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瓶(かめ)屋敷と掛け軸のはなし  作者: ぽすしち


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28/29

ここには いねえが・・・


 ―― ※※ ――



  


「―― たしかに言われちゃいねえが、・・・墓をつくるなっていうくらいだからよ・・・」


 金色の眼でそれをきいた黒猫は、うなずくように頭をおろすと、きいたかヒコのじいさんよ、と位牌のほうをむき、いつもの割れ金のような笑いをこぼした。


『・・・なあ聞けや、ヒコ。おれには墓があるが、おれはそこにははいってねえ。けど、まわりのモンはそこでおれが成仏したと思ってる。それでいいのよ。 おれにあとを頼まれた番頭たちにとっちゃあ、それでいい。それと同じだろうよ。 おめえのじいさんは、なにもこの世に残っちゃいねえだろうが、おめえとこの世にいたってことに嘘はねえ。 それが嘘じゃあねえ『しるし』に、その坊さんがこれを作ってくれたのよ。 ―― だから、こりゃあよオ、おめえがじいさんに頼まれたとおりに、最後  おくったしるし じゃねえか 』


 猫が前足で位牌を転がす。


 カラン、と軽い音をたてたその木を、ヒコイチはあわててひろう。


 撫でた木の表面は、もう何度も拭いているのでつやがでるほどだが、坊主の手による墨あとは、黒く濃いままだ。


 なにやら達筆すぎて読めないのだが、じいさんの名が入っていることだけは、あのときのヒコイチにもすぐにわかった。


 だから、なんとなく、そこにじいさんが残っているみたいに感じたのだ。




「・・・そうか。ここには、じいさんはいねえか・・・」


 そういわれてみればそうだ。


 じいさんがいるのはヒコイチの中だから、あんなふうにかめ屋敷をめざしていたときに、急に出てくることもできたのだ。




 猫が返事の代わりにみゃう、と鳴いた。







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