99.ぼったくりも良いところ
「それじゃあ、俺たちは行くぜ。情報提供ありがとな」
「うぅい。いってらっしゃぁい」
路地の近く、小声で宣言する男性たちに、ノガワは手を振った。
直後、男性たちは駆け出し、路地へと入っていった。
ーーさてさて。路地には何がいるかな?子供だけって可能性は低い気がするからねぇ。
「いやあぁぁぁぁ!!!」
「やめろよおぉぉぉぉ!!!!」
路地から、痛ましい悲鳴が上がる。
それを聞いた通行人たちは顔をしかめ、路地を覗き、少しくらい顔をしながらも離れていく。
可哀想だと思う気持ちはあるようだが、助けたいとまでは思わないようだ。
ただ、途中から空気が変わり始めた。
子供の悲鳴は聞こえなくなり、野太い声が聞こえるようになってくる。
それと共に、
キンキンッ!
「死ねぇぇぇ!!!!」
「俺たちの平和のためにぃぃぃ!!!!」
激しく金属がぶつかる音。戦闘しているというのがハッキリと伝わってくる。
コレには通りがかる人たちも慌てて、すぐに衛兵たちが呼ばれてきた。
ーー思ったより衛兵の到着が速かったなぁ~。残念。もう少し、時間が稼げるかと思ってたんだけど。
「………くそぉ!!!」
「ま、待てえええぇぇぇ!!!!!」
しばらくすると、路地から1人の男が飛び出してきた。その後の後ろから制止の声が掛かるが、止まる気はさらさらなさそう。
男は手に持っていた剣を振り上げ、ちかくに集まっていた野次馬の村人たちへ、
「キャアアァァァァァ!!!!?????」
響き渡る悲鳴。それと共に、赤い血しぶきも飛び散った。
恐怖で固まっている村人たちだったが、男の方は止まることなく、動けない村人たちへ次々と斬撃を浴びせていく。一瞬にして、道の横幅は全て赤色に染め上がった。
ーーふぅ~。怖いねぇ~。……あのお兄さんが来ないくらいの所まで、ちょっと離れておこうか。
「お前!何てことをしてるんだ!」
「くそっ!離せ!離せよぉぉぉぉ!!!!!」
ノガワは安全のために離れたが、あまりその必要は無かったようだ、
すぐに近くまで応援に来ていた衛兵に取り押さえられ、動けなくなってしまったのだ。
ノガワはその様子を見つつ、少し横に動く。
タタタタタッ!
直後、小さな影が横を通り抜けていく。それは、明らかに子供だった。
ーー途中で何人かとぶつかって、財布をすってたね。仲間が捕らえられても自分の利益を追求するのか~
なかなかにシビアな世界なのかかも知れないと感じた。
ーーん~。………でも、元々バレたらこうする予定だったって言う可能性も考えられるかな?もしも路地にいることがバレたら、捕まっていない子たちは野次馬から財布を盗んで、隣町にでも行くように、とか。
ノガワは色々な可能性が考えられたため、決定的な判断はしないことにする。
ーー決めつけちゃうと、それ以外考えられなくなって頭が硬くなっちゃうからねぇ~。
利用価値があるかも知れないので、誤解するのも良くない。と言うことでコレを考えるのはここまで。ノガワは、思考を別のことに切り替える。ノガワが路地の方に目をやると、
「イテテテテテッ!」
「ふぅ~。油断してたぜぇ」
ノガワに情報を提供されて路地に入った男性たちが、血の付いた服で出てきた。
彼らが傷付いた理由は、元をたどっていくと、ノガワが情報を提供したせいでもある。そのため、ノガワは近づいて良いモノかと少し悩んだが、数秒考えた後に結局近づいていった。
ーーやっぱり情報は欲しいからなぁ~。ある程度恨まれてるとしても、ここは無理にでも聞いた方が良いよね。次の町でも、こういうことはあるだろうし。
「大丈夫~?思ってたより、面倒そうなのがいたんだねぇ」
「おっ。ガキ。お前は大丈夫だったか?」
友好的な声が帰ってきた。ノガワを恨んでいると言うこともなさそうだ。
ーーよかったぁ~。
ノガワは安堵する。それから、
「僕は大丈夫だったけど、お兄さんたちは大丈夫なの?結構激しく金属音がしてたけど」
「ああ。割とケガしたけど、死にはしなかったぞ。まあ、これくらいで済むなら、教会に払う金よりリターンの方がでかいかもな。また、何かあったら教えてくれ」
「はいはぁい!……まあ、でも、しばらくしたら僕は出て行っちゃうけどね。旅人だし」
教会に払う金、というのは、治療費のことだ。じつは簡易人たち、基本的に一般人は回復魔法を使えず、回復魔法をかけて貰うには教会に行かなければならないのだ。
ーーしかも、割と治療料金は高いって言うね。……まあ、大きい怪我の際の治療料金は、前の世界よりも安いかも知れないけど。
召喚される前の世界で何百万や何千万掛かるケガも、この世界ならその1割以下で抑えられる。ただ、擦り傷の治療費が、前の世界の10倍以上なのは納得がいかないが。ぼったくりも良いところだ。
「なんだ。ここに住まないのか?お前のおかげで盗みもしばらく少なくなるだろうし、治安は良くなると思うぞ。定住するには良い条件の場所だと思うが」




