58.今頃1人殺したところで倫理観も何もない
「…………といった感じでどうでしょう?」
「うぅん。いいねぇ。じゃあ、そういう風に動こうかな」
魔王から、いくつか面白そうな話を聞いたのでそれを素に2人で作戦を考えた。
ノガワの顔には明るい笑顔が、魔王の顔には弱々しい笑顔が浮かんでいるが、2人とも相当腹黒い。
きっと、心の中では悪魔のような笑みを浮かべているのだろう。
ーーさっき僕、魔王様のことを鬼やら悪魔やら思ってたけど、人の事言えない気がしてきたなぁ。………いや。別に罪悪感がないわけじゃないんだけどね。
「では、良い時間になりましたし、今日はお開きとしましょうか。楽しいお話が出来て、とても有意義な時間でした」
「そっかぁ。それは良かったよ。じゃあ、僕はコレで」
ノガワは立ち上がり、扉へと向かう。
そして、そのあっマスK添いだけ扉を開け、ノガワは廊下へ出て行った。
あまりにも素速い退出に。一同一瞬反応が遅れてしまう。
『………え?あっ!私も失礼するよ!」
「…………ん。追いかける」
1番最初に回復したアイファが扉を目指して歩く。
その後ろを、副官であり妹でもあるリャーファが追った。
扉を開け、ルティアーヤが案内したとおりの道順での側を追う。
1つ目の角を曲がり、
「きゃぁ!?」
「ん?アイファ。どうしたの?」
曲がったところにノガワはいた。
ぶつかりそうになり、アイファはかわいらしい悲鳴を上げながら横に避ける。
そして、横から出てきたアイファに、ノガワは何も知らないような顔で事情を尋ねた。
「どうしたって、あなたが1人で出て行くから追いかけてきたのさ。あなたこそどうしたんだい。あんなに急に出て行って」
「ん~。………ねぇ。2人はバフをかけれる?」
「は?本当にどうしたんだい?………私もリャーファもかけれないよ。というか、さっき部屋にいたメンバーの中だと、バフがかけられるのは魔王様かルティアーヤくらいだよ」
その返答に、ノガワは笑みを浮かべた。
ーーということは、そういうことだよね。
困惑しているアイファたちを置いて、ノガワは1人で納得していた。
「……あぁ。ごめんね。完全に置いていってたね。僕が1人で出て行ってた理由は簡単だよ。自分の能力を確かめるためかな」
「「自分の能力を確かめるため?」」
おってきた2人は揃って首をかしげる。
そう。ノガワの能力は、覚悟の札によって進化した。
ノガワはその効果の確認のため、人目につかない場所で能力を確認したのだ。
確認方法は簡単。
普段はあまりしていないが、自分のステータスを表示するだけだ。
それを見れば、能力の効果も一緒に分かるようになっている。
ーーテイムが一心同体に進化したのは凄かったね。
ノガワは効果を思い出しながら、そう考えた。
一心同体は、ノガワが初めて獲得したスキルでもあるテイムのしかし田モノ。
効果としては、テイム状態にあるモノの感情が、簡単にではあるが読み取れるようになるというモノと、それから、そのテイム状態のモノのステータスを数段階引き上げるというモノだ。
ーーふふっ。これで、ラウスをもっとコミュニケーションが取れるようになるね。
だが、この進化はメリットだけではない。
デメリットとして、もう新しくテイムをすることが出来ないというモノがある。
つまり、ラウス以外のテイムするモノがいないということだ。
ーーでも、意思疎通が出来るのは大事だしねぇ。………まぁ、悪くはないのかな?今後の可能性も考えて、出来れば新しいテイムも出来れば良かったんだけ、っ!?
「いっったぁ!」
「え?大丈夫かい!?」
「…………どうした?」
突然叫んだノガワに驚く2人。
ノガワは引きつった笑みを浮かべながら、何でもないと答えた。
ーー痛いなぁ~。ラウスに噛まれちゃったよ。そんなに怒るところだったかなぁ?
ラウスが胸元をかんできたのだ。
割と痛い。
ノガワが怒りたいのだが、なぜか一心同体によって伝わってくる感情では、向こうの怒りが強い。
「じゃあ、明日出発だし、今日は早めに寝ようかなぁ」
「そうしな。しかし、あんた本当にワーカホリックになっちまってるねぇ。無理矢理にでも休みをとらないと行けない日が近いかも知れないよ」
「良いじゃん別に。どうせ、僕は将来邪魔になる可能性もあるんだし。使えるときに使った方がお得だよ」
ノガワがそう言うと、アイファはあきれたような顔をした。
ーー僕も魔王軍のことを利用してるんだから、魔王軍も僕のことを利用してるって感覚にはならないのかなぁ?凄くWin-Winな関係だと思うんだけど。
「あのねぇ。いくらあんなたが邪魔になるかも知れないと言ったって、流石に消すのは倫理的にどうかと思うのさ。魔王様も、流石にそこまで非道なことはしないよ」
「えぇ~。僕も好きなことやれてるし、それでいいと思うんだけどなぁ。それに、戦争やって沢山の人を殺してるんだから、今頃1人殺したところで倫理観も何もないでしょ」
「それはそうだけど………」
アイファはむっとしたような表情をした。
だが、それ以上は言ってこない。
この会話が平行線になると言うことは理解しているようだ。
ーーん~。もやっとする別れになっても困るし、明日の朝もう少し話をして、関係を修復できるように頑張るかぁ~。………さてさて、頑張るのは明日の僕に任せるとして、今日は寝ちゃおう!!




