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役割

「輝彦」


 暑い日差しが容赦なく肌を焦がす。二十八度でも猛暑と言ってあの頃から今気温は十度も上がっている。猛暑を超えた酷暑の中でも子供というのは元気なものだ。


「お父さん何?」


 僕は息子の前に近づき同じ目線にまで屈む。そしてわざと深刻そうな顔を浮かべ、これから言う事は二人だけの大事な話だという空気を醸し出す。輝彦の顔は思惑通り少し強張ったものになる。


“長谷川さん? そんな駐在いないですよ”


 その後彼の存在も消えていた。役目を終えたという事なのだろうか。

 

“うちはずっとシングルだから大変だけど、この子の為に頑張ります”


 もちろん和彦もだ。歪なものだ。和彦の事はなかった事になっているのに、僕の事は憶えているのだから。どうやって辻褄合わせが行われているのかは知る所ではないが、この力の影響範囲というのはその先を想像するに、思った以上に大きなものなのかもしれない。


 息子の目をまっすぐ見つめる。

 僕は消えなかった。だが僕もある意味では対象者だ。



【苦世救世】



 説明のつかない感情。そうしたいからではない。そうするものだからだ。

 二度目に訪れたあの日以降、耳の奥からなのか頭の奥からなのか分からない所で聞こえ続ける声は、不思議と僕の心を落ち着かせ平穏をもたらした。


 どれぐらいの人間が関わっているのだろう。自分以外にもおそらくいるのだろう。でなければこんなもの既に廃れているはずだ。

 いまだに何も分かっていない。選ばれた今となってもまだ尚。ただ僕らは動くのみだった。何らかの意志に導かれるままに。


「白神山の洞窟は危ないから、入っちゃダメだぞ」


 驚きながらも、その目に興味の輝きを宿した息子の目を見て僕は安心した。


 彼ももう、手遅れだ。 

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