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手遅れ
『……ザ、 ザザ、 ぜ …… 、 』
静寂なはずの室内でその音だけは今もずっと鳴り続けている。
耳の奥からか、はたまた、あの場所からなのか。
『ザ……く、ぜぜぜ、ザザ、、く…… 』
大人だから、子供だから、そんなものは関係ない。
幼いからと言って許されない事もある。取り返しのつかない事もある。
“手遅れだ”
ノイズのような音の中で、それとは全く異なるクリアな音声が飛び込む。
――そう、手遅れなんだ。
もともとそういう運命だったのか。どこかで変わってしまったのか。
いずれにしても、手遅れという事実はもう変える事は出来ない。