85.存在しない罪を押しつけてしまおう
神に選ばれた人間とはどういう事か。
それを理解するには少し、この世界の過去について知る必要がある。
ーー歴史の本あるかな?きっと詳しく書いてあると思うんだけど。
ノガワは歴史書のコーナーへ向かった。
大まかな歴史については、こちらの世界に来た初日に一応役人のようなモノから説明を受けているのだが、
ーー絶対、僕たちを洗脳するために作った都合の良い歴史だよね。まあ、ここの本に載ってる歴史もまた都合が良いんだろうけど、聞いた話よりは多少マシでしょ。
「これかな」
歴史書のコーナーにやってきたノガワは、適当に数冊の本を選んで抜き取る。
それから、ざっと目を通してみた。
ーーそんなに専門用語とかもないし、多分いけるね。これでいいかな。
ノガワはその本で問題なく理解できることを把握すると、本を持って机へと向かう。
本を開いて、最初から読み進めていった。
《長年、人類と魔族は、様々な種族をお互いに味方として戦いを繰り広げてきた。だが、数百年前、今までで最強と言われた魔王と勇者が同時に消滅し、関係は一変する》
ーーおお。なんか、凄いそれっぽい。
何がそれっぽいのかは言葉では表せないが、ノガワは少し感動を覚えた。
そして、期待を抱きながら本を読み進める。
《魔王軍の幹部と人類の姫が話し合い、1時的に休戦。さらにはその数年後に、交流まで始めたのだ。お互いの文化がおり混ざり、世界は急速に発展を続けた。世界は安全と発展を同時に迎え、表向きは何の問題も無く100年ほどの時が過ぎていった》
ーー100年かぁ。このときって、もう四天王の誰かか、魔王は生きてたのかなぁ?
ノガワはそんな疑問を抱いた。
だが、それを彼女たちに直接質問するわけにはいかない。
女性に年を尋ねるのは、御法度なのだ。
《だが、当然悪しき魔族たちが人類との共存を望んでいるわけもなく。裏では大量の人間が魔族に誘拐され、殺され、人類は衰退の道を歩みかけていた》
ーーおお。さすがは簡易人側の本。もう魔族が悪いことをしないわけがないって決めつけちゃってるよ。
ノガワはこり固まった考えに苦笑いすると同時に、生まれたときから洗脳される事への恐怖を感じた。
子供の頃から魔王軍側を悪しき者として教え込まれている彼らは、その考えを疑うことなど無いのだ。
《そんな人類をお救いになって下さったのが、女神様である。女神様は我らに真実を告げられ、我らへ害をなそうとしている種族をお伝え下さった》
その伝えられた種族というのは、つい数日前までの魔王軍の種族なのだろう。
ーーじゃあ、ハーピーって言うのはどういう扱いになるのかな?もう勇者が攻撃を先に仕掛けたって言うのは伝わってるだろうから、悪しき者とするのは厳しいと思うけど。
ノガワは寝返る種族の立場を考えてみる。
ーー考えられるのは、女神が伝えた種族に入ってなかったけど、最近害をなそうとしてきていた。って言うことを女神が勇者に伝えて、勇者は討伐へ向かった、とか?
存在しない罪を押しつけてしまおうという考えだ。
取り敢えず国民感情を敵への恨みに向けなければならないので、そういうことはやってもおかしくはない。
《しかも、女神様がして下さったことはそれだけではなかった。なんと、スキルと言う強力な力を我らに授けて下さったのだ》
ーーん?
ノガワはそこまで読んで、疑問を抱いた。
スキルは、魔王軍のモノたちも使えたはずで、簡易人が授けられた力というわけでも無い気がするのである。
そんなノガワの疑問は、次の行に答えが書いてあった。
《だが、悪しき魔王とその配下たちは、極悪非道な手を使い、スキルを盗んでしまったのだ》
極悪非道な手段と書かれているが、具体的なことは一切書かれていない。
ーーどんな極悪非道なことをしたらスキルが得られるんだろうねぇ?僕が前にいた世界じゃ、どんなに悪いことをしてもスキルなんて手に入らなかったけどなぁ。
色々と心の中でツッコミを入れつつも、我慢しながら読み進める。
《ただ、悪しきモノたちは、全てのスキルの力を手に入れることは出来なかった。魔王軍の愚かなモノたちは、生まれつきのスキルを持たないのだ。全てのスキルを、取得条件を満たすことで手に入れることとなる》
他の図書館で本を読んだときも、似たようなことが書かれていた。
たしか、この世界の人間は、生まれつきスキルを持っていることがあるのだという。
ーーそれが魔王軍の人たちにはない、と。まあ、少しはアドバンテージになるのかな?
パタンッ!
ノガワは本を閉じた。
とりあえず、前提として知っておくべき知識は揃った、と判断したのだ。
本題はここからだ。
え?本題は何かって?
それはもちろん、
ーーハイエルフについて、今度は探さないとね。
ノガワはまた本を探し、ハイエルフに関する本を幾つか手に取っていく。
ーー神に愛された種族とか書かれてたから、その辺に関してもっと調べておきたいかな?
そう考えながら手に取っていくと、十分な量の、どちらかと言えば多すぎるくらいの本を見つけることが出来た。
ーーさて、読むぞぉ!




