突然の結婚
この作品を見てくださった皆様、初めまして!
今回この作品を書いた如月と申します!
読んでくださる皆様、そして、私自身も面白いと思える作品を作っていけたらなと思っています。この作品が気に入っていただければ幸いです!
「お前の嫁ぎ先、決まったぞ」
18年間という長い年月の中、初めてわたしに向けた声。
聞いて即座に、わたしはにこりと笑った。
「本当ですか、嬉しいです。それで、わたしはどこに嫁ぐのでしょうか」
「ガルシア公爵家だ」
「そうですか…。とても光栄です」
『ガルシア公爵家』ここルシュピア帝国で、大きな権力を握る者の1人である、ルーカス・ガルシア公爵
容姿端麗、頭の回転が速い上、剣捌きも国内1と言われていて、戦場に行きながらも並行して公爵の仕事をするというとんでもない人。
しかし、そのスペックの良さとは裏腹に、ガルシア公爵の笑った姿は誰も見たことがなく、戦場での戦いっぷりがすごいことや、ガルシア公爵に嫁ごうとした令嬢達は皆追い出されたことから、冷徹で機械のような人間、『悪魔の無情公爵』『戦争の悪魔』というなんとも痛い二つ名が出来上がっていた。
そんな公爵の元へ行けと言うことは、わたしの存在を大分心良く思っていないこと。
けど、そんなことは全て知っていた。
それは何故か?
"ここは、わたしが読んでいた小説だから"
そういえば、前世のわたしが死んだ理由は過労死だったような気がする。
あまり覚えていないけど、前世は前世。
気にしている暇なんてない。
それよりも、ガルシア公爵家に行かずに済む方法を何とか探さないといけない。
理由は、わたし、ハンナ・アディノールは、小説の中で推していたキャラだから。
そしてハンナ・アディノールは悪役であり、最終的に死んでしまうからだ。
推しキャラが亡くなってしまうのは本当に悲しかった。だからこそ、この運命を変えてやろうと思っていた。
なのに…
"結婚前日になって初めて知ったんですけど?"
普通、婚約ですら勝手に決めるとしても前もって本人に伝えておくものだ。(1ヶ月前くらいに)
なのに結婚まで話が進んでるなんて、本当にわたしのことなんてどうでもいいと思っているのだろう。
小説の推しキャラは、謎に包まれていた。
どうして悪役になってしまったのか何も分からなかった。
でも、5歳で前世を思い出した時、2つの理由を思いついた。
1つは、父がわたしに関心を向けることはおろか、話すことも一切ないためだ。
その癖教育にはとてもうるさく、先生も最悪で、1度でもミスをすると鞭打ちが待っていたから。
それでも、わたしの性格が捻くれることなく耐えてこられたのは、蘇った前世の記憶があったからだろう。
2つ目の理由は、小説の中のストーリーが関係している。
ハンナはガルシア公爵に嫁いだ。
けれど、ガルシア公爵が関心を向けたのは、ハンナではなく1人でお店を切り盛りしていたヒロインのアリアだった。
ガルシア公爵はアリアの店へよく出向き、実力を買ったと言って公爵邸に住まわせた。それからは毎日アリアと話をし、仲を育んでいった。
そんな様子を見ていたハンナは、どんどん疲弊していった。
アリアには愛という気持ちをもって接するくせに、ハンナには軽蔑の眼差ししか向けなかったから。
何故軽蔑の眼差しをむけてくるのか。それは
すぐに分かった。
ハンナには、2つ上の姉がいる。姉はよく男と一緒にいるため、売女だとか、誘惑して情報を聞き出す極悪人だと言われていた。
……その噂が覆えったのは、本当に突然だった。
ここからは、わたしの実体験と小説のストーリーを照らし合わせて考えた推理。
ある日、わたしへの周りの目線がとても冷たくなった。その時に全て察した。父が、売女で極悪人なのはハンナだと言ったのだろう。
でも小説のハンナからすれば、そんなことを気にかけている場合ではなかった。
だって、ハンナを極悪人に仕立て上げた姉より、もしかすると公爵は噂は違うと信じてくれるかもしれないという最後の希望まで、突然出てきた女性に奪われてしまったのだから。
そうして、もうこんな人生は懲り懲りだと疲れ果てて飛び降りたのがハンナだ。
ちなみに、小説の中でのハンナの死は、階段で足を踏み外して亡くなったとされた。
とにかく、わたしがハンナになったからには、死にはさせない。
そのためにも…
「理解したのなら失せろ。話はそれだけだ」
ああ、考え事をしていて忘れてた。わたしにとって父とはその程度の存在だ。
「申し訳ありません。失礼致します」
"ふざけるんじゃないわよ。そんな人生歩ませない。幸せな状態で、わたしがハンナ様にこのお身体を返してあげます!"
今まで、ハンナ様の身体だからと、何となくで生きていたけど決めた。
わたしの生きる意味はハンナ様に幸せの土台を作ってお身体をお返しすること。
取り敢えず、幸せな人生を歩むためにも、早く離縁してもらえるように頼もう。
閲覧ありがとうございました!
次話は明日投稿したいと思っています。
楽しんでもらえると嬉しいです!^ ^