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70/160

70.僕がちょっと先導するだけで

「絶対人為的なモノだろ!」

「いや、神の怒りに触れたんじゃねぇか!?」

「いやいや。魔王軍の仕業だろ!」

「も、もしかして、新しい種族が反乱を起こしたんじゃないか!?」


根も葉もないそんな推測が、町のモノたちの不安をかき立てていく。

ノガワはヒートアップしている中心を離れ、野次馬の外側の方へと抜けていった。

そして、不安そうにしている人物に話しかけていく。


「お兄さん。大丈夫?足が震えてるよ?」


「あ、ああ。大丈夫だ。……で、でも、うちの村もあんな火事が起こっちまうんじゃないかと思ったら、怖くなってきて」


「ああ、分かるよ。とりあえず、不審な人がいないか見張っておかないといけないね」


しばらく話して、次の人物へ話しかけ、また次へと。

どんどんと人と話していく。

その話してみた感触から判断して、やはり全員少なからず不安を抱えているようだ。


 ーー気持ちの乱れは治安の乱れ。なんてねぇ~。

ノガワはそんなことを思いつつ、人と話していく。

だが、ノガワの思うように、実際にこの不安の溜まった町は、治安が良さそうには見えなかった。


いつ不安が爆発して、暴力沙汰になってもおかしくはない。

そんな状況だった。

だが、それも時間とともに、少しずつではあるが収まっていく。


数時間後。

まだ顔には不安そうな表情が見られるが、最初の時のような逼迫感は感じられなくなっていた。

ただ、そんなタイミングで火事の確認に行ったモノが帰ってくる。


「た、大変だ!遠くの町で、反乱が起きたぞぉぉぉ!!!!」


「「「……え?」」」


困惑の声を漏らす町のモノたち。

その言葉の意味を素直に受け入れることが出来ないようだ。

 ーー王都と同じく反乱かぁ。そこは予定通りなんだね。

ノガワはあごに手を当て、小首をかしげながらもそう考えた。


「は、反乱ってどういう事だよ!?」

「わけ分かんないこと言ってんじゃねぇよ!!」


混乱から回復し、怒鳴る町のモノたち。

反乱など起きるとは思っていなかったのだろう。

 ーーでも、起きちゃうんだよねぇ。何で今日なのかは分かんないけど。


「本当なんだよ!旅人が急に町中に火を付けまわったらしくて、しかも無差別に人に剣で斬りかかったらしいんだ!」

「しかも、その旅人はまだ捕まってないんだ。見た目は、身長が高くてひげ面の男だったらしい!でも、ひげは剃ることができるから、今のところ重要な特徴は、身長が高い旅人の男って事だけだ!」


「な、なんだよそれ」

「何で反乱なんか、……ん?待てよ!何でそれで反乱なんだよ!ただの大量殺人じゃないか!」


隣町で聞いてきたことを語るモノたちに、町のモノが問う。

 ーー確かに、1人だけで火を付けて殺しまわったからって、反乱と判断する理由にはならないよね。

ノガワもその疑問には納得できた。


「な、なんか、逃げるときにコレを町中に巻いていったらしいんだ」


問われたモノが、1枚の紙を出す。

そこには大きく、

”無能な王族は死すべし!我らがまとまらないのは、王族が無能で威厳がないから!”

と書かれていた。


「おお。クーデターっぽい文章だね」


ノガワはその文章を読んでそれらしさを感じた。

それから、周りの話に聞き耳を立てる。

 ーーどんな面白い話をしてるかな?


「ま、マジかよ。本当に、反乱なのか?」

「や、やめてくれよぉ。ただでさえエルフとかハーピーとか色々あったって言うのに」

「だから反乱をしたんじゃないか?紙に書いてるように、もっと王族に威厳があれば、裏切りなんて起きなかったかも知れないし」


女は面白い話をしていた。

 ーーあぁ。意外と、王族に威厳がないって思ってる人もいるんだね。これは、僕がちょっと扇動するだけでかなり大きな反乱を起こせるんじゃないかな?

ノガワはそう考え、少し自分の進む道が楽な物になったような気がした。


「お、おい。まさか、お前反乱を起こす気じゃないだろうな?」

「い、いやいや。そんなわけ無いだろ!反乱を起こしたって、威厳があるヤツがトップになるとは限らないし。それよりは、現状維持の方がましな気がする」

「や、やめとけよ。そういう話するの。もしお偉いさんに聞かれたら、首を飛ばされるだけじゃ済まないかも知れないぞ」


反乱を起こすほどではない。

が、そうは言うが、少し火を付ければきっと参加してくれるだろう。

他のモノたちの話にも耳を傾けてみる。


「怖いな。この村でも反乱を起こすヤツが出てくるのか?」

「早く、犯人を捕まえて欲しいねぇ。でも、その犯人の気持ちは分からなくもないけど」

「気持ちは分かるけど、暴力に頼るのは良くないんじゃない?」


意外と、王族の力に疑問を持っているモノは多いようだ。

割合で言えば、3割ほどが反乱に一定の理解を示している。

 ーーこれはこの町だからなのかは分からないけど、だとしても一定の人数はそう言う人がいるのは分かった。これは収穫だよね。


「まあいいや。とりあえず今日は、宿とるかぁ~」


ノガワはそう言って野次馬から離れ、宿を探していく。

騒動で色々騒がしかったが、宿を取ることは出来た。

が、店はあまりやっておらず、この町を堪能することは出来そうにない。

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