プロローグ
初めまして。のんびり気ままに執筆します。
結末までのプロットは出来ているので
気長にお付き合いいただけると嬉しいです。
少年と老人が机を挟んで向かい合って座る。
「この内容で条約を締結しますね」
「…思ったより、貴殿らは強かった」
「それが【組織】というものです」
机の上に置かれた書面にサインをし、握手を交わす。
「では、共存を目指して頑張りましょうか」
「ああ。楽しみにしている」
歴史書に残らない、歴史の動いた瞬間だった。
―――
学術都市サジェス。『学問の都』と呼ばれるこの都市はシトカレア大陸中央部に存在する。国家に属さず運営される中立都市であり、都市の東西に聳え立つ学院は文系、理系問わずすべての学問の粋が集まっている。僕はそのうちの東学院を……………
卒業して無職になりました。
「はぁ、出身って隠せないもんかなぁ」
市街区にある広場のベンチに腰掛け、天を仰ぐ。
学術都市の東学院を卒業するにも関わらず、僕は職を得られなかった。
理由は『僕がリヒトリア王国の孤児院出身だから』。
リヒトリア王国は軍国と呼ばれるほど軍備に力を入れており、孤児院の経営や孤児の教育に予算が割かれることはほとんどない。そのため、孤児の中でもリヒトリア出身の者は職にあぶれることが多い。まさか、学院を出たうえであぶれるとは考えていなかったが。
「はぁ、卒業した以上寮も出なきゃいけないし…お金が…」
僕が悩んでいると、分かりやすく途方に暮れていたからか、僕に言っているような声がした。
「少年、悩み事かい?卒業式典午後にその様子ということは…卒業できなかったか仕事を見つけられなかったか、かな」
声のした方を見ると30代くらいに見える眼鏡をかけた男が立っていた。
(この人、どこかで見たような…)
僕の戸惑いを気にも留めず、その男は僕の隣に座って続ける。
「ああ、君は…仕事が見つからなかったようだね。私のところで働く気はあるかい?」
僕は目を見開いて男を見つめる。
「!?…いいん、ですか?」
驚きのあまり、そういうのが精いっぱいだった。すると男は
「はは、こんな風に言われたらまずは疑うものだよ」
と言った後真剣な表情に戻り、
「かなり企業秘密と危険の多い仕事だ。その代わり、賃金と衣食住は保証しよう。…どうする?」
と続ける。その言葉に僕は
「やります。やらせてください」
と食い気味に答える。男は一瞬驚いたような顔をするもすぐに微笑んで立ちあがり、手を差し伸べてくる。
「では早速行こうか。職場へ案内するよ」
僕はその手を取ってベンチから腰を上げ、男についていく。
これがすべての始まりだった。