79.勧誘されてしまった
「それで?どうかしたの?」
ノガワは来た理由を尋ねる。
今は村人たちが頑張っているところなので、商人の出る幕はないはずだ。
ーーこの人たちが来ると、商売のチャンスを狙ってることくらいしか考えられないけど、……どういうチャンスがあるのかな?
「俺たちも、魔力を注入しようと思ってな」
「そうなのよ。私たちも、ここが潰れちゃったら商売できないからねぇ。と言うか、その前に死んじゃうだろうし」
「そうなんじゃよ。そのついでに、ちとばかし使われた武器を見て、売れそうな物を見繕うって言う考えもあるけどな。ほほほっ!」
最後の商人の言葉が、全員の本音な気がする。
ーーまあ、死にたくないって気持ちもありはするだろうけどね。でも、そっちが本音だと感じさせない辺りが凄いよ。
そう考えていると、商人たちは魔法陣に向かっていった。
手をかざしながら、辺りをくまなく見回し、落ちている武器などを観察している。
ーー僕もちょっと観察してみようか。
自分ならその落ちている武器を見て何を考えるだろうかと、何気なく落ちている武器を眺める。
鉄で作られているだろう剣が沢山落ちていて、革の鎧らしきモノもある。
おそらく、生物が壁を突破したときの為に用意していたのだろう。
ーー数は結構あるから、村人の戦える人全員着られるんじゃないかな?
剣も7割くらいは確実に持てるだろう。
当然武器は剣以外も使う人がいるはずだから、十分な数のはずだ。
そんな風に観察していると、数人の村人が魔力を出し切ったようで戻ってきた。
そして、そのうちの1人が持っていた自分の弓を見て、
「……あぁ~。俺の弓、もうガタが来てるなぁ。今日荒く使いすぎちまった」
「いやいや。仕方ないって。おかげで命が助かったと思えば、もうけもんだろ?」
「そうそう。俺のなんて弦が切れちまったし、そんなもんだって」
ノガワがそちらへ目を向けると、確かに、弓が壊れかけていた。
弱点看破を使って弓を見ると、色々な箇所が赤くなっている。
ーー弓は皆使ったから、商人さんたちも売れそうだよね。……あっ。そうだ。弓があるなら、それと一緒に使う矢はどうなんだろ?
ノガワは、村人たちが背中に付けている矢筒を見てみる。
矢筒の中に矢はほとんど残っておらず、かなりの量を使っただろうと予想された。
ーーこっちも沢山売れるかな?消耗品だし、確かに沢山ある必要があるよね。
そう思って納得しかけた。
が、少し気になることができる。
ーーあれ?矢筒に入ってる矢、矢羽根がないね。どうなってるんだろ?
本来、まっすぐ矢を飛ばすために、矢には羽がついているはずなのだ。
だが、それがついてない。
ーーどうしてだろ?物資の運搬してるときは、付いてるヤツを運んだのになぁ。そう言う技術が無いわけでは無いと思うんだけど。
「坊主ありがとな。いろいろと」
矢のことで悩んでいると、棟梁が話しかけてきた。
もう指示を出さなければいけないほど、緊急的な対応が必要なことはない。
ノガワは矢のことは一旦置いておき、普通に雑談をすることに。
「いいんだよぉ。それより、魔法の方はどう?火が遠ざかるまで持ちそう?」
「さてなぁ。ちょっと分からないんだよ。あれだけでかい火が来るのは経験したことがなかったからな。どれだけ時間を稼げば消えるんだか、予想できねぇんだよ」
「ふぅ~ん。まあ、確かに僕もここまでの火事は見たこと無いからねぇ。確かに予想は出来ないなぁ」
ノガワは頷きつつ、水の壁を見る。
すでに向こう側には大量の水蒸気が出ていて、火とせめぎ合っていることが分かる。
ーーただ、後どれくらい火が来るのかも分からないけどねぇ。高台に上っても、水の壁の向こう側は見えないだろうなぁ。
「……坊主は、これからどうするんだ?」
「ん?どうするって言われてもなぁ。……まあ、今まで通り、各地をまわっていくしかないよね。安全な町があるなら、すぐにでもそこに行きたいけど」
「ガハハハッ!安全な町があれば、俺も行きてぇよ!でも、何処に反乱分子がいるか分かんないし、それを探すのはむずっかしいぞぉ」
例え、その街に反乱分子がいなかったとしても、近くの町に反乱分子がいれば、近くの村はあっという間に燃えてしまうだろう。
そのため、安全な町を探すというのは非常に難しい。
ーー早く帰って、安全な魔王城でぐーたらしたいなぁ。
「………それでよぉ。どうだ?お前さえ良ければ、この村に住まないか?一緒に村のために頑張ってくれたから、きっとこの村の奴らも快く迎えてくれると思うんだが」
「あぁ。そういうことねぇ。………でも、ごめん。行きたいところもあるから、それは出来ないかな。気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとね」
「いや。お前にやりたいことがあるんなら、それでいいんだよ。俺たちは、いつでもお前のこと待ってるぜ」
「おお。ありがと~」
村に住まないかと勧誘されてしまった。
流石に魔王軍を抜けてこの村に住む気は無いので、断る。
ーーそれに、残念ながらこの村にも消えて貰わないといけないからねぇ。良い村だけど、僕たちが勝つためだから許してね。




