3.ある意味男女平等
「……そんなとき、女神様が現れ、こう言ったのです」
召喚されて鑑定を受けて、1部の生徒以外が集められていた。
そこで行われているのは、女神にされたモノより詳しいこの世界の歴史などについての解説。
いかに魔族が極悪非道なのかということを長々と聞かされている。
「……ということで皆様には兵士として働いて頂きます」
ーーえ?僕たち戦うの?っていうか、保護してくれるんじゃなかったの!?
話を適当に聞いていたノガワ・ダイナは、いつの間にか騎士になるとかいう話になっていておどろく。
だが、周りを見ても、誰も不思議そうにしているモノはいない。
「それでは、こちらに付いてきてください。新人の兵士として、これからしばらく訓練を受けてもらいます」
そう言われて、ノガワたちは中庭のような場所に連れてこられる。
そこそこの広さがあり、地面には芝生が生えていた。
「それでは、これからの説明は軍の将軍にして騎士団長でもあるファターヤ様に行って頂きます。それでは、ファターヤ様。お願い致します」
そう言って、先ほどまで解説をしてくれていた文官らしき人物は去って行った。
代わりに、鎧を着込んだ大男がノガワたちの前に現れる。
ーーうわぁ。絶対体育会系じゃん。僕、連帯責任だぁ!みたいな感じ苦手なんだけどなぁ。
「お前たち!これからは兵士となるのだ!甘ったれた考えは捨て、訓練に励むように!根性だ!若者らしく根性を見せるんだ!!」
ーーうわっ。暑苦しぃ。最悪ぅ~。
ノガワのテンションがどんどん低下していく。
それに対して、周りの学生たちはとても真剣そうな表情をしている。
どうやら、ノガワ以外は先ほどのこの世界の解説を聞いて、兵士として活動することの重要性を感じているようだった。
「それでは!まずは走り込みだ!俺がいいと言うまで走り続けろ!!」
「「「「はいっ!」」」」
元気よく返事をする学生たち。
ーー何?何でそんなに気合い入ってんの?そんなに戦場に出て死にたいの?バカなの?
ノガワは、気合いの入りまくったクラスメイトたちの様子にドン引きした。
「ほら!さっさと走れ!」
「「「「はいっ!!」」」
前の方にいたクラスメイトたちから順番に走り始める。
ノガワは下手に目立って目を付けられても面倒だと思ったので、仕方なくその後ろについて行った。
ーー走るのは最悪だし。しかも、なんで着替えさせることもしないんだよ!制服だと走りにくいにもほどがあるんだよ!!
「おらぁ!遅いぞ!もっと気合いを入れないか!!」
「「「「すみません!!」」」」
ファターヤの怒鳴り声を受け、クラスメイトたちは走る速度を上げる。
その最後尾には、遅れるモノなど生ませないと言わんばかりの雰囲気でファターヤが走って着いてきていた。
ーーうわぁ。ずっと監視してんのかぁ。誰かと話してたら怒るんだろうなぁ。
それから約1時間後。
「……ハァハァ」
「……ハァ。ウゲェェェ」
「ゲロロロロッ!」
学生たちが走っていた中には、死屍累々が転がっていた。
全員が肩で息をしていて、逆流させてしまっている学生も多い。
そんな中ノガワも瀕死の状態で、うつ伏せの状態で地面に突っ伏していた。
「……ハァハァ。ノ、ノガワ。大丈夫か?」
「………………だ、いじょ………ぶ」
絶対大丈夫じゃないと思わせる返答をする。
ノガワもかなり体力はない方なので、今回のランニングは地獄だったのだ。
だが、その地獄を頑張ったおかげで、
「よし!コレに耐えられなかったお前たちは、明日からもできるまで同じメニューだ!」
「「「「ギャアアァァァ、オゲエエェェェ!!!」」」」
悲鳴を上げて、その衝撃で逆流させてしまうクラスメイトたち。
彼らは、今回のランニングで途中から脱落してしまったモノたち。
彼らとは言ったが、比率で言えば女子の方が多い。
ーー体力的に男女差があるから、これはひどいと思うけどなぁ。……いや、ある意味男女平等?
そんなことを考え、ノガワは微妙な気分になる。
こんな所で平等にされて嬉しいモノなのかと。
「それじゃあ、午後からまた訓練を行う。シッカリと昼食を取り 午後に備えるように」
「「「は、はい!」」」
まだ肩で息をして、返事も大変なはずなのに、クラスメイトたちは元気よく返事をする。
その目からは強い意志が感じ取られた。
ーー何でこんなことに?おかしいと思うんだけどなぁ。
不思議な気分になりながらも、昼食を食べる。
そして食べ終われば、その日の午後もまた訓練。
ノガワは食べたばかりの昼食を吐き出すことになるのだった。
「オゲェェェェ」