86.うらやましいねぇ~。……でも、そこが狙い目でもあるんだけど
パラパラ………パタンッ!
「……ふぅ~」
ノガワは本を閉じ、大きく息を吐いた。
やっとハイエルフの歴史についての本を読み終えることが出来たのだ。
今回の本は、人類の歴史の本の倍以上の長さがあったので省略。
重要なところだけ言うとすれば、
ーーハイエルフは生まれつき3つ以上のスキルを持っているって事かな。
そこが、神に愛されている証拠だ。
ハイエルフは生まれたときから3つ以上のスキルを持っており、他の種族とはスタートの時点で有利なのだ。
7割くらいは3つらしいが、中には4つや5つ、1000人に1人くらいの確率で6つ持っているモノもいるそうだ。
現在確認されている最多は、8つで、そのものが現在の種族の長だそうだ。
ーー8つかぁ。ソレだけあれば、幾つかは使えるスキルもあるよねぇ。うらやまし~。
ノガワの弱点看破やスキル的中のような使う機会の多いスキルがあれば、人生は大きく変わるだろう。
ノガワはハイエルフに少しだけ嫉妬しつつ、他の本も適当に選んで去った。
ーーふふっ。ハイエルフ。うらやましいねぇ~。……でも、そこが狙い目でもあるんだけどね。
そして、本を読んで数時間。
外が暗くなってきたので、ノガワは宿へと戻った。
宿では、大勢の客が酒を飲んではっちゃけている。
「凄い盛り上がりようだねぇ」
「ん~。まあ、それも仕方ないな。町の奴らからの風当たりが強いから、酒でも飲まねぇとやってられないんだろ」
「ふ~ん」
返答を受けて、ノガワは適当な返事をしつつ、もう1度騒ぐモノたちを見る。
確かに、無理矢理明るくしようとしているモノも数名いるように見える。
ーーあの人、笑顔が硬いねぇ。あの人は、視線が落ちがち。そこの人は、身体の動きが硬いね。だいたい3割くらいが無理矢理明るくしてるかな?
「噂だと、どっかの教会も燃やされちゃったって話だからねぇ。町の人たちの気持ちも分かるんだけど」
「まあなぁ。火事もあれだけの規模だったし、気持ちは理解できるけどなぁ~」
そうは言いつつ、話し相手の客は納得していないような表情を見せる。
理解はしているが、心の底から納得できているというわけでもないのだろう。
ーーほとんどの旅人とか商人さんたちはこういう気持ちなんだろぉなぁ。
「……でも、何で反乱した奴らは教会に火を付けたのかは謎だよな」
「そうだよねぇ。とは言っても、噂だから、本当に火を付けたのかも分からないけどね?」
「いや。教会が燃やされてたのは間違いない。実際に消火されて、真っ黒になった教会を昨日見たからな」
実際に反乱したモノたちは、教会に火を付けたようだ。
ーーこの人が嘘をついてるって可能性もなくは無いけど、わざわざそんなことをする理由もないしね。信じても良いでしょ。
ノガワは客の言葉を信じる。
「……そうだ。じゃあ、その街教えてくれる?ほとぼりが冷めるまで近づかないようにしておきたいから」
「ああ。いいぞ。俺が行ったのはここの町で、他にも噂だとこことかあそことかも………」
客から説明を受けるノガワ。
ノガワはそこに近づかないよう、シッカリと頭にメモをしておいた。
ーー良い流れだねぇ。旅人とか商人への風当たりが強くなれば、物流が滞りやすくなる。そうなれば、食料も行き渡らなくなったりして、餓死者も増えちゃうよねぇ?
頭の中で簡易人が衰退していく未来を想像し、薄く笑みを浮かべるノガワ。
ただ、そこに罪悪感がないわけではない。
ーー本当はこんなことしたくはないんだけどねぇ。でも、僕のことを召喚しちゃたのが悪いんだよ?シッカリ反省してね。
「坊主?大丈夫か?」
「ん?ああ。大丈夫。ちょっと今後の予定を考えてただけ」
「ああ。そうだよなぁ~。次何処に行けば良いのか、迷うよなぁ」
ノガワの言い訳に、客は納得してくれた。
それから、しばらく安全そうなルートを話し合う。
とは言っても、ノガワの行く場所はすでに決まっているので、そのルートを通る予定はないのだが。
「おいおい。何話してんだお前らぁ」
「そんなところいないで、もっとこっち来て飲めよ!」
そんな話をしていると、いつの間にか数人の酔っ払いが集まってきてノガワたちを引っ張り出そうとしてくる。
ノガワと客は苦笑しつつ、呼ばれた方に歩いて行った。
そして、適当に話をしたりして楽しみつつ、食事をしていく。
1番良かったところは、酔っぱらいたちがどんどん料理を頼んでノガワたちに押しつけてくるので、食費が掛からないところだろうか。
………。
数時間後。
「「「「………ぐぉぉぉ!!!!!!」」」
気合いの困った声などではない。
ただのいびきだ。
酔っぱらいたちは大量の酒を浴びるようにのみ、全員寝てしまった。
「さて、僕もそろそろ寝ようかなぁ~」
「ああ。なら、俺も部屋に行くかぁ」
「ん~。だったら私も行こうかなぁ」
ノガワが部屋へ戻ろうとすると、その後ろに数人の客がついてくる。
その客たちとも話をしつつ部屋へ行く。
そして、次の日に備えてベットへと入った。




