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29.俺は、見つからずに行きたい

「はいはい。分かったから、そろそろ僕を解放してくれないかな?」


「あ、ああ。すまん!」


10秒近く見つめ合ったが、それでも話してくれないので、ノガワはレンドウに頼む。

すると、レンドウは慌てて手を離し、半歩下がった。

それを確認してから、


「じゃあ、地図を見せてくれない?それを見ながら教えるから」


「ああ。地図ならあるぞ。ほら」


「うん。ありがとう。ハセヤマ君」


地図を取り出すのは、眼鏡の頭脳は少年ハセヤマ君。

ノガワは地図を見て、その地図の中の1点を指さした。

そこには森が広がっているという事になっている。


「ここに、あるのか?」


「うん。ここの森の中にあるみたい。ルートも2種類あるみたいなんだけど、………正面から行きたい?それとも、見つからずに行きたい?」


ノガワはどちらのルートを選ぶのかと尋ねる。

この選択を迫られ、勇者パーティは悩む。

ゲーム的な要素も考え、勇者としての名声を高めるなら、正面からせめて全てを打ち破ったとした方が良いだろう。


だが、彼らも曲がりなりに戦争の怖さを理解している。

ほんの少しだけだが。

そのため、名誉や誇にこだわらず、勝つことに執着するべきだと思っていた。

だからこそ、


「俺は、見つからずに行きたい」

「わ、私もその方が良いと思います」

「同意見だな。正面から行くなど、愚の骨頂だ」


そんな感じで、ノガワの思い通りの道を選ぶ。

 ーー人に見つからないように、森を抜けて、ハーピーの住む隠れ里へ行かせる。

それが、何をもたらすのか。

そのことを知っているものは、意外と少なくない。


「ありがとう!ノガワ!君のおかげで、上手くいきそうだよ!!」


「はははっ。もっと感謝してくれても良いんだよぉ。……まあ、頑張ってねぇ」


「勿論!君の情報はムダにしないよ!!」


レンドウは決意のこもった声で言う。

やる気十分。今にもハーピーを全滅させてしまいそうだ。

 ーー勝っても負けてもどっちでも良いけど、できるだけ頑張って欲しいねぇ。


「それで、ノガワは軍に戻るのか?送ってくけど」


勇者レンドウ君がそんなことを言ってきた。

 ーーえ?軍?……そっか。そうなるのか。それはいやだね!

ノガワは慌てて首を横に振った。


「やめとくよ。どうせすぐにまた戦場へ送られる事になりそうだからね。しばらくは戦いたくないかな」


「そうか。なら、補給部隊にでも入れば良いんじゃないか……って、そういえば、補給部隊は」


補給部隊へ入ればと提案した後、レンドウは顔を暗くした。

おそらく、イジメの話を聞いたのだろう。

その顔を見たノガワは、


 ーー今日は説明しないといけないことが少なくて助かるなぁ。普段から僕が話さなくても済めば、どれだけ楽なことか。

と、思った。

それから、


「まあ、そういうことで、僕はしばらくこの辺の街をフラついていようかな。何かあったら軍に戻るよ」


「ああ。分かった。それじゃあ、俺たちもそろそろ行こうかな。ありがとう。ノガワ。情報助かった」


「いやいや。傷を治してくれたお礼だよ。あと、服もね。こっちこそありがとねぇ」


話している間に、血まみれだった服も綺麗にして貰っている。

ノガワはお礼を言って、分かれた。

勇者はハーピーの隠れ里へ、ノガワは近くの村へ向けて。

それぞれ歩き出した。

それぞれの道が正反対の方向だったのは、何かの運命だったのか、それとも………。


「あっ!道間違えた。ノリで反対進んじゃったけど、こっちを確か右だったよね?」


………なんとも言えない。


…………。

………………。

それからしばらく歩くと、ノガワの目の前には巨大な村、というより街が。


「発展してるなぁ。この前の村とは大違い」


あまりしっかり見ていない、この前潰した村と比べて、かなり発展していることが分かる。

どうしてよく見てもいないのにそんなことが分かるのかというと、

 ーー建物が高い。3階建てのもあるんじゃないかな?………まあ、魔王城よりちっちゃいけどね。うん。


魔王城と比べてマウントを取るノガワ。

久々に、というより、初めてこの世界の人間の街をじっくりと見るので、テンションが上がっているのだ。

そういうことにしておこう。


 ーーと、いけないいけない。目的地はここじゃないんだよね。

ノガワは、目的を思い出し、街を足早に進む。

計画では、この街に宿泊する予定はないのだ。


「さて、隣町まで頑張って歩くぞぉ」


ノガワはそう言って、隣町の隣町の隣町である王都へと向かって歩く。

ちなみに、不審者だと思われないよう小声で言っている。

周りの目を気にすることも出来る社会性も兼ね備えたノガワ君なのであった。


………。

………………。

数分後。


「……はぁはぁ。疲れた。流石に血が流れすぎて、体力はなくなってるなぁ」


かなりの血を失ったので、あまり動くのはよくないようだ。

回復魔法でも体力までは戻ってこないらしい。

 ーーただ、ここで止まるわけにも行かないしなぁ。迎えの時間を変えて貰おうにも、連絡手段はないし。………はぁ。仕方ない。適当に貰ったお金で食事でもして、体力を付けておくかぁ。


「おじさぁん。ここは何を売ってるのぉ?」


「ん?ここか?ここは、魔物の肉の串焼きだ」


「ふぇ~。じゃあ、1本貰えるかな?」


「おう。毎度」

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