43.本当に何言ってるんだろう?
「ふんふんふぅ~ん」
鼻歌を歌いながらのんきに歩く。
町から離れるごとにどんどん人工物の割合が減ってきて、目の前には自然が広がっている。
唯一の人工物は、この足元の道くらいだろう。
ーーと思ったけど、新しく人工物が見えてきたね。
新しい人工物。
それは、
「分かれ道が分かりやすいよう、標識が置いてあるねぇ」
標識。
そしてその先には、別れ道。
ノガワは迷うことなく、地図通りの道を選んだ。
ーーこの標識、地図と書いてある村が反対だね。
ノガワは地図を見ながらそう思う。
どうやら、誰かがイタズラをしたようだ。
ーーあぁ。もしかしたら、逃げた男の人がやったのかな?どっちに逃げたのか分からなくするために。
そんな考えが思い浮かんだが、すぐにそれはないと自分で否定する。
ーーあの町の男の人が、こんな近くの分かれ道も分からないような人じゃないだろうし。意味はないって分かるよねぇ。……だとしたら、もしかして、
そんな感じで色々考えていると、目の前が急に開けてくる。
どうやら、目的の村に着いたようだ。
ーーあぁ。まさしく、廃村って感じだねぇ。
穴の大量に空いた屋根。
ボロボロに崩れた壁。
いかにも廃墟であると言わんばかりの家が建ち並ぶこの村こそ、数年前から人が住まなくなったという廃村だ。
「ギャアアアァァァァァ!!!!?????」
「………ふぇ?」
ノガワの口から、この数年出したこともないような間抜けな声が出る。
だが、それも仕方ないだろう。
先ほどまで廃村だとかいっていたのに、
ーーなんで人の叫び声がするのぉぉぉ!!?????
訳が分からない。
が、そのわけの分からなさを解決するためにも、ノガワは近づかなければならない。
家の影に隠れつつ、空いた穴などから奥の方の様子を確認していく。
少しずつ近づいていくと、
ーーん!あれは、
明らかにこの村とは合わないモノを発見した。
「………ルティアーヤ!やっほ~!!」
ノガワは家の影から出て、ルティアーヤに手を振る。
ルティアーヤもこちらに気が着いたようで、視線をこちらに向けてきた。
ーー何か言われるかなぁ?この手に持ってるお土産のこととか。
「「…………」」
お互い無言で見つめ合う。
ノガワは、先日合ったときとのルティアーヤの違いに首をかしげた。
ーーあれ?冷たい目で見下してきたり、悪口のオンパレードとか、そんな感じだと思ってたんだけど。
「ど、どうしたの?」
「何でもない。乗れ」
ルティアーヤはそう言って、自分の乗っているグリュプスを叩く。
ノガワは不思議に思いつつも、大人しくその指示に従い、グリュプスに近寄る。
すると、スッと手が差し出された。
「ほら。速くしろ」
「あ、ありがとう?」
ノガワはその手を掴み帰し、引き上げて貰う。
ーーあ、あれ?本当にどうしたんだろう?僕、幻覚でも見てるのかな?
あまりにも対応が違いすぎて、ノガワは困惑した。
「それじゃあ飛ぶぞ」
「ああ。うん。よろしく」
ふわりと浮く感覚。
ノガワはお土産を堕とさないように抱き寄せつつ、眼下の村を見た。
そして、
ーーあっ。逃げてた男の人だ。
町から逃げていた男性を発見。
先ほどノガワが乗っていたちかくに、血を流して倒れている。
ーーあの感じからして、絶対死んじゃってるよねぇ。
おそらく、あの男性は森に入って上手く逃げることが出来たのだろう。
だが、町の脅迫男は逃げられると困るので、先回りして分かれ道の標識を変えた。
そして、その標識を信じてしまったあの男性は、運悪くルティアーヤにあってしまい、………といった感じだと推測される。
「王都には、行ったのか?」
突然、そんなことをルティアーヤが訊いてきた。
世間話的な何かかと思いつつ、ノガワはそれに答える。
「行ったよぉ」
「どうだった?簡易人の王都は?」
「どうだった?……うぅん。燃えてた、かな?」
「…………は?」
長い沈黙の末、困惑した一声が聞こえる。
王都が燃えてたって、何を言っているんだという感じなのだろう。
ーー気持ちはよく分かるよぉ。僕も、何も知らない状況で、王都が焼けてたって言われたら、何言ってるんだろうこの人!?ってなるもん。
「え、えぇと、燃えてたというのは、家が数軒燃える程度の大きな火事があったということか?」
困惑から少しだけ立ち直ったルティアーヤが、詳しく尋ねてくる。
ノガワは、その質問で笑顔になる。
ーーおお。この反応から考えて、今回の成果はかなり褒めて貰えるんじゃないかな?アイファにクッキー沢山作って貰おう。
「えぇっとねぇ。火事は、王都で起こったクーデターの一環かな?」
「……………はぁ?」
本日2度目の困惑。
ノガワも気持ちは分かる。
ーー敵国の王都でクーデターとか、本当に何言ってるんだろう?って感じだよねいやぁ。良く考えてみると、凄い状況だったんだねぇ。
「お、おい。待て。計画では、王都の視察だけの予定だったのではなかったのか?」
「ん~?だから、僕は火を付けたりとかはしてないよ。やったのは、王都の衛兵さん」
「………待て。訳が分からない」




