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デイリーガチャで現代無双!?  作者: 初凪 頼


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26.新しいおしごと

 寿司は美味しかった。

 琥珀麻呂さんは自称猫又なのに寿司を全然食べないのでいらないのか聞いてみたが、酢飯の匂いが嫌いだからいらにゃいとのことであった。寿司を食べるためについてきたわけではないのか。


 琥珀麻呂さんは暇だったのか、僕が先ほど置いた本を読もうとしていたが、謎言語で書かれている方の本は読めなかったのか開いてすぐ閉じていた。

 もう一冊、ボロボロな方の本は読めたようで、今はそのまま読み進めている。



「少年、今琥珀麻呂が読んでいる本、読んだのかい?」


「綺麗な方は読みました。読めませんでしたけど。今のは読んでないです」



 丁度読もうと思ってたところで帰ってきたので、ページを捲る直前だった。

 雪音が勝手に見たから良いのかなと思ったけど、あんまり見ない方が良かったのかな?その割には琥珀麻呂さんも平気で読んでいるみたいだけど。



「あぁ、よかった。ボロボロな方は読んだら呪われると言われている本だから。もう片方は呪われないけど、この国の言葉で書かれていないから読めなくて当然だね」


「おい!そんなのそこらに置いとくにゃ!読んじゃったじゃにゃいか!」


「クク……」



 琥珀麻呂さんがパシン!と音を立てながら本を閉じる。何が書かれているのかは知らないが、既に半分以上ページは進んでいたので、言うのが遅いとは思う。

 しかも【虚偽感知】で嘘だと判断できないから、本気で呪われている可能性がある。超能力も存在する世界なら呪いくらいあってもおかしくない。読まなくてよかった……。

 アレさんは相変わらず何を考えているかわからない目をしながら、ギザ歯を出して笑っていた。



「雪音は読んでないの?」


「さっき読もうとしたら同じことを言われたのだ。だから読んでいないぞ?」


「ふーん……琥珀麻呂さん、どんなことが書いてあったんですか?」


「おっと、少年。中身を聞いても呪われるからやめておいた方が身のためだよ」


「じゃあやめときます」


「にゃ!にゃーだけ呪われるのは不公平にゃ!これは日記にゃ!ヨツグの」


「琥珀麻呂」



 ピリッとした空気が漂う。

 琥珀麻呂さんの耳と尻尾の毛は逆立っており、膨らんでいるように見えた。相変わらずどうなっているんだそれ。

 それ以上話すなよ?というアレさんの無言の圧に屈した琥珀麻呂さんは、シュンとしたように大人しくなる。そこらに転がっている本が呪われている上に、中身を話そうとしたら怒られるのはちょっと不憫だ。

 しょんぼりしている猫耳美少女の姿にほんのりと心動かされていると、アレさんから声をかけられる。



「さて、少年。研修にしようと思っていた仕事が無くなったから、君にもうひとつ仕事を割り振りたいんだけどいいかな?」


「もちろんです」



 アルバイトをしているはずなのに、全然仕事をしていなくて後ろめたかったのだ。

 何もしないでお金貰ったりしたら、そのお金は本当に使っていいのか悩んでしまいそうだ。



「では少年、君にはネズミを保護する仕事を任せよう」


「ネズミの保護……ですか?駆除じゃなくて?」


「ああ、保護だ」



 ネズミ駆除の仕事なら聞いたことはあるが、保護の仕事もあるのか。

 いや、それ用の業者が存在しないからうちに依頼が来たとかか?にしても、ネズミなんて日常生活で殆ど見たことがないんだけどできるのだろうか。



「保護してほしいのはハツカネズミ。まぁ大体どの個体もこんな見た目をしているんだけど……これを持っていて寄ってきた子を保護してほしいそうだ」


「これは……?」


「なんかくせぇにゃ」



 アレさんは、麻でできたような小さい袋を取り出した。中になにが入っているのかわからないが、テーブルひとつ挟んだ距離で琥珀麻呂さんは臭いと言っている。一種の匂い袋のようなものだろうか?

 アレさんからそれを受け取り、匂いを嗅いでみたがそこまで臭くはなかった。むしろ、アーモンドのような甘い香りがほのかにする。



「それを持っていて寄ってくるネズミは、捕まえるための籠を近づけたら勝手に入ってくるよう躾されているらしい。ペットのネズミで大事にしているそうだから、けがをさせないように気を付けてくれ」


「ああ、あいつの……」


「知り合い?」


 何か訳知り顔で呟く雪音。

 これ、雪音の知り合いからの依頼だったらまた妖怪だとか魔王だとか名乗る人が出てきそうだな。

 ネズミ耳の可愛い女の子ならちょっと見てみたい気もする。雪音の知り合いらしき人は今のところ全員美形なので、ネズミ耳で可愛い女の子だと、僕のやっていたソシャゲのキャラっぽくて推せるかもしれない。

 十二支をモチーフにしたキャラなんだよな、確か。ネズミの付け耳を外すと気弱になってめちゃ可愛くて……じゃなくて。



「グリモワール、他に何か仕事はないのか?このままだとまた兄上が我の盟友を誑し込む気がするのだ」


「雪音、人聞きが悪いよ」


「ククク……それはそれで見てみたいから無いと言っておくよ。とはいっても、あの子は滅多に外に出ないから会わないんじゃないかな?少年、ネズミは合計20匹ほどいるらしいけど、全部捕まえられるとは思っていないからできるだけでいいよ。何匹か捕まえたらここに連れてきてくれ」



 雪音に風評被害だなんて言おうと思ったけど、最近は確かに雪音の知り合いの女の子とばかり出会っている気がするし、そうじゃなくても奏さんとはあんな雰囲気になり、海琴さんはそういう気も一切なさそうだけど手をつないだりしている。琥珀麻呂さんは……何もないか。

 ちょっと言われても仕方ないかなと思ったので言葉はそこで止めておいた。雪音は少し不満そうだ。

 

 それにしてもさっきペットのネズミって言ってたけど、逃がしすぎでは?

 それに、飼われていたネズミが野生で生きていけるとも思わない。大半は死んでいるのでは?

 とはいえ、断る理由もない。先ほど聞いた話の限り、その辺を匂い袋を持ってうろついて、ネズミが近付いてきたら籠を差し出すだけの仕事みたいだ。


 

「期限はありますか?」


「1週間で集まり切らなければ残りは諦めるそうだ。明日は……、少年、学校があるのかな?」


「はい、明日は通常通り夕方まで学校です」


「わかった。それなら、学校が終わってネズミを探し始めたらメッセージを送ってくれたまえ。家に帰るときも。それで出退勤にするから、もし捕まらなかったらここには戻ってこなくて大丈夫」


「わかりました」



 緩い勤務条件だと思うが、非常に助かる。学生だからというのもあるし、もし覚醒者として集合がある場合でも動きやすい。ホワイトすぎて将来ダメ人間になりそうだ……。



「それじゃあこの後早速行ってくれるかい?」


「わかりました」


「じゃあ我は依頼主であろう盟友の元に赴くとするのだ」


「にゃーも行くにゃ!」


「ネズミが怯えるからだめなのだ」



 もしかして、その依頼主である雪音の友達と僕が出会わないよう、先手を打って会いに行く……とか?

 雪音からの信用が失墜していることに対して少し悲しさを覚えたが、僕もさすがに中学生に手を出す気はない。阿武堂さんの膝枕は事故だし。

 

 琥珀麻呂さんは鼻息荒く名乗りを上げたが、雪音にピシャリと断られ、耳と尻尾を垂れさせシュンとしている。ペットとして飼っていたネズミを20匹も逃がすような場所なら、家の中はもっとネズミがいるのかもしれない。

 そんなところにガッツリ猫属性の琥珀麻呂さんが行ったら確かにネズミたちは怯えてしまいそうだ。


 琥珀麻呂さんは、あまりにも自然に猫又ムーブをしている。それこそ、魔王として名乗りを上げた時のティナや、覚醒どうのこうので跪いた時の阿武堂さんのように。

 こんな感じのテンションでネズミの魔王が出てきたらそれはそれで見てみたいから、いつかは会ってみたい。チューチュー言うのかな。6Pチーズとかお土産に持っていったら喜ぶかな、なんちゃって。その理論で行くと阿武堂さんは馬?だから人参持っていくことになるし、ティナにはハエとかダニみたいな害虫を渡すことになってしまう。

 女子中学生にそんなもの渡してたら普通に頭のおかしい奴である。


 さて、雪音も外に出る準備をしていることだし、僕も出発することにしよう。



「アレさん、お寿司ありがとうございました。おいしかったです」


「クク、喜んでもらえたようでなによりだよ」


「それじゃあ行ってきます。雪音、また家で」


「うむ、息災でな」


「また大げさな」



 しばらく会えないみたいな挨拶をされたが、雪音の平常運転だ。

 ネズミって、普通どこにいるんだろう。下水道のイメージしかない。

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