95.ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
「……それでは、失礼しました」
「うん。またねぇ~」
ルティアーヤへと伝えたいことも言い終わり、ノガワたちは解散する。
部屋から全員が出ていったところで、
「……ふぅ~」
小さく、しかし、深いため息を吐いた。
今は、とても久しぶりの、本当の1人の時間である。
ーーラウスもいないなんて、久々だなぁ~。こんなの、ラウスに王城へ侵入して貰って以来じゃないかな?
ラウスは、魔王たちに連れて行かれてしまっていた。
久々のそんな時間に、ノガワはうれしさと、さみしさを感じる。
ノガワは少し黙って目線を床に落とした後、
「……片付けでも、しておくかぁ~」
そう呟き、椅子に仕込んでいた色々な道具を取り外していく。
窓にあったカバンなども仕舞い、部屋を元通りにした。
ーーあぁ~。もうやることなくなっちゃった。クッキーとか、食べても良いけど………暇な間ずっと食べてたら、たぶん太るよね?
多分ではなく、確実に太るだろう。
「…………本でも読むかぁ~」
ノガワは、最初にここに来たときに幾つか用意して貰った本を手に取る。
ほぼ全て、フィクションの物語のようなモノだ。
だが、探してみると、その中に一冊だけ、
「『布1枚で作れる、簡単オシャレ小物』かぁ。……暇だし、何か作ってみようかなぁ」
ノガワはそんなことを思いつつ、本を開いた。
その瞬間。本を開いたその手が、そして、ノガワの表情が、固まる。
ーーえぇ。何でこんな所に、こんな本があるの?
中にあった本と、カバーの本がまったく別ものだった。
どうやら、カバーを付け間違えたようだが、それにしても内容の差がひどすぎる。
ーーなんで、魔王様の日記があるのおおおぉぉぉぉぉ!!!?????
入っていたのは、魔王の日記だった。
それも、3冊目の。
ーー3冊目ってことは、1冊目と2冊目があるんだよね?最後まで日記は書いてあるから、もしかしたら4冊目とか5冊目とかもあるかも知れないけど。…………読んじゃって良いのかなぁ?
ノガワは選択にためらう。
読みたくないと言えば嘘になるが、ここで読んだことがバレたら、と言う恐怖もある。
ーーどうしようかなぁ。ま、まあ、しばらくは誰も来ないよね?ちょ、ちょっとだけ、読んでみようか。
ペラリ。
ページをめくってみる。
そこに書かれていたのは。
《ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…………》
「怖っ!?」
ノガワは速攻で日記を閉じた。
まさかの。謝罪の連続である。
一歩間違えれば、のろいの何かに見えなくもないレベルだ。
ーーひぇ~。絶対見るべきじゃなかったよね?……で、でも、ここまで読むと、続きが気になるよね。
躁表、ノガワはまた日記へ視線を移動させる。
そして、じっとそれを見つめ、
「も、もうちょっとだけ………」
日記へと手を伸ばした。
ーーう、うわぁ~。どれだけ後悔してんの?これ。
めくっていっても、5ページほどは謝罪の言葉が連続して書かれ続けていた。
そして、謝罪が終わると、
《○○○歳。○○日。今日は簡易人、いや、人間たちとの初めての交易の日。とても心配だけど、少し楽しみでもある。世界の平和の先駆けとなって欲しい》
年齢が載っていたところは、自然とノガワは指で隠していた。
どうやら、この世界の日記は、自分のその時の年齢と誕生日から何日経過したかで書いていくモノのようだ。
ーーまあ、サンプル数が1つしかないから、絶対とは言えないけど。
さて、それはいいとして、本題は日記の内容。
ーー初めての交易。コレって多分、簡易人側の歴史書にもあった、魔族と簡易人側が友好関係を築いていたときの話だよね?これは、その時の初期かぁ~。
どうやら、かなり大事な時期の日記らしい。
ーー何処まで書かれてあるのかな?
ノガワは、この日記がいつまで書かれたモノなのかあと、最後のページをめくった。
そして、
「ひぃっ!?」
悲鳴を上げた。
なんとそこに書いてたのは、
《許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない殺してやる許さない許さない殺してやる許さない許さない殺してやる殺してやる許さない殺してやる許さない殺してやる殺してやる許さない殺してやる殺してやる
殺してやる許さない殺し…………》
またもや呪いのような文章。
また何かあったのだろう。
ーーえ、えぇ?最初はあんなに謝罪してて、最後は復讐心?なかなかに壮絶な生き方をしてるんだねぇ。
その原因を探るべく、その日、ノガワは日記をよく読込み、魔王に少し同情するようになった。
ーー全部が全部本当のことかは分からないけど、だとしても1つでも本当のことがあるんだったら、辛いにも程があるねぇ。気持ちは、よく理解できるよ。
ノガワにも、共感できるところが沢山あった。
「こんなの読んじゃったら、頑張らないわけにはいかなくなるよね。……よし!次も、頑張って簡易人側を滅ぼしますかぁ!」




