76.恋した相手も逃さない
「なんかよく分からないガキがいるかと思ったが、あいつらを引き合わせたなら何も言えねぇな。どちらかと言えば、礼を言いたいくらいだ。ありがとよ」
「お、おぅ。聞いてた話から判断すると、凄い怒られそうな感じだったけど、お礼言われるんだ。……ま、まあ、僕も身動き取れないところ助けて貰ったからね。お互い良かったって事で、ありがとぉ」
男からお礼を言われ困惑しつつも、ノガワはなんとか言葉を返す。
ーー娘大好きだから衛兵さんの背中を押した僕は、殴りたいほど憎いのかと思ったけど、そうでもないんだねぇ。やっぱり1人から聞いた話だけで判断するのは良くないね。
ノガワは少し自分の持つ情報を修正する必要があるように感じた。
「あいつらは元々お互い惹かれ合ってたんだけど、全くと言って良いほど双方勇気を出さなくてな。その間に変な虫が娘につくんじゃないかってハラハラしてたんだ。だからこそあいつに根性が付くよう厳しくしたんだが、……結局背中を押したのはお前なのか」
そう言ってノガワを見る。
ーーあっ。なんかしんみりした空気になったよ。ちょっと居づらいんだけど。
ノガワは居心地の悪さを感じた。
「ん?じゃ、じゃあ、これからは衛兵のお兄さんに優しくするのかな?」
「ん~。どうだろうな。厳しく接するのになれちまったから、変えられるかどうか分からん」
「家庭が大変だろうから、できれば優しくしてあげて。衛兵のお兄さん、お兄さんのこと凄い怖がってたから。お兄さんに何かされるんじゃないかって、告白するのためらってたみたいだし。」
「そ、そうなのか?厳しくしたのが裏目に出ちまってたのかぁ」
男は失敗したと言いたげに頭を押さえる。
それからノガワと男は少し話をして別れた。
ーー炎がかなり近づいてきてる気もするね。コレ本当に大丈夫なのかな?
ノガワはかなり不安になった。
少し炎の大きさは小さくなってきている気もするが、相変わらず広範囲が燃えている。
日も落ちてきて空がオレンジになってくるはずなのに、とても明るい。
「……あっ。そうだ。商人さんに安売りを伝えるの忘れてた」
ノガワは頼まれていたことを思い出した。
商人や旅人たちに、土産物屋が安売りしていることを伝えなければならないのだ。
ーー誰かいるかなぁ?……あっ。さっきの商人さんたちだ。
ノガワは炎を見たときに話した商人たちが、また集まっているのを発見した。
「やっほぉ~」
「おっ。坊主。生きてたか」
「元気そうで良かったわ」
気付いた商人たちは、快く迎えてくれる。
顔には笑顔が浮かんでいるので、相当安く商品を買えたのだろう。
ーーそしてその安く仕入れたモノを、炎の危機が過ぎ去ったら即座に高値で売りさばくと。いやぁ~。あくどいねぇ
安い土産を買って、更に無料のモノまで引き出したノガワがそんなことを思う。
「さっきさぁ。お土産物屋さんが凄い安く売ってくれたよぉ」
「「「何!?それはいかねば!どこ!?」」」
「え、えぇっと」
ノガワは苦笑いしながらも場所を伝える、
声を合わせて興味を示したのはなかなか驚くモノがあった。
ーー凄いねぇ。安いって言葉に本能的に反応したのかな?
「よし!行ってくる!」
「ありがとね!お礼に後で何か上げるわ!」
「他にも何かあったら頼むぞぉ!」
商人たちは場所を聞くと、礼を言って走って行った。
善は急げといった感じだ。
ーー商機は逃さない。商人魂って凄いねぇ。こういう人たちなら、恋した相手も逃さないのかな?
ざわざわ。
商人たちに感心していると、なんだか辺りが騒がしくなってきた。
ーーん?なんだろう?
ノガワは何が起きてるか確かめようと、人が集まるところに歩いて行く。
「急げ!結界を張るんだ!」
「水だけじゃおそらく足りない!熱を送り返せるように風の魔法も準備しておけ!」
そんなことを言いながら、大量の村人たちが木材で何か大きなモノをくみ上げていた。
よく見るとその木材には魔法陣のようなモノが描かれている。
ーー明らかに魔法を使おうとしてるのは分かるけど、具体的にどういうモノなのか分からないなぁ。
ノガワは作業の様子を見ながら首をかしげた。
が、観察は続ける。
もしかしたら、何かのスキルが手に入るかも知れないから。
ーー観察のスキルも使っておこぉ。
…………。
ーーん~。スキルの獲得はなしかなぁ。
作業が行われること数十分。
特に何か新しいスキルを手に入れたりすることもなく、ノガワは飽きてきた。
ーー何か新しいことをして暇を潰せたら良いんだけど、……何かあったかなぁ?
ノガワは、村人たちが慌ただしく作業をする中、暇つぶしの方法を考える。
そして、
「あっ。そうだ。『弱点看破』『スキル的中』」
2つのスキルを使う。
視界がモノクロになり、いくつものスキル名が出現してきた。
ーーおお。知らないスキルが沢山あるよぉ。……ん?あれ?なんか、作ってるヤツの一部分が赤くなってるけど、何だろぉ。
赤い部分がなんなのか少し考えて、
ーーあっそうだ!
思い出した。
これは、弱点看破の効果だ。
「ね、ねぇ。あの部分かなり危なそうだけど、補強とかした方が良いんじゃない」




