期限は1週間
「はぁ、楽しかった。ありがとう、一緒に食べれて嬉しかった」
「いえ、わたしの方こそありがとうございました。とても楽しい時間でした」
わたしが噂とは違うってわかった途端にこんなに素直になるなんて…。
良いことなのか良くないことなのか…。
「良かったわ。さて、今日は公爵様が来るから用意をお願い出来る?わたしの身の潔白を証明するためにしないといけないから」
「そんな、お嬢様は違うと仰ったのですか?」
「もちろんよ。でも本人の言葉より噂を信じるみたい。だから用意をお願い」
「…分かりました」
"めっちゃイヤそうにするわね…"
わたしだって嫌に決まってる。
でもこうでもしないと身の潔白は証明されないし離婚もしてくれない。
どうせ後からアリアを連れてくるんだから、離婚してくれたって良いじゃない。
公爵は幸せになれるんだから。
そうしてリアは、肌のマッサージに髪のケア。ネグリジェも用意してくれた。
「ありがとう、リア。明日は起こしに来なくていいわ。後、朝じゃなくてお昼に食事を持ってきてくれる?」
「分かりました。その、お嬢様」
「ん?」
「ご自分のお身体、大切にしてくださいね」
わたしを心配してくれてるのだろうか。
まあ、自分の身体というか、ハンナ様のお身体なんだけどね。
「大丈夫よ、ありがとう」
「何かあればお呼びください」
ーパタンー
さて、公爵はいつ来るのだろう。
あんなこと言っておいて来ない、なんてことはないはず。
来なければそれはそれで困る。
わたしは身の潔白を証明しないといけないし、離婚して家族との縁も切って平民街で平凡に幸せに暮らす計画だ。
前世ではお父さんがお酒をいっぱい飲むからその分働かないといけなかった上、お金が足りなくなったらわたしに暴力を振って金を寄越せと言う。
それを考えたら今回はまだマシなのかもしれないけど、鞭も結構痛かったりする。
ーガチャー
!
まさか約束を守るとは、期待はあまりしてなかったからこれは…喜ぶべきことだろう。
怖いことには変わりないが…。
「こんばんは、公爵様」
「……挨拶をしに来た訳じゃないだろう」
「ええ、もちろんです。ただ、今回、するにあたって、2つのことを守ってくれませんか。」
上から目線ですごく申し訳ないけど、わたしにもプライドというものがある。ほいほいとされる訳にはいかない
「まず1つ目は、服の上からしてください。これだけは譲れません」
「2つ目は」
「部屋を暗くしてください。」
「…良いだろう」
「へっ?」
"しまった"
了承してくれるなんて思ってなかったから、思わず変な声が
「ほら、これで良いだろう」
そう言って明かりを消した
なんだ、意外と優しいところ、も!
「ーッ!フゥー、フゥー…」
"痛い!苦しい!"
いきなり?!
「公爵、様…!」
「何だ?興奮してるのか。」
"んなわけないでしょ!痛いのよ!"
「そ、。な…わけ…!」
口を塞いがない、で…!息が…!
「ーーーーーッ!ハァ、ハァ」
死ぬかと思った。
「もう終わりか。お前ならまだまだ出来るだろ…!」
◇◇◇
「ん…」
眩しい…朝?
わたし、どうしたんだっけ。もしかして気絶した?どんだけ欲求不満だったのよあの公爵
「おはよう」
「!?…何故椅子に?」
「昨晩は、すまなかった…」
あっ、申し訳ないが、これは驚きを隠せない。
今のわたしの顔はどうなってることだろうか。絶対見せられないような顔してるわ…ハンナ様のお顔で…
「証明できましたか」
「ああ、血液が出ていたし、あなたは売女ではなかったようだ。だが」
"は?だが?"
何言ってるのこいつ………間違えた。公爵
「極悪令嬢という噂については挽回出来ていない。怪しいところがあれば即刻殺す。家のためとはいえ、情報を漏らされたら溜まったものじゃないからな」
なにこの人。初めは噂とは違う人だと期待して公爵邸に来たけど、噂通り、いや、噂以上の方だわ。
ほんと嫌になる。
「分かりました。では、わたしをここの侍女として働かせてください。もちろん重要なことはしません。掃除やら洗濯やらをしますので、そこはご安心ください」
さあ、この回答に公爵はなんて返すのだろうか。
「はぁ、何故そこまでして自身の潔白を証明するのだ?」
何を訳の分からないことを。もちろん、ハンナ様に幸せに生きて頂くためですが?
と言う訳にはいかない。だったら
「やってもいないことをやったと言われ、知らないところで売女だの極悪令嬢だのと囁かれる。これがどんなに苦しいことか、あなたには分からないことです。」
そう、公爵は分からないのだ。確かに公爵は『悪魔の無情公爵』と呼ばれている。でもそれは、自分の言動が原因でついた二つ名だ。
しかも、公爵に関しては、二つ名が着いているのは確かだが、それ以前に、国を勝利に導いた英雄なのだ。だから悪口という悪口を言われることはない。
それに対しわたしは、身に覚えのないことで散々悪口を叩かれまくっているただの侯爵令嬢。
なんとも理不尽な世の中である。
「あなたも、苦しいと感じるんだな」
は、わたしをなんだと思ってるのこの公爵
「それで、許可してくださいますか?」
「…分かった。許可しよう。俺は今日から仕事で1週間ここを空ける」
「そうなのですね。行ってらっしゃいませ」
「………」
ーバタンー
返事はなし、と。
じゃあわたしも、侍女や執事の信頼を勝ち取るために動くとしようかしら。
着替え、お風呂、スキンケア。普通の令嬢なら出来ないことを、わたしは前世の記憶があるので全て1人で出来る。
それでも1人で何かをしないのは、侍女に身近なところにいてもらい、1人でも多く信頼を勝ち取るためだ。
後普通に仲良くなりたい。
2つ目の目的は叶うと思ってないけど、1つ目ならどうにかなりそうだ。幸い、わたしは世間知らずの令嬢じゃないから
見てくださりありがとうございました!