98.奴隷症に売るって事は、もしかして結構稼げてるのかな?
「子供なら、奴隷になってもそこまでひどい扱いは受けないことが多いからな」
「小さいうちは、特にひどいことはされにくいからねぇ。………でも、奴隷商に売るって事は、もしかしてお兄さんたち、結構稼げてるのかな?」
ノガワは小声で尋ねてみる。
その質問を受けて、男性たちは苦笑しながら頭をかいた。
奴隷は、1人売るだけでもかなりな額になるので、子供だとしても数人売れば、かなりの額になるはずだ。
「じ、じつは、良い稼ぎが出来てるんだよなぁ」
「も、もちろん、稼ぎの少しは村のために使ってるけどよ!」
「いやいや。村のためって言っても、毎日酒屋にいる客に酒を1杯おごるくらいじゃねぇかよ」
「「「ハハハッ!」」」」
笑いが起こる。
ーー村思いなのかと思ったら、どちらかと言えば金目当てだったのかぁ。……まあ、本心はともかく、結果として村のためになってるなら良いのかな?治安の悪化を抑える効果はあるだろうし。
ノガワは、笑っている男性たちを見ながら、彼らの村にとっての重要性を考えた。
「ふふふっ。それでも、良いことは出来てるんじゃない?これからも、気をつけながら頑張ってね」
「おお。坊主も気をつけろよ!」
「また、盗みをしたと間違えられないように、な」
「お、おい!それを言うなよ!疑った俺が悪いみたいじゃないか!」
また笑いが起きる。
それから、少し落ち着いたところで、ノガワは男性たちと別れた。
話した時間はそこまで長くはなかったが、きちんと全員の過去の記憶を改変してある。
ーー僕も手慣れてきたねぇ。人の記憶を変えるとかいう常識人離れしてることに、そんなになれたくなかったんだけどなぁ~。僕、か弱い一般人のはずなんだけど。
取り敢えず、沢山の人を殺し続けられるのが、か弱い一般人でないのは確かだ。
ただ、ノガワはそんなことは気にせず、自己弁護のような妄想を続けた。
そんなことをしながら歩いていると、
タタタタッ!という軽い足音が後ろから聞こえてきた。
ノガワが振り返ると、走ってくるのは1人の少女。
ドンッ!
「キャッ!」
ノガワと少女はぶつかる。
だが、ノガワはよろけなかった。
なぜかって?
それは勿論予想していたからだ。
そして勿論その後の、
スッ。
倒れながら、自然に伸びてくる手。
ノガワは、その手をシッカリと握った。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう」
手を握られて倒れずに済んだ少女は、うつむきながらお礼を言った。
下を向いたことで見えないが、きっとその顔は、
ーー悔しい表情で歪んでるんだろうなぁ~。この子、今僕の財布すろうとしたし。
この少女は、噂のスリだった。
きっとこの子も、北から流れて来たのだろう。
………べ、べつに洒落ではない。
「それじゃあ、気をつけてね。前を向いて走るんだよ?」
「う、うん。ごめんね、お兄ちゃん。ばいばぁい」
ノガワが声をかけると、少女は無理矢理笑みを作って駆け出していった。
その背中を、ノガワはゆっくりと追いかけていく。
ーー悪いけど、後を付けさせて貰うよぉ~。君たちが普段何処にいるのか、シッカリ確認しておかないといけないからねぇ。
少女は大通りに出ると、しばらく走って路地に入っていった。
ーー路地かぁ。下手に入って、後を付けてることがバレてもいけないしなぁ。
数秒間考えた後、ノガワは適当に近くの本屋へ行って本を買う。
そして、路地の見える場所に行って、本を読むフリをしながら、路地を見張ることに。
因みに買った本は、『あなたの知らない特殊な魔物の倒し方』である。
ーー本も意外と面白い!この世界だと印刷業が発達してないから、結構値段は良い感じだったけど、それに見合うくらいの面白さだよぉ。……っと、大事なのは路地を見張ることだった。危ない危ない。
「……また1人。……もう1人も行った。あっ。1人出て行ったね」
見ていると、次々と出入りを繰り返す子供たちの姿が。
しかも、なかなか上手く人に紛れて入ったり出たりしているので、バレにくそう。
ーーでも、見つけてしまえば、こっちのモノだよ。
「……ん?さっきのガキじゃないか」
「あっ。さっきのお兄さんたち。どうしたの?」
しばらく見張っていると、後ろから声をかけてくるモノたちが。
彼らは、盗みを働いたりする子供たちを捕まえて奴隷商に売りさばく、とても心優しい男性たちだった。
ーー心優しい?何処を見てそう言ってるんだろ?
「いやぁ。見回りだよ。へんなことをしてるがきがいないかってね」
「なるほど。……じゃあ、ちょっとお話ししようか」
ノガワは笑みを浮かべて、男性たちを少し遠くの人気の無い場所まで連れて行く。
そして、
「ねぇ。子供たちの住んでる場所、知ってる?」
「は?住んでる場所?そりゃあ、どっかの路地裏とかに住んでるんだろうけど、………それがどうかしたのか?」
「……じつはさ。子供たちが良く通る路地の入り口を見つけたの。多分、そこから入ったところに子供たちがいるんじゃないかな?」
ノガワは、早速発見したモノを報告した。
それを聞いた男性たちの顔は、少し悪い顔になる。
ーー沢山捕まえられれば、それだけお金になるからねぇ。良い稼ぎになるでしょ。




