68.ただの飲んだくれな旅人だけどな
「お兄さん、随分とお酒に強いんだねぇ」
「あぁ?たりめぇよ。俺は今魔王軍にいるドワーフ族の血を引いてんだからよ!!」
「へぇ~」
ノガワは感心したように声を出しつつ、辺りをくまなく観察した。
他のモノもほとんど感心したようにしているが、1名だけ別の反応をしている。
ーーほんの一瞬だけど目線が鋭くなったね。あの人は魔王軍をかなり恨んでるのかな?
ノガワはそう予測を立てた。
ーー恨みは争いの原動力になるからねぇ。できるだけこういう人は排除しておきたいけど。………でも、そう人こそ利用価値があるとも言えるのかな?
そこまで考え、今度は利用方法を考え始める。
「ドワーフ族かぁ。鍛冶が上手くて有名な種族だよね?」
「ああ。俺の先祖は、かなりの腕前の鍛冶師だったらしいぞ。ま、その子孫の俺はただの飲んだくれな旅人だけどな。ガハハハッ!」
「なにそれぇ~」
利用方法は考えつつも、ノガワはこの男との会話も欠かさない。
だが、それもここまでで良いかも知れない。
ーーそろそろ終わって良いかな?このお兄さんも限界みたいだし。
「はい。おかわりだよぉ」
「おう!まだまだ飲んでやるぜ!!!」
少女の運んで来たお酒を一気飲みする客。
だが、流石にここまでやるときつかったようだ。
コップをテーブルに置くと、座っていたソファーにもたれかかり、ゴーゴーといびきをかきながら寝てしまった。
「この人たちはここに放置してて良いのかな?」
ノガワはそう言って、少女に目を向ける。
運んだりするなら手伝おうかと思ったのだ。
だが、
「うん。ここで寝るとね、料金が上がるようになってるの。それに、掃除をしないと更に料金が上がるから、私たちにはお得なんだぁ」
「へぇ~。それは良かったね。沢山お父さんのお手伝いをするんだよ」
「うん。私頑張る!!」
ノガワは少女の頭を撫でた。
その純粋な目がノガワの心を押しつぶしそうになるが、その瞳をじっと見つめ返して耐える。
勿論、表面上では笑顔を浮かべているが。
「それじゃあ、僕はもう部屋に戻ろうかなぁ」
「あら?じゃあ、私も戻ろうかしら?」
ノガワが戻って寝ようというと、1人の客がそれに続いた。
ーー釣れた。
ノガワは心の中で笑みを浮かべた。
この客が、先ほどドワーフという言葉を聞いたときに視線を鋭くしていたモノである。
出来れば消すなり何なりしておきたい。
ノガワはそう思いつつ、その客に近づいていく。
「じゃあ、一緒に上がろうかぁ」
「ええ。いいわよ。お話ししましょう」
客は笑顔で頷いていくれる。
その後は、適当に話をしつつ、それぞれ部屋へと戻った。
ーーよし。多分成功したね。
ノガワは自分のやりたかったことの成功を感じ、気分よく眠りにつけた。
そして次の日。
ノガワが起きるともうかなり良い時間になっていた。
「ん。寝坊ではないけど、思ってたよりは寝たかな?まあ、いいか」
特に急がなければならない予定があるわけではない。
ノガワは適当に、簡易人側の領土を荒らしておけば良いのだ。
ノガワは朝の支度をして、下の階へと降りていく。
「おっ。来たかガキ」
「ん~。おはよぉ~、皆起きたんだね」
ノガワは昨日酔い潰れたメンバーを見回しながら言う。
すると、全員が苦笑をした。
ーーこの反応から考えると、自分で起きたわけではないのかな?お店の人に起こされて掃除させられったて考えて良いのかも。
そう考えると、彼らが今朝食を食べていると言うことは、
ーーさっき掃除が終わったばかりって事かな?
それなら、ノガワが起きたのは丁度良い時間だったのかも知れない。
「お前も朝食食うんだろ?ほら」
そう言って、朝食が渡された。
少し皿から暖かさを感じるが、出来たばかりという印象は受けない。
因みに、渡してきたのは店員の少女の父親で、店長らしき男性だ。
「ありがとぉ。そういえば、昨日の夕食も美味しかったけど、お兄さんが作ってるの?」
ノガワは尋ねる。
きちんと、お世辞も混ぜながら言う辺り、流石ノガワだ。
店長は頬を書いて照れたような仕草をしつつ、
「い、いや。俺、お兄さんなんて歳じゃねぇんだけどな。………まあいいか。それより、これはかみさんが作ってくれてんだよ。お前が美味しいって言ってたことは伝えとくぜ。きっと喜ぶから」
「おぉ。良い奥さんだねぇ。うらやましぃ~」
このこの、という感じで、ノガワは肘で店長をつつく。
店長は更に照れたような顔をした。
ーー奥さんを褒められると嬉しいのかぁ。随分と愛妻家みたいだね。
「ひゅ~ひゅ~。うらやましいねぇ」
「かぁ~。この幸せ者~!!」
その様子を見ていた周囲の客が騒ぎ出す。
だが、こちらにあまり照れた様子はない。
からかっているのが分かりやすすぎたのだ。
「ふん。お前たちに何言われても嬉しくないな。それに、そんなこといったって、代金は安くしないぞ!」
「「「えぇ~」」」
落ち込んだような声。
だが、その顔には笑みが浮かんでいた。
ーーなんか、居酒屋ってこんな感じのノリなんだろうなぁ。って感じが伝わってくる。居酒屋行ったことないから、真偽は確かめられないけど。




