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デイリーガチャで現代無双!?  作者: 初凪 頼


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17.にゃんだぁ?

「なんだあれ……」


 事務所を後にした僕は、以前も猫を探しに来た公園へと訪れた。

 公園の中に入って早々、僕はそこに蠢く何かを発見してしまい、思わず声が漏れた。


 猫が何十匹も集まり、ひとつの塊を形成している。

 そしてそこから飛び出る人間の手足。誰かが猫にたかられている。


 猫好きであればよだれが出るほど羨ましいであろう光景だが、さすがに集まりすぎて心配になる。

 もし怪我しているところを寄ってたかって襲われているとか、死体に群がっているとかだったらどうしよう。などと考えつつ、念のため一枚写真を撮ってから近付く。


 ある程度近付いたところで、一匹の猫が僕に気付いたのか逃げ出す。それに触発され、全ての猫が逃走する。

 あまりにも急な猫たちの動きに、なぜかちょっとだけ罪悪感を覚えつつも、猫にたかられていた人の方を見る。


 

 白髪おかっぱでギャルっぽい恰好をした美少女が、信じられないものを見るめでこちらを見ていた。

 まさかこの時点で目が合うとは思わず、思わずのけぞってしまう。



「にゃんだぁ?なんか用かにゃ……」



 少女はゆらり、と立ち上がると、まっすぐ僕の目を見ながらそう問いかけてきた。

 寝転んでいるときは気付かなかったが、この人……猫耳がついている!あ!猫の尻尾もついている!しかも二本!

 突然の猫耳美少女とのエンカウントに、盛り上がる僕の心と、なんて話しかけようか迷う僕の心でせめぎあいが始まった。

 なんだか雪音の友達な気がする。屋外で猫耳猫しっぽ生やして、いかにも猫っぽい喋り方をするような女の子が厨二病じゃない訳がない。見た目は雪音より大人っぽいが、それは雪音が幼女にしか見えないからというのも要素としては大きそうだ。

 我は猫の魔王!とか言い出してももう驚かないぞ。



「すみません、人に猫が集まってたから襲われてるのかと思って、近付いたらこんなことに」


「にゃふ、にゃんが襲われるわけにゃい……んにゃ?」



 何かに気付いた様子で、鼻をスンスンと鳴らしながら匂いを嗅いでくる猫耳美少女。

 朝運動した後にシャワーを浴びているので臭くはないはずだが、緊張してしまう。

 ティナや阿武堂さんも見た目こそ非常に可愛いのだが、その見た目の幼さからどうしても幼女っぽさが連想され、異性として意識することは少ない。膝枕事件はさすがにドギマギしたが。


 しかし、この猫耳美少女。ちゃんと僕と同年代の美少女然としたその姿がここまで近付いてくるのだ。

 僕も思春期の男である。僕の顔の近くまで匂いを嗅いできた猫耳美少女。髪の毛がふわりと揺れ、その年頃の少女の匂いが……ん?

 いや、なんだかほんのり獣臭いような……。あ、そういえばこの人さっき猫に埋もれてたわ。


 てっきり女子特有のほんのり甘い匂いが漂ってきてドキッ!みたいな展開が待っていると思ったが、急に現実に引き戻された気分である。



「んー……もしかして、でかくておっかない女と知り合いだったりするニャ?」


「心当たりはあります」



 凄く失礼なんだけど、端的に表している。どう足掻いてもアレさんの特徴ではあるのだが、即答したりしてそれをアレさんにバラされたら僕がバラされてしまう(隠語)。

 にしても、僕の匂いを嗅ぐだけでそれを当ててくるとは……アレさんの体臭ってそんなに……?

 自分の服の匂いを嗅いでみたが、無臭だった。



「にゃはは、くさい訳じゃないにゃ。にゃんは猫又だから、鼻が利くのにゃ」


「はぁ」


「にゃ?驚かないんにゃね。やっぱりアレの関係者にゃ!」



 ビシッと指をさしてくる自称猫又。最近こんな感じの人ばっかりで、ちょっと慣れてきた感じはする。

 相変わらず【虚偽感知】は仕事をしないが、まぁいつものだろう。



「話はアレから聞いているにゃ!人の子が簡単にできる程度の仕事が欲しいとか言うから、にゃんが留守の間可愛い猫たちを見守るよう頼んでたはずにゃ。けど予定がなくなったから帰ってきたにゃ!」


「あ、依頼主の方でしたか」


「にゃ!でも、人の子はお仕事しにゃいとアレに怒られちゃうにゃ。お仕事は奪わにゃいから、一緒に可愛い猫たちを見守るにゃ!」



 猫耳美少女に手を引かれ、公園の隅にあるベンチへ移動して座る。

 座ってすぐに、自称猫又は目を瞑り、顔の横で2回手を叩く。

 

 急に謎の儀式を始めた彼女に困惑したまま、ふと猫耳に目を向けると、ピクピクと動いているのがわかった。

 おお、最近の猫耳バンドは動くのか。電動にしては自然な装着感だし、相当な高級品なのかもしれない。

 尻尾の方もよく見れば動いている。どうやって装着しているのか少し気になったが、流石にここで確認できるほど女慣れしていないので考えないようにした。


 綺麗な白髪と白い猫耳猫しっぽだから、白猫がモチーフなのかなと考えていると、気づけば周囲に猫が居た。

 どこから湧いて出てくるのか、ぱっと見渡しただけでも30匹はこちらに向かってきている。

 思わず立ち上がりそうになったが、先ほども不用意に動いて猫が全員逃げたことを思い出し、寸前で動きを止める。

 

 

「どうにゃ!これでたっぷりお仕事ができるにゃ!思う存分見守るにゃ!」



 そうドヤ顔で言いながら、膝の上に来た猫を手渡してくる。

 これはもう見守るというかなんというか。とはいえ、目の前の人物が依頼主のようなので、おとなしく猫を受け取った。

 ゴロゴロという音を立てながら、気持ちよさそうに目を瞑る猫。かわいい。

 一応アレさんには、依頼主と遭遇して猫に囲まれているというメッセージを送っておく。


 僕の膝の上に黒猫を置き、撫でながら辺りを見渡す。首輪をつけている猫も散見されるが、総じて毛並みが綺麗だ。

 餌を持っている人の周りに群がる鳩や鹿のような集まり方をしているが、猫がこうも集まってくると、かわいいのに不気味に感じる。そして、今一番疑問に思っている点。



 

 自称猫又が今行ったことは、明らかに超能力だ。

 

 改めて言わなくてもわかるだろうが、普通の人間に猫を集める能力は備わっていない。

 この人、ただのコスプレ美少女ではなく、僕や桜御翁元親と同じように能力を持っているに違いない。

 桜御翁元親について尋ねようか悩んでいるとき、向こうから話しかけられた。



「そういえば人の子がどこのどなたさんか聞いていなかったにゃ?」


「あ、僕は便利屋アレグリで最近働き始めました、姫宮夜嗣っていいます」


「ふーん、ヒメミヤヨツグ、ヒメミヤ……あー。にゃるほど」



 僕の苗字に対して心当たりがあったのか、何かに納得した様子。

 やっぱり雪音の友達だろうか。だが、ただの厨二病ではなさそうだが……。



「ヨツグはなんの魔王だったのにゃ?」


「……え?あ、いや、僕はそういうのじゃないんです」


「にゃ?でも人の形にゃから元魔王じゃにゃいのかにゃ?」


「え?」



 人の形だから元魔王。それはちょっと判定がガバガバすぎじゃないだろうか。

 この世界に何十億人の元魔王が存在するのやら。



「えーっと……すみません、僕はそういう設定からは離れてて。猫又さんはなんの魔王だったんですか?」


「にゃ?設定ってにゃんのことにゃ?それに、にゃんは妖怪にゃから元魔王じゃにゃいにゃ!猫又の琥珀麻呂っていうにゃ!」


「琥珀麻呂さん。僕は人間ですよ」



 猫の魔王とか言い出すと思ったけど、そういえば自分で猫又って言ってた。

 猫又と言えば、猫が長い時間を生きて発生する妖怪だとか聞いたことがある。それをモチーフにしているのか。

 雪音の交友関係を知れば知るほど、その設定の大雑把さに振り回されている気がする。

 てか、琥珀麻呂って本名なのか?【虚偽感知】が反応しない。



「琥珀ちゃんでいいにゃ。ヨツグ、嘘はいらにゃい。アレのお気に入りでヒメミヤの血ならただの人間なんてありえにゃい」



 ただの人間なんてありえない。この言葉にドキッとしてしまう。

 異世界の魔王だとかそういう設定は僕にはないが、確かに僕はただの人間ではない。

 ガチャを回して能力を手に入れる超能力者でもあるし、まだ試していないけど時を止めることもできるらしい。


 うん、これだけ聞くと猫を集めるよりも圧倒的に能力者している気がする。

 だが、そんなことは誰にも知られていないはずだ。

 阿武堂さんに対してもうまく誤魔化すことができているだろう。

 だから、周囲から見たらまだ僕はただの人間のはずだ。

 きっと雪音の兄だから適当に言っているだけのはず。


 


「にゃんが思うに、ヨツグは……」

 

「そこまでにしてもらおうかな」

 

「にゃ?でかくておっかねーのが来たにゃ」



 琥珀ちゃんから目線を外し、前を見ると1メートルほど離れてアレさんが立っていた。

 周囲の猫たちはアレさんに対してなんの警戒も抱いていないようだが、今のアレさんは何かに焦っているのか、琥珀ちゃんしか見ていない。



「琥珀麻呂、彼はまだ何も知らないんだ。新人だからね。余計なことをしてヨルに怒られたくはないだろう?」


「げっ、流石にそれは勘弁にゃ。ヨツグ、全部忘れるにゃ」


「え、あ、はい。わかりました」



 まただ。僕の知らない何かが動いている。

 忘れられるわけがない。琥珀ちゃんの話した情報。それらすべてが本当のことで、ヒントになるのだとしたら。

 ヨルは僕の父のこと。そんな父が、明らかに超能力を持つ猫又に知られていて、怒られるのを恐れている。

 そして、ヒメミヤの血という言葉……。勇者の子と呼ばれたことも頭を過り。






 

 なんて、全部設定の話だ。



 そうだ、僕の妹も姫宮なんだから、妹が中心になって厨二病ワールドを展開していたら特別視されるのも仕方がない。

 だから、全部設定の話なんだろう。



「じゃあ少年、先に事務所へ戻っていてくれるかな。給料はちゃんと出すから」


「はい、わかりました」



 全部設定で、現実は平和な現代でしかない。

 僕はそう納得して、事務所へと向かった。

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