。今まで通りだ。

 吐き気も鼻血も収まり、後に残ったのは汚れた服と吐瀉物に塗れた床。



「……ありがとうございます。収まったので、一旦仕切り直しましょう。掃除するので待ってください」


「兄上、床は我が掃除する故、兄上は風呂に入ってくるといい」


「ありがとう雪音、じゃあそうさせてもらおうかな」



 自分の吐いたブツを妹に掃除させるのは兄として失格かもしれないが、僕自身も現状汚い存在なので、その申し出は素直にありがたかった。

 とりあえず、血が付いた服って漂白漬けでいいんだっけ……。

 後ろから、回復もはやいわね、という言葉が聞こえた。多分パイモンさんのおかげです。
















 シャワーをして体を清めたら、少し冷静になれたのでこれまでの状況を整理しよう。

 

 とりあえず、魔王は世界を滅ぼした者達で、僕の父さんが魔王を討伐した結果この世界に転生してきている。そして、元魔王は力をほとんど失っているということがわかった。

 異世界から来る魔物たちは、元魔王たちを探している。それが覚醒者たちにバレると、間違いなく殺されてしまうだろうということで、魔物とはコンタクトは取れない。

 覚醒者の中で唯一桜御翁元親だけが元魔王たちの正体と、魔物との関係を知っている。が、協力者となっており、情報は覚醒者側へ流れないようになっているらしい。偽名を使っている割に約束は守るんだな。

 

 これが、異世界の元魔王側……つまり、僕の妹である雪音が属する勢力だ。

 そして、敵対する覚醒者側の組織、赤誠コンポーネント株式会社。

 それに、なぜか僕の周りの現実を改変し、どこかに消えた父さん。父さんに現実を改変されたしわ寄せで、昨日は死にかけて気絶したらしい。今日は頭痛程度で済んでいたが、今度はアレさんの正体に迫って死にかけた。

 ちょっと見渡してみると、僕の周りに死亡フラグが多いような……。


 というかさっき気絶しなくてよかった。まだ胸ポケットの中に入れていた爆弾については解決していないのだ。

 いっそもうパイモンさんを呼び出して話し合いの場を設けようかな……。彼なら爆発も簡単に処理できそう。爆弾を飲み込んで体内で爆発させて、「ん?何かあったか?」みたいなこと言っても驚かない自信ある。

 僕の身の上話を正直に話してどんな反応をされるか少し怖いが、みんなのことを僕は知ったのだ。僕のことを教えないと、それは少し不公平だろう。



「お待たせしました」


「今来たとこなのだ」


「いや、どこから来たのよ」



 みんなが待つリビングに戻ると、雪音がボケた。羽生さんが突っ込んだ。

 普段からそんなやりとりしているのかな、なんて考えると、少しホッコリしてしまう。

 が、そんな気持ちは首を振って追い出し、話を切り出す。



「みんなに、ちょっと聞いてほしいんだけどね」


「?はい」



 阿武堂さんは改まって返事をしてくれ、他のみんなも無言で耳を傾けてくれる。本当に、良い人達だ。

 こんな人たちを裏切ることはできない。



「実は僕は……。君たちの敵対組織に、入っているんだ」



 だからこそ、葛藤に打ち勝ち自分から言うのだ。

 


「あっ」


「え?」



 羽生さんが、まるでアニメ勢に思わずネタバレした漫画勢のような顔をして口を手で覆った。

 雪音は頭を抱え、ティナはその手の中に居る蜘蛛へと目線を戻した。阿武堂さんは苦笑いをしており、アレさんは少し申し訳なさそうな顔をしている。

 三者三様のその反応に違和感を覚えていると、阿武堂さんが口を開いた。



「あの、ごめんなさい、お兄さん。実はその……。そのことについては知っているんです」


「え?……あ、もしかして、桜御翁元親……」



 協力者だって言っていた。昨日の今日だからまだ伝わっていないと思ったけど、そんなに情報の伝達が早かったのか。新しい覚醒者の情報全部横流ししているのか?あの人。

 と思っていたら、羽生さんが控えめに右手を挙げていた。



「兄上、こやつ、知っていることをすぐ他人に話すのだ」


「申し訳ないわ。まさか、そんなに覚悟して言うことだったとは思わなかったの」


「え、どういうこと?」



 話が見えない。

 


「お兄さん、私たちって、転生して魔王としての力のほとんどを失ったって話をしたじゃないですか」


「うん」


「それって、別に完全になくなったわけじゃないんです。バエルなら蜘蛛の強化と繁殖はもうできないですけど、操るのと操った蜘蛛の能力を手に入れる能力は残っているんです」


「数は力。ボクは今でも強い。というかどうしていちいちボクを例にする?」



 ぶいっ、とピースサインを作ったあと、そのままその指を阿武堂さんのほっぺに当てるティナ。

 ああ、だから雪音と喧嘩になったとき、本気で危険を感じるほどの迫力があったのか。どれくらい蜘蛛を操っているのかは知らないけど、たくさん操ったならそれだけ強くなっているはずだ。

 今の【念動力】なら知らないけど、気圧されたあの時だったら普通に負けていたと思う。



「それで、ブネが転生した時に残っていた能力なんですが……自分が知りたいことをなんでも知ることができる、所謂全知のような能力を残していたんです」


「そう、ごめんなさい。それで、あなたが覚醒者の集団に属したことは知っていて、今日みんなに話してしまったの」


「ああ、そういう……」



 なんだそのぶっ壊れ能力は。僕が今日手に入れたばかりの【全知天啓】の上位互換じゃないか?まだ使ってないからわからないけど。

 みんな既に知っていたのに、それでも変わらない対応をしてくれていたこと。むしろ、そっちの方が僕は嬉しかった。



「あれ、でも今日雪音学校に行ってないよね?」


「いや、こやつわざわざメッセージしてきたぞ。ほれ」



 スマホを操作していた雪音は、言うが早いか画面を僕に見せてきた。

 『あなたのお兄さん、例の能力者の組織に入ったわよ』

 という羽生さんからのメッセージが入っている。雪音はそれに対して既読無視していた。


 というか、僕のこと知ってるじゃん。出会い頭で「この方は?」とか聞いておいて、白々しいにもほどがある。

 元魔王組の中で、口調は常識人っぽいけど倫理的に一番非常識な可能性があるぞ。

 プライバシーも守れてないし。



「アレさんも知っていたんですか?」


「……まぁ、雪音ちゃんから聞いたから」


「どうしてそんなに申し訳なさそうな顔を……」


「いや、ワタシあんまり喋らない方がいいかと思って……」



 どうやらさっきのことを引き摺っているらしい。

 繊細か。

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