52.そこで喜んでいる代表には悪いが
「まず、皆様には申し訳ありませんが、死んでいった同胞たちのためにも、ここまでのことを謝罪することは出来ません」
ザワリッ。
最初の発言から、会議室は動揺が走った。
そしてすぐに、
「ふざけるなぁ!!」
「こちらへ来るというのなら、わだかまりを残さぬ努力ぐらいしろ!!!」
罵声が飛ぶ。
一気に流れが変わったと行って良いだろう。
ハーピーを受け入れないという意見が強くなってきた。
「落ち着け!!」
だが、それもルティアーヤの一括で収まる。
幾ら幹部といえど、四天王の言葉には簡単には逆らえない。
幹部たちは表情を険しくしつつも、椅子へふんぞり返るようにして、いかにも不機嫌であると言うことをあらわにして座った。
「ルティアーヤ様。感謝します。それでは、私の発言を続けさせて頂きましょう」
ハーピーはそう言って話を再開する。
だが、決してそれが良い流れになったわけではない。
幹部たちの心は、怒りを無理矢理押し込んでいる状態なのだ。
下手なことをすれば、その怒りが爆発してしまうのは間違いない。
では、爆発してしまった場合どうなるか。
ハーピーと魔王軍に入っている種族を比べると、四天王としても魔王軍に入っている方の種族をとるしかない。
だから、ハーピーにはもう後がなかった。
「私たちハーピーは、数名の方がご指摘されたとおり、かなり数を減らしております。そのため、あまり戦力にはならないと思って頂いて構いません。どちらかと言えば、ドワーフ族の方が言われたように、軽い物資の運搬などが適しているかも知れません」
後がないからと言って、ハーピーに恐れはなかった。
なぜなら、1番の問題はすでに終わってしまったのだから。
謝罪が出来ないという問題を最初に解決したので、ほとんどの問題はそこまで重いとは思えなくなっている。
「つまり、はっきり言ってしまうと、私たちに戦力的な価値はほとんどないと思ってください。ですが、1月。1月あれば、新しい子供が生まれてくるので、そこまで物資運搬をさせて貰えないでしょうか。そこからは、全戦に参加しますので」
ハーピーはそう言うが、それでもかなりマズい。
1月で生まれてくる子供の数など、たかが知れている。
1月で少し数が回復したとしても、すぐに数は減少傾向になるだろう。
「ただ、最初の1月は戦闘に参加しないわけですし、生活する場所も良い場所は求めません。最近簡易人側の村を1つ全焼させたと聞きましたので、そこを使わせて頂けたらと思っています。そこなら私たちが前線に近くなるわけですし、裏切っても魔王軍糧領内に被害はすくなると思われますので、皆様にも良いと思います」
さらに生息場所の譲歩。
何もない土地で、1月だけ猶予が与えられたところで、何か良い方向に動かせるわけがない。
そこまで話をして、ハーピーの発言は終了する。
「…………以上で終わります。皆様とともに勝利を掴みたいと思っておりますので、何卒お願い致します」
ハーピーはそう言って座った。
彼女は代表だが、非常に辛い立場である。
最初に謝罪しないといったとおり、ハーピー内からの意思によって、友好関係を簡単に結ぶことは出来ない。
それに加えて、魔王軍の半数近くはハーピーに良い感情を抱いていないので、内部からの圧と、外側からの圧、両方から板挟みになっているのが彼女である。
「さて、これでハーピー族の発言は終了した。何か質問、意見などがあるモノは挙手を」
ルティアーヤがそう言うが、誰も手を上げない。
もう、彼らの結論は出ているのだ。
ルティアーヤはハーピーの方をチラリと見てから、
「それでは、採決をとる。ハーピー族の魔王軍加入へ賛成するモノは挙手を」
ハーピーは目を瞑り、手を組んで祈る。
彼女なりに、出来る最大の努力はしたつもりだ。
コレでもダメなら、彼女が何度押してもダメだろう。
彼女が恐れを覚えつつも、つむっていた目を少しだけ開ける。
そして、彼女の表情に少しずつ明るさが戻ってきて、目が驚きで見開かれた。
幹部の全員が、挙手をしていたのだ。
「なるほど。全員が賛成ということか」
ルティアーヤは大きく頷く。
それから、片手を動かし、手を下ろすように指示する。
そして、
「………では、そこで喜んでいるハーピー族の代表には悪いが、魔王様のご意見を伝えよう」
ルティアーヤはそう言って立ち上がる。
そこで、ハーピーの表情が変化した。
そう。彼女は魔王軍の幹部たちには認められたモノノ、最終決定者である魔王に認められたわけではないのだ。
最初の方にルティアーヤが言ったとおり、魔王が許可をしなければ、幾ら魔王軍の幹部全員が賛成しようとも許可は下りない。
ハーピーにとって本当に重要なのは、この魔王の決定の方なのだ。
ルティアーヤが、魔王の意思が書かれた紙を全員に見せるようにして持ち、
「魔王様は、貴様らと同じく、ハーピーの魔王軍加入の許可の指示をお出しになった」
「「「おお!」」」
幹部たちがその決定に声を上げる。
ハーピーは、それを聞いて目に涙を浮かべていた。
どうにか、少しだけハーピーが存続できる未来の希望が見えてきたわけだ。




