35.ぷはぁ。染み渡るぅ!
「おい!お前!止まれ!!」
近づいてきた兵士の集団と思われる部隊の先頭にいた男から、止まるように指示される。
ノガワは指示に従い、その場で止まった。
それから相手が近づいてくることを待ったが、相手は動かず、そのまま質問を行ってきた。
「お前は王都からの避難者か!?」
「そうだよ!さっきも兵士さんと会ったけど」
ノガワがそう言うと、飛びかけが止まり、向こうで何か話し始めた。
ーーさっきの兵士さんに確認でも取ってるのかな?
ノガワはそう考え、大人しく待っていることにする。
そして、1分ほど経つと、
「確認が取れた!ケガをしているなら、俺たちの街に送ってやることも出来るぞ!」
「大丈夫!ケガはないよ!!」
ノガワはそう答えたときに、気付いた。
ーー何で近づいてこないのかと思ってたけど、そういうことかぁ。
ノガワは兵士が近づいてこないのを衛兵が反逆したから、心の安全のためにそうしていると思っていたが、違ったらしい。
「で?僕を囲んでるみたいだけど?どうしたの?」
「悪いが、1人で行かせることは出来ない。実際に起きていることが確認できるまで、ここで待っていて貰おう」
「……はぁ。やっぱり道は通らない方が良かったかなぁ」
ノガワはそう言いつつ、その場に座り込む。
すると、数人の兵士がノガワの近くに来て、じっとノガワを見つめていた。
ーーう、うわぁ。居心地悪ぅ。攻めて、見つめられるならアイファたちとかが良かったな。……いや、それはそれでドキドキして心には良くないかな?
「まあ、大人しくしてるけど、お腹すいたからご飯頂戴」
「………ほら」
誓うにいた兵士に食事をねだると、パンが出てきた。
ノガワは礼を言ってそれを受け取り、早速食べてみる。
ーーうわっ!凄いパサパサしてる!水、水が欲しいよ!
「……ほら。水だ」
「ありがと!」
お礼と共に兵士から水の入ったカップを奪い取る。
そして、その水を一気飲みした。
「ぷはぁ。染み渡るぅ!」
「……………」
酒でも飲んでるのかというあきれの混ざった瞳で、兵士がノガワを見てくる。
ノガワもそれを見つめ返した。
じっと見つめていると、他の周りの兵士も見つめてきていることに気付いたので、全員と一通り見つめ合ってみる。
ーー誰も視線をそらさないなぁ。凄い精神力だね。
そんなことをしていると、時間はだんだんと過ぎていき、
「おぉい!確認が取れた!反乱が起きてるそうだ!!」
「む。こいつの話は本当だったのか。おい。そいつを解放してやれ」
どうやら確認が取れたようだ。
取り囲んでいた兵士たちが、ノガワのことを解放する。
ノガワは立ち上がり、もう行って良いのかと近くの兵士を見る。
「ああ。ちょっと待ってろ。今回の詫びと情報提供の感謝を含めて、食料とあっちの街の地図をやるから」
「そんなモノくれるの?ありがとう」
奥の方から兵士がやってきて、ノガワに食料の入った袋と、小さな地図を手渡してきた。
ノガワはそれを受け取り、中身を確認する。
ーー食料は、あんまり期待できそうにないかな。でも、この地図は使えるかも。
「それじゃあ、バイバイ!」
「ああ。じゃあな」
ノガワは別れを告げ、道を歩く。
そして、彼らの姿が見えなくなったところで、貰った食料を手に取り、細かくちぎってラウスに与えた。
ノガワの胸元から顔を出し、貰った食料をバクバクと食べている姿は可愛い。
ーーああ。癒やされるぅ。癒やされるから、餌をあげすぎちゃうなぁ。本当は、もう少し少ない方が良いのかも知れないけど………仕方ないよね!可愛いから仕方ない!
食事を与えつつ歩けば、すぐに目的の街へと到着する。
ノガワは貰った地図を頼りに宿を探し、
「まあ、やってるわけないよね。こんな時間だし」
宿は閉まっていた。
ノガワは肩を落としつつ、街を歩く。
そして、少し歩いたところで、
「あぁ。いた!衛兵さぁん」
「ん?どうした?」
街を巡回している衛兵を見つけた。
ノガワは事情を説明し、泊まれそうな場所を尋ねる。
衛兵は少し考えるような素振りを見せた後、
「じゃあ、安宿だが、取り敢えず空いてそうなところは知ってるぞ」
「そうなの?寝心地は悪くても大丈夫だよ。そんなに長い間過ごすわけでもないし」
「そうか?じゃあ、着いてこい」
ノガワはその言葉に従い、後ろをついて行く。
そして、連れて行かれた先は、
「ここだ」
「お、おぉ。ここかぁ。……あ、ありがとう。行ってみるよ」
いかにも安宿といった見た目の、ボロボロな宿だった。
いや、宿と言うより廃墟といった方が良いかも知れないレベルだ。
ノガワは少し怖さを感じつつも、扉へ手を空ける。
ギィ。
「あ?何だ?」
中で出迎えたのは、柄の悪そうな、顔に入れ墨をした男。
がたいも良く、いかにもそれっぽい感じがする。
ーー裏社会の人って感じだね。
「泊まりたいんだけど。空いてる?」
「ああ。空いてるぞ。1泊な?」
「うん」
ノガワはお金を払い、部屋の鍵を貰って部屋へ向かった。
そのままノガワは諸々を済ませ、ベットへ倒れ込む。
そして、溶けるように眠っていった。




