72.鮮度って大事なんだぞ
「……どの町かって?確か、王都からすぐに行ける村でな、………あぁ。知ってるかは分からないが、一部の業界で有名な宿があるぞ。店主に勝つと、宿代がタダになるって言う。……まあ、元の宿代もかなり安いらしいんだけどな」
「ほぇ~。もしかしたら、僕行ったことあるかも」
朝。
ノガワは1人で酒を飲んでいた男に情報を聞いていた。
この男は、昨日の夜反乱の情報を持ってきた男だ。
昨日は大勢に囲まれていたが、今日はもう全員熱が冷めてしまったようでぼっち。
そこを狙ったノガワが酒を1杯おごって気分を良くさせ、洗いざらい吐かせているのだ。
ーー悪いことしたわけじゃないから、洗いざらいって言う表現は何か違う気がするけどね。まあ、それはいいや。重要なのは、情報の内容だよね。
男から聞いたことが本当なら、反乱が起きた町は、ノガワが言ったことのある町だった。
どの町かと言えば、ノガワが王都から脱出した直後、深夜に行った町だ。
店主を倒せば宿代がタダになる宿なら。あの宿くらいしか思いつかない。
「でも、あそこで反乱が起きたって相当だね。王都に近いはずだから、しめつけも大分強いはずなのに」
「ああ。そうだよな。あの辺りは衛兵の数もかなり多いって言うのに。王都で衛兵が反乱を起こしたと思ったら、今度は隣町かよって感じだよな」
「うんうん。なんか、逆に衛兵が多いところが怖くなってくるよね」
「確かになぁ」
そう言う認識はあるらしい。
ーーこれは、更に国の権威を低下させるチャンスなんじゃない?兵士への信用度が下がってるわけだから、同時に国の権威も落ちるわけだし。
簡易人の終わりはともかく、この国の終わりは近いかも知れない。
そして、当然内乱などが起きてしまえば、簡易人側の戦力が低下するのは明らか。
ノガワたち魔王軍側としては、この機を逃すわけにはいかない。
ーーもっと頑張ろう。もっと反乱を起こして、この世界をボロボロにするんだぁ。
ノガワは黒いことを思いつつ、男と別れた。
帰り際にも1杯酒をおごったら、かなり喜ばれた。
そして、宿も出て、次の町へ。
その間は特に何もなく、
ーー隣町も燃えてない、と。……いや、反乱がポンポン起こってる方がおかしいんだけどね。
更に、その日も何もなく、しかも、それから数日は静かに過ごすことが出来た。
その間ノガワは、宿の客と話をしたり、店をまわって店員と話をしたり。
情報収集などに力を入れた。
そして、そんな嵐の前の静けさのような日々が4日ほど続いた後のことだった。
「着いたぁ~!!」
ノガワは自然あふれる村の中、両手を挙げて喜んだ。
ここは、目的地の村。
聖都と呼ばれる場所の近くの町で教わった、食べ物の美味しいらしい村である。
「さぁて、まずは何を食べようかなぁ~」
ノガワは出ている出店などを見て、思わずよだれが出そうになる。
期待は上がりまくりで、今すぐ何か食べたい。
ノガワはしばらく観察してから、
「お兄さん。青いヤツ1つちょうだぁい!」
「ん?マナライチのことか?まあ、普通は見ないよな。……ほれ」
「ありがとぉ。……これ、マナライチって言うの?初めて見たよぉ」
ノガワはそんなことを言いつつ、青い果物を受け取る。
この出店にはそこそこの頻度で人が来ていた。
激しく混むわけでもなく、全く客が来ないわけでもない。
しかも、ここで買った果物は全員その場で食べていた。
この青いくだもの、マナライチも、前の客が丸かじりしていたのだ。
ーー知らないってバレちゃってるし、もっと聞いても良いよね。
「初めて見たよぉ。これ、食べ方は生でそのまま食べていいのかな?」
「ああ。それでOKだ。……因みに、このマナライチは魔力ポーションの原料なんだ。だから、味はなじみがあると思うぞ」
「そうなんだぁ」
魔力ポーションの原料と言うことは、コレを食べると魔力を回復できるのだろう。
ーーな、なんか、もったいない気がしちゃうな。魔力を使ってないのにこういうの食べちゃうのは。
ノガワはそう思いつつも、マナライチを口の中へ放り込み、
「ん~。確かに、なじみのある味だねぇ。……でも、こっちの方が何倍も美味しい気がするよ」
「おぉ。そうだろそうだろ。やっぱり、こういうモノも、鮮度って大事なんだぞ」
「ふぇ~。そうなんだねぇ。まあ、確かにそんな気もするよぉ」
そんな会話をする。
その直後、
「お、おい!アレ見ろ!」
「ん?あっ!?な、何だあアレ!!」
周囲が騒がしくなった。
ノガワと話していた店員の男も、ノガワの後ろの光景を見て固まっている。
ーーん?どうしたんだろ。まるで、奥の方が大火事になってて、まるで地獄のような光景にでもなってるみたい。
ノガワはそう思いつつ、何が起きているのかと振り返る。
「……あ、あぁ~。またかぁ」
ノガワはその光景を見て、なんとも言えない表情をした。
この光景を見るのは、2回目なのである。
ーーまた、火事が起きてるよ。しかも今度は、凄い広範囲だし。
すぐにこちらを飲み込んでしまいそうなほどの巨大な炎。
それが、ノガワの視界いっぱいに広がっていた。
ーー王都の火事の時も大きかった気はするけど、今回は比べものにならないレベルだね。一体いくつの町とか村とか燃えてるのやら。




