表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/160

88.殺さなければならなかったかも知れない

「エルフはちゃんと簡易人側と争ってくれてるみたいだけど、今どうなってるのぉ?」


「今は、取り敢えず簡易人側の領地から脱出するため、私たちと協力して脱出ルートを開けようとしている」


「ほぇ~。その辺の協力は出来るんだ」


ノガワは、ルティアーヤから現在の状況を聞いている。

状況が、ノガワの予定と変わっていた場合、すぐに修正しなければならない。

 ーーこういう情報って、コロコロ変わるからねぇ。こまめに聞いておかないと。


「じゃあ、ハーピーの方はどうなってるの?」


「お前の言ったとおり医療物資の運搬に入れたら、少しずつ魔王軍内部からも受け入れられてきている。しかも、半年ほど戦場に出なくて良くなった」


「おぉっ!じゃあ、ついにやったんだね!?」


ハーピーが半年戦場に出なくて良くなる条件。

それは勿論、


「ああ。勇者が、戦場に出てこなくなった」


「うぅ~ん。それはよかったよ、流石に、同郷の子たちを殺しちゃうのは忍びなかったからねぇ」


これ以上戦場で活躍するようであれば、殺さなければならなかったかも知れない。

その可能性がなくなっただけでも、大きな価値がある。

勿論、勇者が出なくなったことは、戦場にも影響を与えるだろう。


では、どうして勇者が戦場へ出てこなくなったのか。

その理由は、ハーピーたちが迫ってくるという悪夢のような日々だけでなく、もう1つ原因があった。

それを知るには、少し時間を遡る必要がある。


「……うっ。もう、朝、か」


はきのない声でそう言いながら、勇者であるレンドウは立ち上がった。

ただ、その動きもどこか重い。

相変わらずハーピーの特攻に悩まされ、寝不足なのだ。


「た、大変だ!」


そんなレンドウの下に、仲間の1人がやってくる。

大柄の男子生徒。

彼は、重戦士という職業に就く、カザマだ。


「ど、どうした?」


「タ、タケグチがいなくなったんだ!」


「な、何だと!?」


レンドウは目を見開き、驚愕の声を出す。

タケグチというのは同じく勇者パーティーのメンバーの1人で、テイマーの職業に就いている女子生徒。

そんな勇者パーティーのメンバーがいなくなったということは、


「誘拐か!?」


「……いや。そうでもないみたいなんだ」


カザマは目線を落とした。

その様子と発言に、レンドウは違和感を憶える。


「なら、なんでタケグチはいなくなったんだ?」


「もう、戦うことが嫌になったらしい。こんな手紙も、置いてあった」


そんな言葉と共に、カザマは1枚の紙をレンドウに投げ渡した。

レンドウはそれを受け取り、書いてある文字に目を通す。

そこに書いてあるのは、


「《もう耐えられない。毎日人が沢山死んで、私たちを殺そうとする人が沢山いて。私たちがこの世界を救う必要なんて無いのに、何で私たちが戦わなきゃいけないのか分からない。ごめんなさい》…………な、何だコレ?」


レンドウは紙に書いてあったことを音読し、困惑する。

その様子を見て、カザマは頭を押さえつつ、


「それが、タケグチの机の上に置いてあったんだとさ」


「な、何だよ。じゃあ、タケグチは、戦いに絶えられなくなって、逃げたって言うのか!?」


「……そうだよ」


カザマは暗い表情で言う。

その様子にレンドウは激しい怒りを感じたが、仲間に暴力を振るうわけにも行かないので、ぐっとこらえる。

それから、


「もしかしたら、魔族が書いた偽物かも知れないじゃないか!極悪非道な魔族たちならやりそうなことだろ!」


「いや、筆跡もタケグチのモノで間違いない。そして、極めつけに、同じテントで寝てたアマガワが、タケグチがテントを抜けていくところを見たそうだ。その後、コレを見つけたんだとさ」


「う、嘘だろ」


レンドウは絶望するような表情を見せる。

今まで一緒に高め合ってきた仲間が消えてしまったのだ。

そんなことは信じられないし、信じたくもない。


「まあいい。今から皆で話し合いをするから、アマガワさんのテントに来いよ!」


「え!あっ!ちょ!?」


レンドウの台詞は聞かず、カザマは行ってしまった。

その背中が消えた後も、宙を呆然としばらく見続ける。

そして、正気を取り戻すと、


「……行くか」


覇気の無い声で言った。

ふらふらとした足取りで歩きつつ、テントへ向かう。

その心の中では、困惑や焦り、怒りや悲しみといった、様々な感情が渦巻いていた。


「……入るぞ」


「おお!レンドウ来たか!座れ」


カザマが近くの椅子を指さす。

すでに、テントの中には、レンドウと例のタケグチ以外の全ての勇者パーティーのメンバーが集まっていた。

そのうちの半数が不安げな顔をしており、もう半分はいつも通りな表情をしている。


「それじゃあ、話し合いましょうかぁ。私たちの今後について」


レンドウが椅子に座ると、聖女のアマガワが司会進行を始めた。

普段はレンドウが率先して話し合いの中心となるのだが、アマガワは今のレンドウが使い物にならないと判断したようだ。

アマガワが議題を伝えると、


「ま、待ってくれ。アマガワが出て行くタケグチを見たっていうのは本当なのか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ