ほめていいのか
「さあさあ、こっちへ、こっちへ」
相撲の行司のよう、横にすべるような足取りで奥へと招かれる。
玄関から家の中まで、外の暑さがうそのようにひんやりとしていた。
はいってすぐの部屋の障子はとじられており、縁側をすすんであったつぎの部屋は障子も開いて、むこうの隅に行灯と片付けられた布団があるのがみてとれた。
きれいに片付いているというよりも、なにも物がないようにみえる。
「さあ、ここですここです」
縁側の曲がり角にあるその部屋は、むこうから西日が障子をとおして差し込み、きゅうに明るい。
こちらがわの障子はとりはずしてあるようで、ひとめでみてとれた中の様子に、おもわずヒコイチは声をあげた。
「 こ、りゃあ・・・まあ、・・」
ほめていいのか、どうなのか・・・
部屋の半分は、このあたりではみない真四角の畳がしいてあり、あとの半分は板の間のようだが、そこにみっちりと、表にあるような広口の浅い瓶が置いてある。
その、おびただしい瓶のむこうには、掛け軸のさがった床の間があった。
水音がして、瓶のなかで、赤い金魚がはねあがる。
―― この瓶ぜんぶに、やっぱり金魚がはいってんのか・・・
たしか、さきほど、『はいりやすい』と言っていた。
しかし、これだけの数の瓶に金魚を飼うのなら、いっそ池でもつくったほうが早かろうと縁側から庭をみると、ちょうど小さな池でもあったらよさそうな広さがある。