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89.本当の仲間ってモノだろ!

「ま、待ってくれ。アマガワが出て行くタケグチを見たっていうのは本当なのか?」


レンドウは、自分の知る情報が正確かどうか尋ねた。

ただ、この質問は本当に正確かどうかが知りたかったから行ったのではない。

実際は、タケグチが逃げ出したという事実を信じたくなくて、否定して欲しくていったのだ。


「あぁ~。本当ですよ。朝、音がしたから目が覚めて、見てみたらタケグチさんが丁度出て行くところだったんで。呼び止めたんですけど、振り返らずに、ごめんとだけ言って出て行っちゃいました」


「な、何で止めなかったんだよ!」


レンドウは怒鳴る。

仲間が追い詰められ、出て行こうとしたのだ。

彼は、それを止めないという選択肢が受け入れられなかった。


「何でと言われましても、私が何か言うまえに出て行っちゃいましたし、私は寝袋の中にいて身動きが取れませんでしたし。それに、今思っても間違いでは無いと思いますよ」


「はぁ!?何でだよ!仲間が困ってたら、助けてやるのが本当の仲間ってモノだろ!」


レンドウは声を荒げる。

その顔は怒りで染まっており、落ち着きを全く感じさせない。

普段ならここまで怒ることもないのだが、それだけ追い詰められていたということだろう。


「そうですね。確かに助けてあげるのが仲間です。でも、戦場に縛り付けることを、私は助けだとは思わないので。私も、戦場に出され続けている間、助けられてるとは全く思いませんが」


「なっ!?それは別の話だろ!僕たちには、この世界の人たちを救うって言う使命があるんだぞ!」


レンドウの目は血走っていた。

その様子を見て、数人は怯えた様子を見せ、数人は見下すような目線をしている。

その様子が、余計にレンドウを余計に腹立たせた。


「俺たちは1月前、いや。数週間前まで一般の高校生だったんだぞ。それが、その数週間の間に大きく変化して、戦場で活躍できるようになるって言うのは、最初から無理があったんだ」


「なっ!?ハセヤマ!?」


ここで、初めて賢者のハセヤマが口を開いた。

レンドウはその諦めを含んだような言葉に目を見開いたが、勇者パーティの面子は同意するような顔をしている。

その様子は、まるでレンドウがおかしいというように感じられた。


「そうですねぇ。どちらかと言えば、ここまで大勢を殺して壊れていない私たちがおかしいのかも知れません。普通なら、もっと早く精神が壊れて、まともな会話すら出来なくなっていたかも知れませんよ」


「訓練を受けた軍人でさえ壊れるんだぞ?それを、素人の高校生が乗り越えられると考える方が間違ってるだろ」


「な、何だよ!それじゃあ、2人はこの世界の人たちを見捨てるって言うのか!?」


レンドウには、ハセヤマとアマガワの言葉が非常に無責任に感じられた。

神に使命を託され、今までずっとそれをこなしてきたというのに、2人はそれがどうでも良いことのようにいうのだ。

思わず、身体が動いてしまいそうになるが、ギリギリの所で耐える。


「どうなってもいいとはいわない。だが、俺たちが守らないといけないわけでもな」

パシィンッ!


「おっ、おい!?レンドウ!?」


もう耐えきれなかった。

レンドウは、ハセヤマの顔面に、右ストレートを繰り出してしまった。

慌ててその間に、大柄なカザマが入ってくる。


「どうした?気に入らないことを言えば殴るのが、真の仲間とか言うモノなのか?」


「ふ、ふざけるな!間違った道に進もうとしてる仲間を、正しい道に戻そうとしているだけだ」


馬鹿にしたようなハセヤマの言葉に、レンドウは大声で反論する。

ハセヤマは、聖女であるアマガワに回復を受けていた。

ステータスの高い勇者であるレンドウに殴られたため、なかなかのダメージを負ったようだ。


「だからって、回復魔法が必要なほどの力で殴るのは駄目ですよ。あと、私もハセヤマ君の意見には納得できますよ。この世界の人たちだって、私たちに全てを丸投げするほど無責任ではないでしょう?戦う必要が無いとは言いませんが、少しくらい休憩をしても良いと思います。心が壊れちゃう前に」


「アマガワ…………」


レンドウは言葉に詰まる。

だが、それよりも大事なのは、アマガワの言葉によって少し落ち着きを取り戻したことだ。

心が落ち着くと共に、少しずつ自分の行動への後悔が湧き上がってくる。


「……ハセヤマ。殴ってすまなかった」


「いや。気にしてないわけではないが、お前は気にするな。それに、コレのおかげでお前もまともな精神状態じゃないのは分かったしな。お前も休む必要があるだろう」


「えっい!?お、俺も休むのか?それだと、前線が………」


自分たちがいるおかげでどうにか耐えられてきた。

そう言いたかったが、言えない。

思い返してみると、最近は沢山のミスをして、兵士たちにフォローして貰ってばかりだった。


「休んだ方が、良いのかも知れないな」


「ああ。そうだな。そうと決まれば、部隊長たちにこの事を伝えて、早く休息をとるぞ!」


テントにいたメンバーは全員立ち上がり、前線で指揮を執る者に決定を伝えに行く。

その日より、前線から勇者たちが消えた。

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