47.顔を近づけていき、
「到着だよ!」
「うん。ありがとう。ベティー」
ベティーは案内だけして去って行った。
扉の前にいるのはノガワ1人。
ノガワはゆっくりと深呼吸をして、
コンコン。
覚悟を決めてノックをした。
「入れ」
「はぁい!やっほぉ~!!ルティアーヤ!何の用~」
ノガワは入って早速本題を尋ねた。
ここならまだ扉からも距離が近くて、ルティアーヤとは少し離れているから、もし攻撃されるとしても逃げられるはず。
ーーいや。攻撃するなら、もっと近くに来いとか言うよね。この入り口の近くで本題を言われたら一安心。部屋に入ってくるよう言われたら、死ぬ可能性は高い。
「そんなに入り口の近くで話すことでもない。扉を閉めてここに座れ」
ルティアーヤは近くのソファーを指さしながら言う。
ーーあぁ。僕、殺されちゃうのかぁ。
ノガワは絶望に近い感情を抱いた。
「……分かったよぉ」
ノガワは逃げるという手も考えたが、ここで逃げたところですぐに殺される未来しか見えない。
なら、覚悟を決めるしかないと思った。
ーーどうにかして、ルティアーヤの信用を勝ち取らないと!ここで死ぬか生きるかが決まるんだよ!!
ノガワはソファーまで歩いて行き、静かに腰を下ろす。
ソファーは高級品のようで、非常に座り心地が良い。
ーーこれは、僕を油断させるための罠!?この座り心地の良さで思わず深く座ってしまったら、攻撃が来てもすぐには避けられなくなってしまう!!????
ノガワには、全ての部屋の配置が怪しく思えた。
「「…………」」
立ったままのルティアーヤとソファーに浅く腰掛けたノガワがしばらく無言で、見つめ合う。
ーー何この無言は!?………ま、まさか、このソファーに毒が塗ってあって、その毒が僕の身体に回るのを待ってるとか!?
ノガワはソファーに仕掛けがしてあるのではないかと思い、手で少しなぞってみる。
「…………なあ、ノガワ」
「っ!?あ、ああ。どうしたの?」
ソファーを意識していたノガワに、突然ルティアーヤが声をかけてきた。
ーー何!?もうここまで座ったら、僕は終わりだって言いたいの!?すでに僕が生きる道は閉ざされちゃったって事!?
ノガワは絶望に近いモノを感じた。
「……すまなかった」
突然、ルティアーヤが頭を下げてきた。
曲げる角度が丁度直角で、非常に綺麗。
ーーえ?あれ?僕、どうして頭下げられてるの?………はっ!?まさか、僕をこうやって困惑させて、頭が上手くまわっていないところを攻撃しようって作戦だね!?
ノガワは大いに困惑していた。
「お前に私はひどいことをしてしまったにもかかわらず、お前は大きな成果を出した。お前も不満を持っているだろうが、それは全て私の責任だ。だから、私を殺さなければ、いたぶるなり何なり、好きにして構わない。だから、どうか、私以外の魔王軍のモノには手を出さないでくれ!!頼む!!」
「ん?あぁ~。うん。手を出すって言うのはよく分からないけど。別に良いよ?」
「そ、そうか。それなら良かった」
ノガワはよく分からなかったが、取り敢えず頷いた。
それから、ルティアーヤの言葉を深く考えてみる。
ーーこの感じからすると、僕が成果を出し過ぎちゃったのかな?それで、僕に負い目のあったルティアーヤが、それが理由で僕がこれ以上働かなくなったら困るって事で、好きにして構わないから、それで手打ちにして欲しいって頼んできた?
「そっちは良いんだけどさぁ」
そう言いながら、ノガワは立ち上がる。
ーー多分、僕のことを殺す気はないって事だよね?大丈夫だよね?近づいても。
少し怖がりながらも、ノガワはゆっくりとルティアーヤへ近づいていく。
「ルティアーヤには、何をお願いしようかなぁ」
「っ!」
ノガワが近づいていくと、顔をそらされた。
ーーひどいなぁ~。僕の顔は、目を背けなきゃ行けないほどひどくはないはずなんだけどなぁ。どちらかと言えば、可愛すぎて見惚れちゃうくらい?
ノガワはそう思いながらルティアーヤの距離を限界までつめ、ルティアーヤの顔へ手を伸ばす。
「ねぇ。ルティアーヤ」
「な、なんだ」
ノガワは両手でルティアーヤの側頭部を押さえ、顔を無理矢理ノガワの方へ向ける。
ルティアーヤの視線へ、何処を見たら良いのか分からず激しく泳いでいた。
ノガワは顔を近づけていき、
「仲直りしよ!」
元気よく言った。
数秒の沈黙が流れる。
「………へ?」
沈黙の後、ルティアーヤは困惑の言葉をこぼした。
どんなことをされるのかと思っていたのに、まさかの言葉だったのだ。
ーー完璧。ここまで動揺させれば、心を開きやすくなったね。後は、ゆっくりと距離を詰めていくだけ。
「ルティアーヤが僕を信用できてなかった気持ちも分かるし、別に僕は怒ってないよ?でも、ルティアーヤの罪悪感も分かるから、罰として、僕と仲良くして貰うよ!!罪悪感のある相手と仲良くしなきゃ行けないなんて、凄い精神的に良くないよねぇ?」
「あ、ああ。そうだな。………そうか。それで苦しめと言うことか」




