80.初級の魔法すら使えないのに、最初から最上級魔法
シュゥゥゥゥ~~~!!!!!
しばらく頭領と話をしていると、煙が晴れてきた。
どうやら、炎が収まってきたようだ。
「おお。乗り切った、かな?」
「そうだな。……よし。今日は宴だな!生き残った記念に、大量に酒を飲まねぇと!」
棟梁は立ち上がって、嬉しそうにいった。
ノガワも、乗り切れたことは嬉しい。
ーーふぃ~。良かったぁ。これで、五体満足で魔王軍に戻れるよ。
「よっっしゃああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「生き残ったぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
村人たちも喜びの声を叫んでいる。
抱き合って喜んだり、数人は涙を流しているモノまでいる。
ーーこの光景を見ると、原因を作った僕の心が痛むねぇ。……まあ、この活動をやめるつもりはないけど。
「よっしゃ!今夜は宴だ!準備しろ!!」
「「「「おう!!!」」」」
宴が宣言されると、村人たちは一斉に動き出した。
炎がやってきたときと同じように迅速な行動だが、その時とは違い、彼らの顔には笑みが浮かんでいる。
動き出したのは、彼らだけではなく、商人たちもだった。
あらかじめ買っていた酒や食料だなど、色々なモノを売っている。
彼らも、非常に爽やかな笑みを浮かべていた。
ーー良い笑顔だねぇ。相当儲かってるんだろうなぁ。
村人たちは安く自分たちが売ったモノを、高値で買い取るわけだ。
一体どんな気持ちなのだろうか。
ーーま、まあ、それでも皆笑顔だから、そこまで気にしてないのかな?なら、いいよね。
その様子を見ながら、ノガワは少し歩いた。
そして、やってきたのは、水の壁が出来ていた場所。
そこには、湿った土の上に焦げた生物の死体などが大量にあった。
「………これは、矢の燃えかすかな?」
幾つか、使われたのだろう細い木の棒の焼け残りを見つけた。
そこで、もう1度疑問に思うことが。
ーー使ってたら、どうなってるんだろう。
疑問に思ったのにも、勿論理由がある。
それは、矢羽根がないことだけでなく、鏃の部分に使われるはずの、金属がないからだ。
ーーおかしいなぁ。金属なら、燃えずに残ると思うんだけど。木だって燃えかすが残るんだから、金属なら溶けることはないだろうしなぁ。
「おぉ?坊主。どうしたんだこんなところで?」
「ん?ああ。ちゃんと火が残ってないか見てるだけ。たまにこういうとこの中でくすぶってることがあるからね」
焼け残りを見ていると、村人に話しかけられた。
ノガワは慌てて言い訳をする。
ーー即興で出した嘘にしては、上手くいったかな?実際にくすぶってることは多いし。
「おお。なるほどなぁ。ありがとよ。坊主。でも、そういうことは後で俺たちがやっておくから、坊主は宴を楽しみな。今日は、豪華だぞぉ」
「ふふっ。そうだね。宴が始まったらそうさせて貰うよ」
ノガワは村人の言葉に頷いた。
それから、もう1度焼け残っているモノを見ていく。
ーーまず人工物がほとんど見つからないね。しかも、どれも矢の材料ではなさそうだし。
「……おぉい!準備できたぞぉぉぉ!!!!」
悩んでいると、いつの間にか宴の準備が出来てしまった。
これ以上悩んでも仕方が無いと判断し、ノガワは宴の場所へと向かう。
すると、突然横からズイッ!と何かを差し出され、
「ほら!坊主、さっき焼け死んだヤツのから綺麗なヤツを使って作った串焼きだ。食いな」
「あ、うん。ありがとう」
ノガワは串を受け取る。
それから、顔を近づけようとして、
ーーん?よく考えてみると、衛生的に大丈夫なのかなって気がしてきた。………死んでた生物を適当に選んだ時点で怪しいけど、本当に大丈夫なのかなぁ?
「ま、まあ、食べてみなけりゃ分からないよね。……あむ」
覚悟を決め、口に入れた。
ーーん。意外と美味しい。
ノガワが予想していたようなゲテモノな味ではなかった。
シッカリと旨みがあって、臭みもなく美味しい。
「よう。坊主。楽しめてるか?」
串焼きの肉を食べていると、誰かが話しかけてくる。
ーーん。この声は、
ノガワが振り返ると、そこにいたのは、
「うん。今来たばっかりだけどね。お兄さんたちはどう?色々売れて楽しめてたのは見たけど」
「ははっ!見られてたか」
「そうなのよぉ。沢山売れたわぁ」
「ほほほっ。荒稼ぎと行っても良いくらいには稼げてしまったのぅ。それでこんな料理を無料で貰えるなんて、儂らの運も捨てたもんじゃないわい」
商人たち。
顔には満足げな笑みを浮かべている。
ーー相当儲かったのは丸わかりだったけど、自慢したいくらいなんだね。
「あっ。そうだわ。忘れてた。……はい。これ。安売りしてたことを教えてくれたお礼よ」
「ん?ああ。ありがとう」
1冊の本を商人の女性が渡してきた。
ノガワは礼を言って、その本を受け取る。
題名は、
「『学ぼう最強の魔法。魔法超最上級編』……え?う、嬉しいけど。これ、僕におすすめの本なの?」
「………」
露骨に目線をそらされた。
ーー僕、初級の魔法すら使えないのに、最初から最上級魔法!?
ノガワはよく分からず、他の商人にも目を向けてみる。




