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81.誰だと思ってんだって言われても、知らないんだけど?

ノガワが目を向けると、商人の一人がポンッ!と手を打つ。

そして、


「あぁ。それ、5年間くらい全く売れなかったって言ってたヤツじゃないか。売れないからって押しつけたな?」


「ち、違うわよ。コレが売れなかったのは、レベルが高すぎただけ。価値は十分にあるのよ!」


言われた言葉に商人の女性は反論する。

だが、他の商人は誰1人として信じていなかった。

さらにそれだけでなく、悪乗りするような形で、


「じゃあ、俺も礼として、この15年間全く売れなかった『死が遠ざかる。超最上級回復魔法』をやるよ」

「じゃあ、儂はこの35年間売れなかった『なぜか取れた人がいる。獲得超困難スキル全集』をやるとしよう」


「ふふっ。何か、売れ残りを押しつけるみたいな流れになってるね。……でも、ありがとう!良い旅のお供になりそうだよ!」


良い旅のお供どころではない。

こんな重要な書物、魔王軍に持って帰れば非常に良く褒めて貰えるだろう。

………おもに、ベティーとかシャキーナ辺りに。


「売れ残りを押しつけて悪い気もするが、確かに道中の暇つぶしには良いかも知れんな。本が3冊もあれば、1月は持つじゃろ」


「そうだねぇ。馬車の中とかで読むのには最適だよ。でも、もしかしたら面白すぎて1週間で読み終わっちゃうかも知れないよ。なんと言ったって、良い商品を沢山仕入れてる商人さんたちがくれた本なんだから、ね」


ノガワはそう言って、イタズラっぽく笑った。

商人たちもそれを見て、困ったような笑みを浮かべる。

 ーー良い商品を沢山仕入れてるって言われちゃうと、ちょっと困っちゃうよね。売れ残りを渡したんだから、良い商品じゃないのは明白なのに、それでも良い商品じゃないって言ったら、商人としての目を疑われることになっちゃうんだから。


「お前ら!飲んでるかぁ!!」

「おいおい!話してねぇで、もっと食って飲もうぜぇぇ!!」


商人たちと話していると、すでに酔いだして顔が赤くなった村人たちに絡まれた。

商人たちは酒が入ったジョッキを渡され、ノガワには肉のさしてある串が何本も手渡される。

 ーー多すぎない?僕、これだけでお腹いっぱいになりそうなんだけど。


「オラオラァ!もっと飲みなぁ!!」

「向こうで飲み比べもやってんだ!もうかった人たちには、是非とも出て貰わないとなぁ!」


「え?あっ!ちょ!?」

「ぼ、坊主。またなぁ!」


商人たちは村人に連れて行かれ、ノガワは1人ぼっちに。

だが、今回の宴は人が集まっていて、1人の時間はそう長くは出来ない。

すぐに、知り合いがやってきて、


「あっ。坊主。生きてたか」


「ん。衛兵のお兄さんじゃん。僕は当然生きてるけど。……どうだった?」


ノガワは告白の結果を尋ねる。

本当は知っているのだが、この衛兵に盗み聞きをしていたことはバレていないはずなので、ここは質問するのが自然な流れだ。

衛兵はその質問で、上機嫌に笑みを浮かべ、


「勿論成功だよ。いやぁ~。俺のイケメンっぷりにも困っちゃうよなぁ~」


「うんうん。そうだねぇ~。でも、調子に乗って彼女さん怒らせちゃダメだよ。ちゃんと仲良くしてね?」


「ああ。当然だな!上手くやるよ!」


そんな話をしていると、例の彼女も話に入ってくる。

そして、ノガワが衛兵の背中を押した話を聞かされ、彼女がとてもノガワへ感謝したり、そのお礼にとこれはまたノガワにはレベルが高すぎる『気になるあの人も1撃。超高難度格闘スキル』なんて本を渡されたり。

さらには、その父親まで出てきたり。


そして、気付くと、ノガワの持っている本は、10冊程まで増えた。

しかも、全てが超高難度の魔法やスキルの本ばかり。

話のネタになるかと思って買ったものの、結局使わなかったという本を、村人たちがノガワに押しつけてきたのだ。


 ーーこ、ここまで来ると重い。ルティアーヤにバフかけてて貰って良かったぁ。魔王城に戻ったら、ちゃんとお礼を言っとかないと。

ノガワは、バフのありがたさが身にしみて分かった。

それと共に、少し魔王城の方が気になった。


「…………よう。重そうだな?」


ひょいと幾つかノガワの本を持っていた本をとられる。

本が動いた方へ視線を向けると、そこには体つきのシッカリとした男性が。

 ーーん。そういえば、この宴会が始まってから話してなかったね。


「あぁ。ありがとぉ~。お兄さんは、ちゃんと飲んだり出来てるの?」


「まだ飲めてねぇんだよなぁ。一応棟梁だから、後処理とかちゃんと見てなきゃいけねぇんだよ。ま、これからは、精一杯遊ぶけどなぁ!」


そう言って、本を持っていない方の手に持っていたジョッキを口に付け、一気に煽った。

 ーーおお。一気飲みだぁ。

ノガワは、最近よく見るようになってきた一気飲みに目を輝かせた。


「おぉ。じゃあ、僕も本を宿に置いたらまた戻ってくるよ。それまで、酔い潰れちゃダメだからね!」


「あったりめぇよ!俺を誰だと思ってんだ?酔い潰れるなんてあり得ねぇっての!」


それを聞いて、ノガワは思った。

 ーー誰だと思ってんだって言われても、大工の棟梁って事ぐらいしか知らないんだけど?名前とか聞いてないし。

などという、冷めた感想を抱いた。

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