60.小さな光もあるのだと信じて
「いやぁ~。僕、簡易人の方にいるときはステータスアップのスキルとか1つも獲得できてなかったからさ、バフかけて貰って初めてスキルをゲットしたんだよぉ」
「………え?か、簡易人側はバフをかけないのか?」
さらに困惑した表情をするルティアーヤ。
ノガワはそれに、苦笑しながら首を振った。
ーーまあ、今の説明じゃそう思うのかも知れないけど、
「いやいや。僕たちみたいに補給部隊にいたメンバーは、前線に出すためにイジメを受けてたんだよ。だから、そのイジメの一環として、バフをかけて貰えなかったり、スキルの獲得方法を教えて貰ったりしなかっただけ」
「な、なるほど?そうだったのか」
納得したように軽く首を上下させる。
ルティアーヤはそれから、考え込むように腕を組んだ。
ーん~?どうしたのかな?もしかして、今回僕にどの言葉をかけるべきか考えてるの!?
と、思ったが、
「よし!それなら、帰ってきたらスキルを沢山獲得させてやろう!バフも沢山かけてやるから、期待していたまえ!!」
「おお。本当!ありがとぉ~」
ノガワのスキル獲得に協力してくれるらしい。
これは素直にありがたかった。
ーーふぅ~。これで、帰ってくる楽しみが増えたよ。スキルが増えれば、きっと、もっと僕の価値は上がる。そうなれば、更に僕を手放せなくなっていくよねぇ?………くふふふふっ!
ノガワは心の中でいやらしい笑みを浮かべる。
「では、そろそろかけるぞ」
「あっ。うん。よろしくぅ~」
「『エブリレイズ』」
ルティアーヤが、魔法名を唱えた。
すると、薄くノガワの身体が光る。
ーーおぉ。これが、バフをかけられる感じかぁ。………特に何か感じるってことじゃないね。寝てる間にかけられたりしても気付かなさそう。
「ありがとぉ~」
「いや。また何かあれば言うことだな。では私はこれで」
ルティアーヤは去って行った。
ーー今日のルティアーヤは、昨日とは雰囲気が違ったね。なんか、最初にあったときに近づいた気がする。………もしかして、あっちが素なのかな?
ノガワが、ルティアーヤの様子を思い出し、考えていると、
「ノガワ。リャーファを連れてきたよ!」
「ん。あぁ。アイファ。ありがとう。リャーファもおはよう。朝早くに悪いねぇ」
「………ん」
かなり眠そうだ。
寝かけている。
というより、半分寝ている。
「お土産何がいるか聞いておこうと思ったけど、今はそっとしておいた方が良さそうだね」
「ああ。そうかもしれな」
「プリン!」
ノガワに同意しようとしたアイファの言葉を遮り、リャーファが大声で言う。
その目はカッと開かれ、らんらんとしている。
食べ物への、特に菓子類への執念は眠気を超えるようだ。
「お、おう。分かったよ、プリンね。売ってたら買うよ」
「……ぐぅ」
「あっ。もう寝たんだ」
ノガワが答えたときにはすでに寝ていた。
流石にノガワもリャーファに慣れてきていたが、これは予想外である。
ーーまさか、あそこまで目を見開いといて即寝るとは思わなかったよ。
「ま、まあ、プリンは買ってくるとして、……アイファは?何か食べたいものとか、買ってきて欲しいものとかある?」
「え?わ、私は、お、お菓子のレシピ集を頼んでいいかい?」
「はぁい。レシピ本ねぇ!ということは、期待しちゃって、いいてことかな!?」
ノガワは目を輝かせた。
レシピ本を求めてくると言うことは、それを作るつもりだということ。
新作を食べられる可能性があるということだ。
「う、うまく出来たら上げるよ」
「いえぇ~い!期待してるねぇ!!」
約束を取り付けた。
ノガワは大喜び。
その横で、こそっと、
「………私も」
「ちゃんと働いたらあげるよ」
「………ん。頑張る」
と言う、姉妹の可愛い会話が繰り広げられていた。
ーー2人の姉妹仲は良好。長い期間一緒にいても仲良く出来るなんて、うらやましいねぇ。僕も心の許せる相手がいると良いんだけどなぁ。
そう思っていると、
トントンッ!
軽く胸に衝撃を感じる。
ーーあぁ。ラウス。僕の相棒ってことで立候補かな?でも、まだ知り合って1ヶ月も経ってないんだから、相棒とまでは言えないかな?でも、これからもっと、仲良くなっていこうねぇ~。
ノガワはそう思いながら、胸の中にいるラウスを、服の上から撫でる。
「さて、そろそろ行くよ。リャーファ、準備をしてきな」
「………ん」
アイファが声を出すと、リャーファは頷き、部屋を出て行った。
そろそろ出発らしい。
ーー結局、数日しかこっちにはいられなかったね。まあ、状況の激しく変わる戦争中だから、仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
「ノガワ。ついてきな」
「はいはぁい!」
アイファに声をかけられ、ノガワはその後を追う。
その向かう先には、これからも困難は多いだろう。
だが、ノガワは歩み続ける。
ーー僕の復讐は、まだ始まってもいないんだよねぇ。
ノガワはその道の先が、血みどろになっていることを知りながらも、いつも通り微笑んだ。
そこにはきっと、小さな光もあるのだと信じて。
第1章 完
1章完!




