65.鳥の声は聞こえなかったが、ネズミの声は
「お兄さん。まだこのお店は続けるの?」
「あぁ?それはどういう意味だ?」
店員が眉間にしわを寄せながら尋ねてくる。
ーーあぁ~。いつまでこんなくそマズい店構えてんだオラァ!みたいに聞こえちゃったのかな?もっと言葉に気をつけた方が良かったかもね。
ノガワはそう心の中で反省する。
「いや。ほら、エルフと戦いが起きてるから、この辺も巻き込まれるかも知れないじゃん」
「ああ、そう言う意味か。それなら、問題ないぜ。流石に向こうに助力しに行った奴らほどじゃねぇが、俺も腕っ節には自信があるんだ。もしエルフが来たら、死ぬまで戦うまでよ!!」
「ああ。確かに、お兄さん強そうだもんねぇ」
ーー見た目が強そうだから、真っ先に殺されそうだね。可哀想に。
ノガワは表面上は笑みを浮かべつつ、そう思った。
戦争などにおいて、背が高かったり、がたいが良かったりすると、逆に的にしかならないのだ。
ーーまあ、でも、このお兄さんが的になる事で他の人の命が救えるかも知れないわけだからね。自己犠牲の精神としては良いのかも知れないね。
ノガワはそう思いながら、少しだけ見直した。
本当にそんな自己犠牲の精神をこの男が持っているのかは別の話だが。
「……ううん。おいしかったぁ!また、状況が落ち着いたらくるね!」
「おう。来るときまで、シッカリとここを守っていてやるから、安心しな!!」
男はそう言って胸を張った。
ノガワは店を出て行き、
ーーよし!他のお店も行こう!!
と言うことで、幾つか店を巡った。
ここでも雑談は欠かさない。
エルフのことがあって皆焦っているようで、落ち着くためにノガワとの雑談に応じてくれた。
ーーはい。ラウス。まだまだあるから、ゆっくり食べて良いよぉ。
ノガワは店を回り終わり、ラウスに食事を与えながら歩いた。
このときも、隣の町へ行くのであろう白ローブのモノたちと多くすれ違う。
ーー忙しそうだねぇ。……僕は、巻き込まれないように気をつけないと」
ノガワがそう心を引き締めると、宿へ到着した。
今日はもうやりたいことはやったので、早く寝ることにする。
「明日その分早く行動すればいいわけだしね。……それじゃ、ラウス。お休み」
…………。
チュンチュン。
なんていう鳥の声は聞こえなかったが、目が覚めた。
「チュチュッ!」
「おはよう。ラウス」
鳥の声は聞こえなかったが、ネズミの声は聞こえた。
ラウスがノガワの頬へ顔をこすりつけてくる。
ノガワは笑顔でそれを受け入れた。
「さて、今日はまた町を幾つか渡って、食べ物が美味しいって言う噂の村を目指そうか」
「チュゥ~」
ノガワの出した計画に、ラウスが了承(?)の声を出す。
そうと決まればすぐに準備をして、ノガワは朝食をとる。
そして、
「それじゃあ、またこれたら来るね!」
「ああ。待ってるよ!落ち着いたらおいで!!」
宿の男に手を振り、宿を出た。
それから、次の町へと向かって足を進めていく。
ーーん。そういえば、こういうときに取れそうなスキルがあったね。
ノガワはあるスキルの存在を思い出し、少し歩き方を変える。
つま先立ちになり、ゆっくりと音を立てないように歩いた。
ーーおぉ。凄い進まない!?で、でも、コレが出来るようになれば、スキルが手に入るんだぁ!
スキル獲得のため、数分間その歩法で歩く。
ーーあぁ~。きつい!足が生まれたての子鹿みたいにぷるぷるしてる!
もうかなり足に限界が近づいてきたところで、
《スキル『抜き足』を獲得しました》
「よし!」
目的のスキルを手に入れた。
はぁ~。本当はまだまだ先があるけど、取り敢えずここまでで良いよね?
疲れたので、今回はここまでにすることに。
「さて。体力かいふくの為にも、早く次の町に行って、買い食いするぞぉぉぉ!!!」
ノガワはそう言って、駆け出した。
バフの効果がまだ続いているようで、昨日ほどではないが良い速度が出る。
そのおかげもあって、
「………ふぅ~。到着~」
走り出してからあまり時間もかからないうちに町へと到着した。
ノガワはキョロキョロと町を見回し、
ーー何かあるかな?……あった!
出店を発見したので、それに近づいていく。
「こんにちはぁ~。何売ってるの?」
「こんにちは。ここでは、マンドラゴラの漬物を売ってるよ」
「ほぇ~。じゃあ、2つ貰えるかな?」
「はい。まいど~」
ノガワはマンドラの漬物を買い、一口囓る。
するとすぐに、体力が回復してきた。
ーーやっぱり、体力回復強化のスキルも有能だね。食べ物ちょっと食べるだけでこんなに体力回復しちゃうんだから。
「さて、宿も探さないとね。……衛兵さぁん」
ノガワは兵士に話しかけ、宿の場所を尋ねた。
ノガワはお礼を言い、その場所へと向かう。
ーーここだね。…………おおっ!?大きい!?
ノガワの前にそびえる宿は、かなり大きい。
「こ、こんにちはぁ~」
ノガワは少し緊張しながら宿へと入る。
ーー高級店とかじゃによね?大丈夫だよね?
そんな風に怖がるノガワを出迎えたのは、
「あっ。お兄さんこんにちは。いらっしゃいませ」
小さな少女だった。
ノガワはその少女を見て、しばらく固まる。
ーーえ?今、いらっしゃいませって言ったよね。って事は、この子店員!?




