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寄せ鍋闇鍋ファンタジー(仮)  作者: 寄せ闇の黒幕
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プロローグ

2023年1月4日


契約社員の長谷川匠は、年末年始の連休の最終日を迎えていた。例年なら連休の最終日ともなればスマホのアプリ三昧で終えるパターンなのだが、今年ばかりはちと事情が違うのだ。


昨年の年末に彼の父親が天に召された。


葬儀はどうにかこうにか乗り切ったが、彼と彼の兄などは相続放棄しようと考えているので、その対応やらなにやらで午前中は慌ただしく過ぎていき、午後に入る頃には愛用のスマートフォンを下敷きにするのを何とか回避しながらうたた寝モードに入ってしまったのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「カチっ」


何かが解錠されたような音によって長谷川匠に思考が戻る。テレビの音がしていても朝までぐっすりな彼にしては珍しい。


おそらく、うたた寝だったからだろう。


思考は戻ったが目は開かずボーっとしていた彼の耳に目覚まし時計のカチカチカチという稼働音がやけに響く。


あと少しだけ・・・誰に言い訳するでもなく思考に耽っていた彼にその声は不意に届いた。



「お前に頼みがある」



正確に言えば声ではない、耳を通してではなくダイレクトに脳に訴えかけてくる。


例えるならドラマの回想シーンを脳内再生している時のセリフがリフレインされているような感覚が近いかもしれない。


最初はずっと視界が暗転している感じだったがおぼろげながら映像のイメージも浮かんでくる。


そうは言ってもどことも知らない真っ暗な空間で何者かが、もがき苦しんでいるような感覚だ。


雰囲気だけでいうなら流砂に飲み込まれそうなところを全身で砂を掻き分けて辛うじて飲み込まれていない、そんな緊迫感が伝わってくる。



「お前に頼みがある」



これは頼まれちゃいけない案件だ。


まだ頼みの内容はまだ聞いていないが、よほど空気の読めない奴でない限りは予想が出来る。


この声というか意思の主は窮地に立たされている。


おそらくは、その状況を打開する手助けをしてくれというわけだ。


普段ならどこの馬の骨かわからないやつを助ける筋合いはない・・・と言いたいところだが、不思議とそんな感情にはならない。


窮地に立たされながらも親指でサムズアップするようなタフガイ。たぶん、そんな感じの奴に違いないと感じるからであった。


むしろ、感情的には手助け出来るものなら手助けしているあげたいくらいだ。


ただ考えてみてほしい。


もし、砂漠の中心の砂地に生きることへの希望を捨ててない魚がいたとする。それをカメラマンの撮った映像越しに自宅のテレビで見られたとしてどうにか出来るだけだろうか?


他の人がどう考えるかはわからないが長谷川は己には無理だと考える人種なのだ。もし間に合わないとしても気休めだとしても魚を助けたいと思うことに異は唱えない。


ポーズとしての安請け合いに長谷川は同意しかねるのだ。故に無理な依頼には最初から断りを入れるように生きてきたし、これからもそうするつもりだ。



「お前に頼みがある」



その訴えは焦れるでもなく、怒るでもなく、淡々としながらも決意のような意思を感じさせた。


(・・・三顧の礼って言葉もあるし、目上の者からの願いを3回以上断るのもさすがに気が引ける)



「わかりました、お役に立てる可能性が高いとは思えませんがお話だけは伺いましょう」


「よくぞ申した」


心なしか声のトーンが上がり気味になりながら本題へと話は進んだ。


「頼みというのは他でもない。世界を救ってはくれまいか?」

「無理です」


長谷川は発言後のライジングを叩くように間髪入れずに否定のパッシングショットを放つ。当然であろう。世界を救える者が契約社員に座に甘んじているわけがないのだ。



「ほう、なぜ無理と断言できるのだ?」




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